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03,小説家になろう/another storyteller

小説家になろう/another storyteller

lyric by.母野宮子
track by.nagaco

ラッパーになんかなるんじゃなかった。言いたいことは言えずに減った。
言葉を選べる大人になった? こだわり捨てて算盤転がす。
近頃は地下のほら、見たことない覚悟要らない王道楽土。
落語みたいなオチもなくて、曲に出来ぬ角度がある。
きな臭いことが起爆剤なのか、規格外になれない日が辛い四月前。
CDを出しても人生は変わらず、TVに出たら変わるさと祈る。
TVに出ても人生は変わらず、書籍を出したら変わるさと祈る。
「夢? そんなもんあるわけないじゃん」
ドラえもんみたいなエイプリルフール。

僕は元小説家志望、大学は卒業、この情熱が死亡。
書けば書くほど、この苦労、孤独と損得も姑息そう、顔隠す虚無僧。
夢なんて叶うもんじゃない。父が言った「現実を見なさい」
UMB2008東京予選、バトルのエントリーに原点見据えて。
ひょんなことから一発メジャーデビュー。才能があるのかないのかわからず。
「おやすみ」から朝が始まる。初期衝動を使い切っちまった青春。
夢中で握ったオープンマイク。どうして今では興奮しない?
「ラッパーになんかなるんじゃなかった」
ドラえもんみたいなエイプリルフール。

本心なのか本心じゃないのか? そんな二元論、もう死んだ妄信だ。
童貞がセックスの上手さを語るように未完成原稿はただのゴミ。
自信が年齢をとる、文字物のお仕事を欲しいよと押し黙る。
新人賞を妊娠しようにも信じようとせず金字塔を読み。
「小説家になろう」「小説家になろう」パンドラの匣に閉じ込めて烏滸がましさを知ろう。
バトルレポートやコラムの連載、貰えたライター仕事が掲載。
ラップより評判良く、オーバードーズしそうな思想は萎む。
小説書いてたあの頃、まごころ、羽衣纏おうと飛べない若者。
新人賞に応募しないで、宝クジが当たるのをひたすら待ってた。
イージーモードをロードしたって、馬鹿な無理が祟るのを四月が笑ってた。
小説家になる? わかってんだよ、後から辛くてどうせ砂を噛む。
「夢? そんなもんあるわけないじゃん」ケンカしたって勝てねぇジャイアン。
凍りついた効率だけの合理主義。濃密な人生よりノーミスだって脳に居座るのに。
「ウチで小説を書きませんか?」そんなメールがきたら君ならどうするよ?
これは、何かの間違い? いや、星の海と書いて読み方は正解。
口にした弱音が嘘になってく。
ドラえもんみたいなエイプリルフール。

「ラッパーになって本当に良かった」遠回りが一番の近道だった。
夢ってやつは叶わないと吐いてた。口偏にプラスで叶うなんてアイデア。
空いてた時間に出版社で面会だ。新人賞狙ってたあの星海社。
太田克史と担当編集、オタマジャクシのランドセル。
「どんな小説を書いたらいいすか?」商業主義はラップブームにフリースタイル。
しかしそんな疑念も完全消滅。太田さんの答えは「探偵小説」
フェア? アンフェア? 本格? 新本格? 脱格? バカミス? 書けるか、笑える。
探偵小説はヒップホップに似ている。どちらも警察が厳しいときている。
違うジャンルのケイダブが二人みたいな検閲、生活はジリ貧。
現実は小説よりも奇なり。それでもやっぱ小説を書きたい。
そして僕は原稿を書き始めた。戦闘用の前頭葉を冷凍庫から取り出した。
言葉にするというのは技術だが、伝わない記述があるってまたひとつ気付くんだわ。
ボツ、またボツ、ボツ、またボツ、フィクションから体現する僕。
探偵小説を書いていたつもりが、私生活に支障出る私小説に挑んでる。
これからの僕は駆け出しのストーリーテラー、それはこんな風な書き出しから始まっていった。
「我輩はラッパーである、名前はまだ売れていない」


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