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【エジンバラ 大学留学:後期】Sports Policy④スポーツガバナンスについて(Esportsも考えてみる)

今回はスポーツガバナンスの話です。

”良いガバナンスが何か!という点については,Week3の国際開発の方でも学びましたね。

たまにテーマが重複します。以下再掲をしますね。

③良いガバナンスについて
一般的な原則についての説明がありました。ここは、今回改めて学んだことでかなり重要かなと思います。
価値の設定
Outcomeとステークホルダーに焦点を当てる
透明性の確保
ガバナンスとマネジメントの違い
あと、PDCAはここでも重要です。
まとめると、健全な運営体制の確保のために、①自分たちの価値の定義し、②その次にその価値のアウトカムは何か、ステークホルダーは誰かをきちんと考える必要があり、③常に透明性を意識することが重要ということですよね。これは企業でも同じですよね。その上でPDCAを回していくと。

この授業は論文を読むのが中心なので、さらっとまとめていこうと思います。

この先生はわりと最近の論文を読ませるのが好きみたいです。(トピックを提供してくれるのはいいのですが、一方で授業にあまり体系が無くなるので個人的にはこのスタイルは、正直うーんという感じです)

では論文に移ります。

Esports Governance: Exploring Stakeholder Dynamics

Qi Peng 1,*, Geoff Dickson 2, Nicolas Scelles 1, Jonathan Grix 1 and Paul Michael Brannagan 1,2020

おお、Esportsですね。このトピックはこの授業の最初で扱ったCovidー19により盛り上がった分野で、今後FIFAなども無視できなくなるだろうと言われていました。

<要約>
現在Esportsのガバナンスが明らかにされていない。
そのため、"esportsのガバナンスモデルは持続可能か?"がリサーチクエスチョン

結果として、以下のことがわかった。
(1)現在の esports ガバナンスの枠組みには、主にゲーム販売会社が権力を握っている「主導的組織が統治するネットワーク」の属性がある

(2)ネットワーク内の他のステークホルダーが誠実世(integrity)の問題に対処しようとする力が高まっているため、esports ガバナンスの枠組みが分断化されていること

(3)esports ガバナンスはネットワーク管理組織(NAO)モデルへと進化しつつあること

このような進化にはいくつかの課題があり、特にゲーム販売会社のコンプライアンスが問題となる。

社会的に与える影響を考えると、政府は NAO モデル*を促進する上で主な役割を果たすべきである。

ネットワーク管理組織(NAO)は、ネットワークに参加する企業の活動を外部の組織が一元的に管理するネットワークガバナンスの一形態のこと

要は、Esportsが大きくなってきているけど、ガバナンスがない。(おそらくルールなどを規定する組織を含んでいる)。そのため、各関係者がガバナンスの必要性を言い始めているけど、収集が付かなくなってきた。今は、ゲーム販売会社がステークホルダーとしての影響が大きい。今後、ネットワーク管理組織(NAO)モデルへ推進には、政府が中心になるべきということですかね。

<感想>
そもそもEsportsは何かということを考えました。
Esportsにガバナンスがない場合どんなことが起こるのでしょうか。
実害が出そうなこととしては、
①お金に関する問題(賞金を運営側が払わない等)
②依存症の問題(高額すぎる賞金によるギャンブル性の誘発、健康被害)
③運営上のチート、チート対策
とこのくらいでしょうか。

今回読んだ論文はなんでガバナンスがEsportsに必要かもう少し踏み込んで欲しかったなと思いました。

(閑話休題)Esportsについて考えてみる

Esportsはスポーツなのかという疑問は誰もが思うと思います。
今回あまりEsportsの知識はないのですが、少し考えてみました。今後Esportsの知識が身につけば、意見が変わるかもしれません。

まずは、スポーツの定義を見てみましょう。

COUNCIL OF EUROPE(ヨーロッパ憲章より)Article 2
Definition and Scope of the Charter
1. For the purpose of this Charter:
a. "Sport" means all forms of physical activity which, through casual or organised participation, aim at expressing or improving physical fitness and mental well-being, forming social relationships or obtaining results in competition at all levels.
https://search.coe.int/cm/Pages/result_details.aspx?ObjectID=09000016804c9dbb

