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懐祭り/nostalgia

懐祭り/nostalgia

lyric by.母野宮子
track by.JitteryJackal

家の目の前には公園があり夏祭りが年に一度、縁が日曜日を繋ぐ夏休みの反応や幻が千円札を握らせて背中を押した。
ヤキソバの熱と爽やかな風、叩き売りされてるスーファミのカセット。
僕の家の目の前がすげえ夏だった。僕の家の目の前だからステータスだった。
友達が溜まる我が家の玄関、ラムネを飲み干したらあの店に行こうか。
公民館の向こうのステージではカラオケ大会、嫌いな演歌が定番。
だけど、今日だけは門限が夜を少しだけ許せるって言ってんだ。
空から消えた太陽のあの染み。年に一度の最高の楽しみ。

小3の夏、隣町に転校が決まった。西小から北小に方角が変わった。
車で20分程度の距離でも新築の砦を「一目見においで」と。
自転車を漕いで用もないのに西の方を仰いでも「ねぇ、青いでしょ?」
夏祭りの帰り道「来年もまた来る」と指切りの代わりに友達と肩組む。
二学期から新しい生活が始まり、思ってたよりも馴染めては交わり。
ゲームの貸し借りで縮める距離感。何処の学校も似たような価値観。
それでも僕の頭には来年の夏祭りがチラついてなんか泣いてんの。
近いのに遠く見えてんのかも。暗記しちゃってる家電の番号。

小3の夏と小4の夏はどう噛んだって同感なんて出来ない筈でも、鈍感な僕は敏感なみんなの今に追いつけないまま苛まれてる。
追いつけないまま苛まれてる。
懐かしい祭り、あの日、ノスタルジー。

小4の夏、隣町までクルマで15分。母の運転、見慣れた景色に注目。
今年からはお洒落に気を遣ったり少しだけ大人になったと上っ張り。
転校前の自分を車窓に重ね。誘う言葉も車道に置き去り。
また夏祭りが八月に始まる。去年まで住んでた町角に休まる。
「どうせ遅くなるから電話する」と母を帰らせては暮れなずむ夕焼けと祭りのコントラストを眺め。
団扇で扇ぐ常夏の中に見慣れた友達を探す。
みんな相変わらず足を運んでくれるに決まってる。
きっと女子は去年より浴衣が似合ってる。
約束なしでもきっと気が合ってる。

公園の中をあと何周すれば見つかるか、あの日の詩集。
途中でやめたマリオカートの続き。周回遅れジュゲムの宙吊り。
ルーズリーフ使って二つ丸空けりゃ、ちょっぴり大人。
公衆電話、友達の家電。
穴の空いたテレホンカードを入れて「夏祭りのために帰って来たんだ」と言おうしたら友達のお母さんが出て、友達の名前に君付けをしてから「代わってください」と言う術を得てまた僕はそこで現実を知る。
「ごめんね、今、部活で忙しいらしくて家にはいないの」
僕もみんなも四年生だった。部活が始まって余計変だった。

僕はお母さんに電話をかけ直して「もう迎えに来て欲しい」と夜が押して。
「えっ? もう祭り終わったの?」と驚く母に「察してよ」と思うんだ。
今、何時でも、火花散っても、昔の家に人が住んでても。

小3の夏と小4の夏はどう噛んだって同感なんて出来ない筈でも、鈍感な僕は敏感なみんなの今に追いつけないまま苛まれてる。
追いつけないまま苛まれてる。
懐かしい祭り、あの日、ノスタルジー。

小3の夏と小4の夏はどう噛んだって同感なんて出来ない筈でも、鈍感な僕は敏感なみんなの今に追いつけないまま苛まれてる。
追いつけないまま苛まれてる。
懐かしい祭り、あの日、ノスタルジー。


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