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あっちっち砂漠(読書感想文)

 こんにちは、はぐれです。

 冷房がぶっ壊れたのか、室温が27℃で固定されてしまった。怠いので日記を書く。
 あ、そういえば8週連続投稿らしい。ひとまず1年は続けたいな!!!

 えーと、そうだ。長編ミステリの『姑獲鳥の夏』を読み終わった。分厚いが、全編に字がパンパンに詰まっている訳ではなかったので、文量自体はそこそこか。今更になるが紹介がてら、感想でも書くか。。。


・あらすじ紹介

 この世には不思議なことなど何もないのだよ――古本屋にして陰陽師(おんみょうじ)が憑物を落とし事件を解きほぐす人気シリーズ第1弾。(『講談社BOOK倶楽部』)

 以下、すっごい簡潔なあらすじ。

 視点人物であるライターの『関口』が妙な噂を聞き付け、古本屋にして陰陽師の『京極堂』、他人の記憶を知覚する探偵『榎木津』という頭抜けた知人たちと事件の中に巻き込まれる――というお話だ。
 事件は、20カ月も身ごもり続ける医院の娘と、密室からの人体消失がメイン。舞台は戦後日本である。


・オススメポイント

「この世には不思議なことなど何もないのだよ――」

 古本屋で陰陽師という、どうみても不思議な男『京極堂』が言うセリフだが、この小説のスタンスは徹底して”これ”だ。近代オカルト的な霊障、超常現象といった根のない怪奇に対し、ある時は民俗学、ある時は脳科学によって、これを真向から否定してミステリとする。
 状況に応じて引用される学問は多岐にわたり、書全体の持つ説得力がずば抜けて高い。こうしてしっかりと外堀を埋め、『不思議なこと』を何一つなくし、怪奇事件の真相を暴いていくのですね。

 骨子はそれとして、いいなと思った点は大きく二つ。

1. パニックがうまい!

 この小説は、一人称視点を扱うのがとても巧い。ホームズにおけるワトソン的キャラクター、関口が視点になる訳だが、鬱病やトラウマを患う彼の視点は、ときおり精神を失調する。つまり公平さを失うのだが、その流れがとてもスムーズ。パニックに至る過程、認識が歪んでいく描写が格段に巧く、それを追体験するような文章を書く。個人的には、この点が一番好き。

 ただ、癇癪を起こす関口くんに時折『オイ!!!!』と怒鳴りたくなるタイミングはあるので、読書の上ではハードルかもしれない。推理RTAだったら関口くんは瞬殺しないとダメだし……

2. 明確なテーマ性

 オカルトの否定や、関口パニックにも通ずるが、この小説は徹底して、認識への懐疑を求めている。つまり、目で見て耳で聞くものが全て真実だとは限らない、というテーマだ。

 人は見たいようにモノを誤認するという前提があり、”不思議”はそこから生まれている。それを解きほぐすのが、この小説のホームズの一人、京極堂という訳だ。こういうテーマがあるため、関口くんが視点として抜擢されるのですね。おかげで関口くんはズタボロになるが……

 ともかく全編を通し、京極堂は言葉を変えてほとんど同じことを喋る。彼という物語の”芯”があることで、不安定な関口視点のバランスが取れ、暗中模索ながらもどこに向かうのかは判然とする。関口だけだと意味が分からなくなるので、この構造はシステマティックで素晴らしい。

 

 反対に、やや読みづらかった点も挙げるか。ネタバレをギリギリまで消して書けるだろうか。

 後半の、ミステリにおけるクライマックスの部分。とあるところで、京極堂が推測をメチャメチャ語るんだけど、やっぱり結局推測なので、真相っぽいお話でしかないんだよな。

 ただ、これは構造上や文量の都合でしゃーなしとも思う。そこまで含むと取っ散らかるし、ページが嵩むし、なにより関口を主人公とすれば作中までの部分で良い。京極堂はまあ、言うてみれば関口の後始末をする役目なので、ここは推測だけでも良いんだろう。まあ、ミステリとしては残念だったなと思うって話だ。

( 追記:思えばこの部分、京極堂が人間として、誤認かもしれないが推測を語っていく、と言うパートなのか。人間が探偵であるミステリそのものに対して最後の一線を引くと言うか、最終的な諦観の地点を示しているのかもしれない。 )

 そんな感じかな~~。続編にあたる『魍魎の匣』は、書店で見るけど分厚すぎてドン引きするやつとして記憶されている。まだ読みたくはないかもな……。次に読もうとしてるのは、これまたメフィスト関連から『六枚のとんかつ』。楽しみですねー。

 さいなら!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

(終)

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