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腕時計
地元へ帰ったとき、彼氏から誕生日プレゼントを貰った。
茶色に、鳥の絵が描かれた紙袋。
その袋は、私がよく知っているお店だった。
そこのお店で、腕時計を買った。
去年の、彼へのクリスマスプレゼントだ。
よく覚えている。
彼の誕生日をどうしようかなぁと悩みながら、服にしようかなぁ、いつも同じで、それじゃ味気ないか。
なら、なにがいいかなぁ。
その年の8月ごろ、そこの雑貨屋へ彼と2人で買い物をした時のことをふと思い出した。
一万も行かない、ベルトが黒い革の、シンプルな時計を見ながら、「こういう時計欲しいんだよなぁ」
その年のクリスマスは、
彼の大好きなサッカーチームの色とかけた、白と赤の花束と、その腕時計を買った。
そのときの、腕時計のお店だった。
袋を開けると、オレンジのシールが貼られた、見たことのある木箱。
開けると、茶色いベルトの腕時計だった。彼と、色違いの腕時計だった。
お揃いが苦手な彼からの、意外なプレゼントにびっくりしていると、
「なんか、秘密っぽくていいでしょ」
照れながら、笑った彼の顔があまりにも可愛くて。
たしかに、服や靴じゃなくて、腕時計がお揃いなのは彼らしい。
これを買ったとき、どんなことを考えながら買ったんだろう。
それを考えただけで、はじけそうなくらい嬉しかった。
その腕時計をつけて、今日、家を出た。
飛行機に乗って、特急に乗って、どんどん、どんどん地元から離れていく。
今回の帰省で一緒に買い物したとき、「一緒に住んだら、いっぱい植物を育てたい」と言った彼に、泣きそうになった。
心配性で、現実味がちな彼が、当たり前に未来の話をしたことがあまりに嬉しかった。
腕時計と、思い出と。
もう少し、あっちこっち飛びながら仕事はしたいけれど、地元に移り住んでしまいたい。
もう、早く帰りたい。
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