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安心して ほっとして

昔々
あるところに、
初めて子育てをするママがいました。

妊娠は嬉しかったけど、転職したばかりで
なんだか不安な毎日。
なんとか、体調は悪くはなかったけど、
赤ちゃんが可愛いとか、そういう感じよりも
毎日が必死なのと
仕事をしない暮らしをしたことのない自分が怖かった。

産院に行っても、
なんだかみんな忙しそう。
待ち時間は長いけど、みんな10分もしないで診察が終わって
次々と流れ作業のように診察室から出てくる。
時々、助産師さんとお話しする時間があったが、
質問に答えるくらいで
何を話していいかもわからない感じ。

そして、気づいたら出産。
逆子が治らず
帝王切開になった。
今は逆子が帝王切開が当たり前で
経腟分娩はほとんどしないと本にかいてあったなぁ。
手術の同意書を書いて
前日に入院。
そして、出産。
鳴き声が聞こえて嬉しかったけど
内心、これからどうしよう。
育てられるのだろうか。という恐怖に急に襲われた。

傷の痛みやお腹の痛みのほかにも
なぜか体のあちこちがいろいろ痛い。
ただ、動かないと回復もしないので、必死に動いてトイレに行ったり…。
新生児室を見に行ったり。

名札がついていなければ、
わが子ということがわからない
わが子をガラス越しにみえると
違和感しかなかった。
私は出産した。
ただ、その感動以上に
育てられるか不安すぎて、おびえてすらいる。

数日たつ中で、いろんな助産師さんが入れ替わり立ち代わり
いろんなことを教えてくれているが、
あまり頭に入ってこない。
とにかくやるしかない。
わりと泣かない赤ちゃんみたいで、
時間で母乳とミルクをあげているが、
これでいいのか、毎回が不安だ。ただ、不安だとばかりいっていると、
周りの人が私をどうみるかわからないから、いえない。
とりあえず、「大丈夫です…」という言葉をいえば
それ以上あまり言われないことには気づいた。

数日たっていくと、なんとなく
「こんな感じかな?」ということもわかってきた。
比較的母乳の吸うのが上手らしい。
なんとなく、なんとなく、
これでいいのかな?が見えてくるが
後数日で退院だ。

退院した後は、あまり記憶がない。
毎日が必死すぎた。
夫が休んでくれていたり、母がいたりしたので
とにかく、いろんなことをやっていたが
不安でネットばかり見てた気もした。

そうして2週間。
助産師さんと話た。
なんだか、よくわからない毎日を
とにかく歩いている感じだ。
いろんな質問シートをもらうけど、
そんなの正直に書けない。
だって、マークされる、心配されるのはイヤだった。

一カ月検診が終わって、これから産院は卒業で
次は小児科かぁ…と思って書類の整理をしていると
ふと、母子手帳をもらった時の
子育て広場というのを思い出した。
そこに書いてある「ひとりじゃないよ。」
「わからないが、あたりまえ。」「あなたを応援しているよ」
なんとなく、ひとりじゃないよ。が気になった。
以前施設の前を通ったときに
笑顔で施設を出ていく親子をみた。
あぁ、私もあんな風に笑えるのかな?と
妊婦の時に思った場所。

実家の母が帰り、夫も時々テレワークだけど、
いつもの仕事のペースにもどると
昼間に私と赤ちゃんだけの時間がたくさん増えた。
なんだか、家に二人っきりが怖くなった。
そんな時にも、あの楽しそうな親子を思い出した。

あぁ、ちょっと勇気を出して
いってみようかなぁ、駅にも近いし、買い物したいなぁ…

はじめて子育て広場にいった。
ここが私の子育ての始まりになったのかもしれない。

扉を開けるとたくさんの親子さんが楽しそう、一方遠くで泣いてる
幼児さんもいたりする。でも、なんだか、「泣いてていいよ」って
空気がたくさんあふれてた。
これが「ひとりじゃないよ」なのかもしれない。

こんにちは、初めての利用ですか?と
声をかけてくれたのは、母くらいの年齢のスタッフさんだった。
ただただ、にこにこ優しく、
「お近くでしたか、来てくださってありがとうございます。」と
丁寧にあいさつをしてくれて、施設の利用について
教えてくれた。

「今日、助産師さんの相談がある日なんだけど、
何か聞きたいコトあるかしら?」と言ってくれたので、
これからの体重増加についてきいてみたいな、と思った。ただ、あんまり聞くこともないけど、せっかくだからと声をかける。

「こんにちは、助産師の〇〇です」とご挨拶したあとに、
月齢などを聞かれて、久しぶりに苗字でよばれた。
気づけば、退院したあと家族以外と話してなかったな…
細かく今の生活リズムや飲んでいる量を聞いて、とにかく、
「うんうん、それで、それで」とたくさん受け止めるような
話の聴き方をしてくれた。
「体重も増えているし、とても順調ね」とにっこり笑ってくれた。
「毎日、本当によく赤ちゃんのことを観てお世話されていますね」と言われて、なんだか驚いた。あまりそんなつもりはなかった。
私、よくやっているの?なんだか、力がぬけたら、なんだか胸が熱くなった
「何がわからないかも、わからなくて、ただただ不安で仕方ないです…」と
ポロリと、言葉が出てきた。思ってもいなかった。

「わからなかったり、すると不安ですよね。たとえば、どんな時に不安が増したりしますか?」とまた質問をしてくれた。
「一人の時が、とても不安なんです」となんだか正直に言葉が出た。
「そうなんですね、一人の時って、不安が増しますよね。赤ちゃんに話しかけたりとか、していますか?」と言われ
「あ、あんまり(というかほとんど声かけてなかった)」というと
「赤ちゃんに声掛けするって、わからないですよね。ただ、今、■■さんが感じたことや、今起きてきてることをただ、声にして話せばいいのですよ。赤ちゃんたちは言葉の内容はわからないけれど、ママの声だということはしっかりとわかっていますし、今起きていている世界を感じているから、ぜひ声をかけてみて」といった後に
「助産師の〇〇です。★★ちゃん、今日は広場にママとおでかけしてくれて、ありがとうございます。おうちとちょっと違う雰囲気を楽しんでね」と
話しかけていた。
「赤ちゃんはママの声が大好きですからね」とにっこりと助産師さんは笑ってた。
なんだ。赤ちゃんに話しかけていいんだ。
なんだか、またほっとした。
このわからない子育ての世界で、
本やネットばかりみていたけど、目を見て、笑いあえる人がいることを
久しぶりに感じた。
「一人じゃない」
安心、ってこういう感じなのかもしれない。
また、行こうかな…

こうして何度も広場に通っていくうちに
気づくと我が子を可愛いと思う時間が増えていった。
                            おしまい

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昔話シリーズで子育てについて
書いてみました。
私の現場のノンフィクションです。

親子広場に関わり17年。
この広場が私が娘を育てた当初にあったら、
どれだけ私の子育ては安心して、ほっとして
楽しめたかも。と過去を恨むくらい
とてもとても心地の良いのが
子育て広場。
特に、私の住む松戸市の子育て広場は本当に素晴らしいなと
いつも思うばかりです。
すてきなスタッフさんに囲まれて、長年支援の仕事をさせていただくことに感謝しかありません。

もし、子育てで
孤独感を感じている人がいたら、
ほんのちょっぴり勇気を出して
広場に足を向けてみてくださいね。

今日もお読みいただき
ありがとうございます。
ほっとする安心な子育てが
必ずできる日がきます。
心から応援しています。

やまがたてるえ

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