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夢枕獏に殴られようのコーナー

 こんにちは、はぐれです。

 前にも書いていた『白鯨 MOBY-DICK』(著:夢枕獏)をKindleで読み始めた。

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 これは、1851年アメリカで生まれた冒険小説『白鯨』(著:ハーマン・メルヴィル)をもとにした伝奇小説である。

「神」と形容される白い巨躯を持つマッコウクジラ、『白鯨』に魅せられた漁師たちの物語に、日本人ならば誰もが知る偉人、ジョン万次郎(1827-1898)を登場させたものだ。

 と、紹介こそすれ、俺はまだ小説の四分の一ほどしか読み終えていない。ただ、恐らくこれは途方もないほど面白く、情動を揺さぶり、俺の小説に対する意識をギタギタに叩きのめす一冊であろう。

 この小説に限らず、俺は夢枕獏という作家の書く文章、物語が好きだった。これは読まないと理解しようがないが、彼は、文章から情景を想起させる能力がとにかく異様に高い。

 それも、ただ視覚に映る”風景”のみではない(それも箆棒に巧い)。

 人の内奥――登場人物がどのような生を過ごし、精神を作り、その上で目の前の現実に対して、どのような感情を抱くのか。それを精細に描き出してくる。

 人の心の奥深くまでを描き、まったく当事者でない読者に、その気分を理解させるのである。これぞ、文字を扱うメディアである『小説』の髄であり、また同時に最も難解な技術である事は、物を書いている方々になら頷いて頂けるだろう。

 これとは別に、多くの人に言葉少なで共感してもらえる事物というのは、ある。俗に言う「あるある」という奴だ。コミュニケーションにおいて、非常に便利なツールである。

『思春期特有の~』とか、『甘酸っぱい~』とか、そういった枕詞とともに、そういった「あるある」は幾らでも世に溢れていて、常に一定の需要を得る。

 一方。夢枕獏の、或いは小説という芸術形態の求めるモノというのは、その対極。複数の人間がインスタントに共感できるよう、敢えてピントをぼかされた文言ではない。キリキリまで絞られた顕微鏡のような視点で描く、つぶさに観察された人心。それを読ませる事による、深い意味での『共感』である。

 この小説からは、もう既にそれが読み取れる。というより、今まで読んできた夢枕獏作品のどれでもそうだ。今日は、それを初めて文字に起こし、意識する事ができた。

 今、俺は夢枕獏の手腕によってボコボコに殴られている。こういう小説が読みたくて、それが高じて書きたかったのだという事を思い出している。

 これは最高の気分でもあり、『あなたの猿真似しかできない俺を筆舌でぶち殺してくれ!!!』と叫びたい気分でもある。

 夢枕獏の魅力はこれに留まらないが、こんな所で語り尽くすことは不可能だ。是非、読んでみて欲しい。俺は久々に、読んでいて小説を書きたくなる小説を読んでいる。オススメは『魔獣狩り』三部作だ。

 あああっ、こうしちゃ居られない。

 さっそく、Amazonで『白鯨MOBY-DICK』を買うボタンを作ったので、皆さん押してみてください。さよなら~~~


無題

 これ、危ない魚肉ソーセージだ。

(終)

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