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6歳息子の初めての絵画鑑賞は日本画だった

昨日は息子6歳と2人で山種美術館目黒寄生虫館をはしごした。
なんでこんな変なプランになったかというと、
・もともとこの日は私が1人時間(=家事育児から離れて自由に使える時間)をもらうつもりで、このところ20年ぶりくらいに湧いてきた「日本画観たい!」欲に従って山種美術館の竹内栖鳳展に行こうと思っていた

・寄生虫ブームが続いている息子を、以前から寄生虫館に連れて行く約束をしていた

ちょっと考えてみたら方面同じだし、じゃあまとめて行くか!
となったからである。
山種美術館は広尾。寄生虫館は大鳥神社前。我が家からはあまり出向かないエリアだし、明治通りまで出れば両者をつなぐバスもある。ちょうどいい。

そんな適当なきっかけで息子に日本画を見せたら色々と考えさせられたので、その記録です。

先に竹内栖鳳展に行くことは決めていて(もともと私の自由時間なのだ!私のしたいことを優先するぞ)、「午前中は君は興味ないかもしれないけど付き合ってね」と言いつつ渋谷からバスに乗る。
よく考えたら息子氏、博物館はこれまで散々行ったけど絵を観るのは初めて。初めて美術館に観に行く絵が日本画、という小学生はまずいないだろうね、と話しながら連れて行った山種美術館は、想定どおりミドル~シニア層のみ、子どもはおろか若者は皆無、日曜の早い時間帯なのに結構人がいる。そしてとても静かだ。展示室に入った途端に大人な雰囲気に圧倒される息子氏。早くも心配になる。

本当はもうちょっと立ち止まって見たいけれど、息子のペースに合わせて多少早めに進む。順路は栖鳳の初期の作品から。墨で描かれた立雛、まくわ瓜。余白を大きく残してポツンと描かれた、彩色の控えめな絵を見る息子の顔が「??」に満ちている。なにが有難いのかわからん、もしくは、なぜ大人たちはこんなものを真剣に観ているのか?という顔。あ、これはまずいかな。
もうこうなってくると絵よりも息子の反応が気になってしまっている。うーん、どうしようかなぁ、と思って進んだところで、息子氏が初めて足を止めた。
それは透き通るように彩色された白菜の絵だった。影にネズミがいる。「ネズミだ」とちょっとテンションの上がった声(小声)でつぶやく息子。うん、ふわふわだね。毛が柔らかそうだよね、と(こちらも小声で)言うと、じっと見つめている。

ゆっくり次のスペースを曲がると、目の前にアザラシを食べる白熊の絵がどーんとある。歩み寄る息子氏。順路は無視だけれど、もはやどうでもいい。骨の見えた喰い途中のアザラシを踏みつけつつこちらを振り向いている獰猛な、けれど美しい白熊に見入っている。すごいね、うん、すごい、というやりとり。
このエリアからだんだんと動物画が増えてきて、鴨の雛、カツオ、色鮮やかな鯛、みみずく(『みゝづく』の「ゝ」は何だ、という質問あり。小学一年生からしたらごもっともですね)など、写実的な画の並びに、明らかに息子の興味が増している。

ちょっとホッとする。動物画が豊富でよかった。そして構図がわかりやすい伝統的な日本画で良かった。
特に息子の興味を引いたのは『艶陽』という題の、豌豆と蛇の絵。蛇(息子いわくシマヘビ)の絡まり方がすごい。絵本や図鑑に出てくる、ぐるぐるトグロを巻いたりうねうね走っている蛇ではなく、田舎の実家で見た&捕まえたとおりの絡まり方だ。

竹内栖鳳 『艶陽』

そう、こどもに向けられた絵って、鴨はお尻をふりふり歩いて、蛇は丸くトグロを巻いて、白熊は横向きにのしのし氷の上を歩いて、という決まったパターンになっているけれど、実際はそうではないんだよね。鴨の雛の思いがけない方向に突き出た足や、体が結び目を作ってしまいそうな蛇の絡まり方が「絵」として描かれていること、今まで見てきた絵とは全然違うこと。そこに興味を惹かれたように私には思えた。

初めて美術館で見る絵としては、これはこれで正解だったのかもしれない。動物の体毛のやわらかさ、鳥の脚のガサガサした感じ、一瞬の仕草等がリアルな描写で、かつ非常にわかりやすい構図で描かれている。それが「絵」として切り取られていることの意味が伝わってくる、という観点では。
逆に初めてだしとりあえず有名なものを観ておけ、と言って抽象度の高い絵や、何度も塗り重ねられて対象物の輪郭がわかりづらいような西洋画が最初に見る「絵」だったら、また反応は違うのかもしれない。

次に息子が見入ったのは双鶴図。鶴の脚が恐竜のようだ、と呟いている。子犬、孔雀、と順番に見て、そうそう猫、猫を見よう、と私が言うと、僕探してくる!と順路を逆に一人で進み始める。さすがに走りはしなかったけれど、少しひやっとした。
有名な『斑猫」を見るころには(結局順路の最初の方だった)、さすがにもうだいぶ飽きがきていたのでソファに座らせ、私がじっくり見ていると、いつの間にか蛙と蜻蛉の絵に見入っている様子。コミカルだもんね。
そして猫は想像以上に素晴らしゅうございました。

それでも30分。持った方だと考えた方が良いのだろう。日本画の美術展を30分で回る日が来るとは思わなかった。まぁ、薄々予想はしていたので、あとで悦に浸る用に画集を購入。いやー、、1人ならあと2時間は居られたな…と思いつつ、途中から絵よりも息子の反応が面白かったのと、色々考えさせられたので、これはこれで収穫だったかな。

そして息子が楽しみにしていた寄生虫館の方は、想像の上を行く展示だったようで(私は何回目かなので知ってた)、色々な意味で衝撃を受けていた。でも憧れの(?)日本住血吸虫の実物も見られたし、9m近い回虫も見られたし、宿主と寄生虫のホルマリン漬けの生体を一つ一つじっくり観察できて、総じてご満足の様子。

そして夜。息子氏、帰ってきてから絡まる蛇の絵を描く(↓) 
絵に苦手意識があるのか、いつもささっと描いて終わりなのが、珍しく時間をかけて描いていた。こういう形で息子の中に残ったものがあるということが、単純にうれしい。
また一緒に行こう。1人の時間も欲しいけど、今しか見られない子どもの反応も見ておきたい。

息子 『しまへび』(アオダイショウじゃない!とのこと)


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