太字の部分ですが、フィジカルな活動であるとあるので、定義の観点から言えば、Esportsはスポーツではないと思います。もちろん操作などで指は使いますし、頭の中も使いますが、おそらくここでいうフィジカルな活動はもう少しダイナミックなものと理解をしています。

Esportsの本質は何か。スポーツの持つ側面から考える。

スポーツの持つ側面は、個人的な見解ですが、エンターテイメント、教育、健康、国際性ということが挙げられると思います。(SDGsの考え方とも整合しています)
仮にこれが正しい場合、ESportsが当てはまるのは、
エンターテイメント ◎
教育 △ (ゲームを通したチームワークや戦略を考える等)
健康 × (Swicthなどはあるにはあるが、ここでは通常のゲームを想定)
国際性 ◎

やはり、Esportsにはフィジカルという要素がないので、この様なことになるのかなと思います。

これだけみると、Esportsの本質はエンターテイメントであるので、当たり前ですが、将棋やチェスの様な知的な活動に近いのではないでしょうか。

例えば、チェスであれば、国際チェス協会(FIDE)が存在します。

難しいのは、チェスは1つの競技なので、FIDEはチェスのことだけ考えれいればいいですが、Esportsの場合、あくまでもゲームのプラットフォームであり、様々な競技(ゲームのタイトル)があることですよね。
そのため、オリンピック運営委員会の様な、総合的な国際組織ができるのではないでしょうか。

今後Esports起こりそうなこと
-仮にオリンピック運営委員会Eports国際組織ができるとして、どの国が主導権を握るか。
→これについては、一番市場規模の大きいアメリカでしょうか。それともルールメーカーとして得意な欧州でしょうか。いずれにしても、中国は参加するのでしょうか。
-仮に上記がまとまらない場合どうなるか?
→① 各国でバラバラのレギュレーションが政府により作られる(一番あり得そうなシナリオ)
   ② FIFAなど競技ごとで国際化を図る)

個人的に一番あり得そうなシナリオとしては、各国の政府ごとでレギュレーションを作り、そろそろ国際化する?と言ったときに、競技ごとで国際化していく気がします。

さらに今後起こりそうなこと

やはり、Esportsがスポーツであるかという論争は再び起こりそうですよね。

定義を拡大解釈するのか、変えてしまうことでスポーツと認められる可能性はあると思います。

しかしながら、我々は今一度スポーツの側面や本質を考えてもいいのかなと思います。エンターテイメントも1つの側面ですが、追求しすぎるあまりスポーツが商業化していて、批判されていることも事実です。

仮にEsportsがスポーツとして認められれば、これはみんながスポーツをお金儲けの手段をしか捉えていないことを示唆するかもしれません。

とはいえ、今後攻殻機動隊の様な電脳世界がきたら、それこそ肉体から解放されるので、スポーツという定義が変わってしまうかもしれませんね。そうしたら、自分も変わっていくのでしょう。

変化を受け入れることと流されないことは、実に難しいと思うのでした。


Modernisation and governance in UK national governing bodies of sport: how modernisation influences the way board members perceive and enact their roles

Richard Tacon & Geoff Walters,2016

"英国のスポーツ国内統治機関における近代化とガバナンス:近代化が理事会メンバーの役割の認識と実行にどのような影響を与えるか"

ガバナンスの本丸といえば、その意思決定機関ですよね。日本でも近年社外取締り役が増えてきているのもガバナンス強化のためですよね。

この論文は、1997−2010の間の近代化の流れでスポーツ組織(NGBs)理事会の改革により、ガバナンスをどう強化してきたかを述べています。

NGBs:national governing bodies of sportのこと

<要約>

本論文では、NGB が最も重要だと考えている理事会の役割を実証的に調査し、大規模な NGB と小規模な NGB を統計的に比較している。

次に、理事会や委員会の直接観察、綿密なインタビュー、主要な組織文書の分析を行い、近代化が理事会メンバーの役割の認識と実行にどのような影響を与えているかを検証している。

<NGBsについての歴史的な背景>

UKのスポーツの行政機関の歴史をあまり知らないのでここは残しておこうと思います。

本項の近代化の意味

この時代の新労働党の下での近代化は、例えば「起業家精神の強化」や「公務員の個人的責任の強化」(du Gay 2003, p.675)などの公務員改革に向けた保守党の以前の努力の継続であり、「part of a transatlantic neo-liberalism:大西洋横断的な新自由主義の一部」(Clarke 2004, p.44)として米国との親和性を示していた。

