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どこで誰がどのようにどのくらい犠牲になるのか

辺野古新基地建設即時停止などを求めて、5月9日から都内でハンガーストライキを行っている元山仁士郎さんが、その5日目となる5月13日に、外国特派員協会で記者会見を行った。

英語での趣旨説明、オンライン署名進捗の第一次報告の後、記者からの質問に答える約1時間。ハンガーストライキ中なのに、記者の質問に対して自分の言葉で、いろいろな人たちへの配慮が伺える回答を丁寧に行い、自身の回答の逐次通訳にも真剣に耳を傾けていた。その様子にとても胸を打たれた。

会場で質問した記者は4人。そのいくつかの応答の中に、重要だしこれからの希望とか、状況を変えるヒントになりそうだと感じるものがあった。要旨を書き起こして、ポイントを考えてみる。

記者質問1

:ロシアによるウクライナ侵攻があり、日本国内では、中国などを仮想敵国としての軍備増強もやむを得ないという考え方を支持する世論の高まりがある。元山さんが求める辺野古新基地建設即時停止とは逆方向だがどう思うか

元山さん回答1:1日も早く和平交渉がされ、平和が訪れること、ロシアが1日も早く侵略を止める決断をすることを望んでいる。世論調査等で国内の空気は認識している。いったい誰が犠牲になるのか。そのような事態が起きてしまったときに狙われるのは誰か。どこに住んでいる人がどのくらい犠牲になるのか。偶発的な衝突による戦争の犠牲者は想定できているのではないか。沖縄戦で「軍隊は住民を守らない」という教訓を得た。沖縄戦を繰り返してはいけないとずっと教わってきた。辺野古だけでなく自衛隊基地の強化も行われている中で、もう一度沖縄戦が起きてしまうのではないか。起きかねないような事態を想定して、日本政府、防衛省がアメリカと一緒に軍事作戦を作っているのではないか。家族や友人、親戚たちの生活を知った上で、有事が起きかねない事態を想定しているのか。ものすごい恐怖心を抱いている。台湾有事についてや軍事強化の議論がされるとき、沖縄の人たちが犠牲になるということをどれくらい想定しているのか。また想定しているのであればそれをしっかり説明、講評して、沖縄の人たちと話をする姿勢、実質的な議論や対話を踏まえて、仮に進めるとしても、沖縄の人たちの生活を踏まえて進められる必要がある。

ポイント1具体的に起こりうる事実を詳細に想定すること。それによって危機感を共有できる範囲は広がる。何が起こるのかリアルに想像できればできるほど回避したくなる。コミュニティ・オーガナイジングで戦略を作るときに「同志が直面する困難」で「同志がどこでどのように困っているか」を絵に描いたり、「日記に書くとしたらどんな風に書くか」想像するのと同様。

記者質問2

:沖縄の30代以下の意識や反応はどう受け止めているか

元山さん回答2:沖縄がどれだけ声をあげてもないがしろにされている現状があって、日本政府に対して辺野古新基地建設を止めてという声も届かない状況で、あきらめざるを得ない状況に追い込まれていると感じてしまう人たちも一定数いるのではないか。

ポイント2:辺野古新基地建設の是非を問う2019年2月24日の県民投票実現、その前のデニー県知事誕生、20代を中心としたメンバーが奔走し、そのときのメンバーのつながりはすばらしいコミュニティに育っていると感じる。そのコミュニティが希望を失うかもしれない危機に直面しているのが今か。日本の他の地域で、こんなに自分たちが暮らす地域のことを考え、政治や民主主義のプロセスに則って行動する若い世代のコミュニティはほとんど知らない。希望だと思う。その希望は、守り育てたいもののはずなのに、つぶそうとする社会とは何なのか