スポーツセクターの近代化の必要性

スポーツセクターは近代化の必要性があった。これは、
第一に、1994年に全国宝くじが導入されたことで、スポーツ組織はより高いレベルの公的資金を受け取れるようになり、それに伴ってガバナンスと説明責任に対する期待が高まった。

第二に、そして関連して、NGBs(例えば、英国陸上競技連盟(Grix 2009を参照))の間で貧しい管理とガバナンスの失敗の数多くの試験例があった。

第三に、スポーツは、犯罪の削減や教育の改善など、より広範な社会政策の目的に対処するための方法として見られるようになってきており、エンドユーザーのニーズに焦点を当て、官民パートナーシップの発展を必要としてきた(Coalter 2007)。

最後に、より広範に、ボランタリーセクターのスポーツにおける「プロフェッショナリズム」が必要となった。

→予算が大きくなったことによるガバナンス責任の増加、ガバナンス失敗が多発、社会活動としてのニーズの高まり、非営利組織でもプロであることが必要とされたということ。

資金配分に責任を持つ 2 つの主要な非省庁組織
(1) UK Sport 
(2)  Sport England

調査結果

◆理事会の役割について

英国のNGBの理事会は、財務的・戦略的な役割が最も重要であり、利害関係者の利益を代表することに関する役割はそれほど重要ではないと評価している。時間の経過とともに、これらの財政的で、戦略的な役割は理事会に比較的より重要になった。

本調査では、「財務管理」「財務システム」「使命と価値観」「戦略的方向性」の 4 つが最も重要な役割であり、「ステークホルダーへの説明責任の確保」が 8 位、「ステークホルダーの利益を代表する」が 13 位となっています。

◆大規模と小規模の組織の重視する違い
大規模なNGBは、適切な財務システムを確保し、NGBのパフォーマンスを監視するという「プロフェッショナ ル化された」役割を小規模なNGBよりも重要視しているのに対し、小規模なNGBは、「アマチュア/伝統的な」役割の方が、大規模なNGBよりも重要であるとしている。

ケーススタディ
資金提供者の意図を汲み取る場合があった。重要な問題は、この商業的価値観の吸収を近代化の影響としてどの程度まで見るべきかということである。上述したように、近代化の物語は、伝統的な公共部門やボランタリー部門の働き方を時代遅れで非効率的なものとして、商業的な働き方を近代的で効率的なものとして描いているのは確かに事実である。

結局のところ、多くの研究者が指摘しているように(Slack and Hinings 1992, Kikulis 2000)、組織の変化が制度化された論理によって引き起こされたのか、それとも資金調達体制への(より直接的な)コンプライアンスによって引き起こされたのかを判断することは非常に難しい。私たちのケーススタディで明らかになったのは、「ガバナンスの話」と現在進行中の相互作用に焦点を当てることで、効果的な財務監督に対する明確な責任を持つ戦略的意思決定グループとしての理事会の役割についての理事会メンバーの認識が、ますます埋め込まれた専門的な論理に基づいているように見える「当たり前」の品質を持っていたということであった。一方、特定の行動、例えば、特定の戦略的決定やその決定のタイミングなどは、資金提供者の要求を満たす必要性に よって具体的に動かされているように見え、しばしば近代化の教訓を参照することで正当化されていた。

<感想>

ここでいう近代化とは1990年代から2010年代のことですね。日本はバブル後の長い不況でしたね。
https://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/kousei/11/dl/01-01.pdf

UKではこんな時代だった様です。

1990年代、政権交代があり、保守党から労働党のトニー・ブレアに変わる。政策を市場化一辺倒のものから修正し、路線を第三の道へと変えて進むことになる。このころから久々の好景気に沸き、「老大国」のイメージを取り除くための、イメージ戦略や文化政策に力を入れるようになった。これをメディアはクール・ブリタニアと呼んだ。
https://www.ena.travel/travel/unitedkingdom/history/

内容としては結構面白かったです。

資本主義や自由主義経済の影響を受けて、非営利組織が大きく(スポーツもビジネス化して行っています)なるにつれて、営利企業を同じ様なガバナンスが必要になるということですね。

Boardメンバーもそれに合わせ自身の役割を戦略の策定、ファイナンスが優先と認識しているのが面白かったです。


では、今週はこの辺りで。


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