記者質問3

:元山さんにとって沖縄の基地問題の“解決”とは何を指すか

元山さん回答3:沖縄の基地問題は日本全体の問題。県民投票後全国で100回程度講演し、参加者に対して行動提起をしてきた。デニー知事もトークキャラバンで同様のことを行っている。日本に住んでいる人たちに辺野古、沖縄の基地問題を伝えて自分事として考えてほしいと伝え続けているが目に見える改善はなされていない。制度的にどうにかしていかなければならない状況に感じている。人種差別などに対するアファーマティブアクションのイメージ。沖縄に基地が集中している状況を積極的に法律や制度で減らしていくような仕組み。国会で「米軍基地削減法」のようなものを制定して、年に何%かは削減するようにアメリカと交渉すること、などの条文を入れて交渉する。日米地位協定4条に、アメリカが使わなくなった基地は返還するということが謳われているから不可能ではないと思っている。構造的に差別を解消していかなければならない状況ではないかと最近は感じている。

ポイント3:すごくいい考えだとピンときた。起きていることをスルーせず声をあげる、アクションする、沖縄は民主主義的に非常に健全な社会だと思う。でもそれがことごとく、民主主義的に不健康な日本という社会によって無視され続け、記者質問2への回答のような希望が失われそうな危機に直面している。ある意味当然だと思う。「基地のない島」という大ゴールの下に、複数の小ゴールを設定して、オセロのように一つひとつひっくり返していって最後には全部シロにするイメージで進めたら、疲労感、あきらめ感から少し開放されるかもしれない。「国会で米軍基地削減に関する法律を制定させる」を小ゴールとしたら、①それに向けて一緒に走る仲間は誰か、関係者の洗い出し【関係者マップ作り】②法律制定のキーパーソンは誰か、意思決定者は誰かの特定【パワー分析】③いつまでに制定を目指すか、現実的なタイムライン策定【タイムライン作り】をチームを作って実践することができるのではないかとリアルに考えた。これもコミュニティ・オーガナイジングでキャンペーン戦略を作るときの手法。

記者質問4

:自民党や政府との直接のやりとりはあるか。ないのだとしたらハンストが無視されているのか。どう分析しているか。

元山さん回答4:私の命をかけた訴えに対して、自民党、公明党、日本政府からあまり反応がないのは残念に思う。50年前、沖縄が復帰する前は、日本の人たち、政府、自民党は今より反応してくださっていた。自民党も変わってしまったと思わざるを得ない。公明党は、基地の返還リストを作って、どこの基地を米軍がどのように使っているかを調べて、ここは返還できるのではないかと、1968、69年頃自民党に提案していた。公明党も変わってしまった。せめてハンスト現場に足を運んで私から直接話を聞くということをやってほしい。心ある政治家もいると思う。ぜひ足を運んで、一緒にお話しができればと思います

ポイント4:法律を作ることを目指すキャンペーンの関係者マップで、公明党はかなりキーになりそうだと思えた。「公明党」「自民党」とひとくくりにはせず、元山さんも「心ある政治家もいる」と言っているので、一人ひとりの大事な思いを引き出す対話【関係構築】を積み重ねることで、賛同する議員が増えるのではないか。また、公明党が作っていたという基地返還リストの現代版を作れば、基地削減を少しずつ実行することがそれほど難しくないことの証明にもなりそう。キャンペーン戦術に組み込めそう。

さいごに

元山さんは都内でのハンスト最終日の5月14日(土)9時頃から、国会議事堂正門前でハンストによる抗議を行うとしている。「心ある」政治家のみなさん、特に与党議員のみなさん、ぜひ足を運んで元山さんの思いを直接聞いてください。元山さんのハンストの様子は、いくつもの動画がSNS等に上がっているが、訪れる人たちのお話しに、丁寧に真摯に、でも思いを込めて対応している。考えや立場が違う人たちとどう話すのか、どう自分の考えを伝えるのか、考え続けている。5月15日には沖縄訪問予定という岸田首相もぜひ、沖縄に行く前に、国会議事堂正門前で元山さんに会っていただきたい

元山さんはハンスト開始と同時に、Change.orgでのオンライン署名も募っている。この署名が伸びれば、元山さんの下に足を運ぶ「心ある」政治家が増えると思うので、まだの方はぜひ署名を。他にもできるアクションを元山さんがまとめているのでご一読の上、ぜひ参加してください!

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