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離島にて、牛と共に生きる。

~萩市地域おこし協力隊活動レポート~

みなさんこんにちは!
萩市ローカルエディターの上田です。

見島牛ってご存知ですか?
萩市の離島、見島にて飼育されている牛のことなのですが、なんと昭和3年に国の天然記念物に指定された希少な品種なんです。
そんな見島牛を島で飼育する萩市の地域おこし協力隊がいます。
今回は萩市の離島にて牛と共に生きる萩市地域おこし協力隊花田隊員に色々お聞きしてみました。地域おこし協力隊や島の暮らしに興味のある人に読んでいただけたら嬉しいです。

<<<萩市地域おこし協力隊 花田康章さんインタビュー>>>
◇ご出身は?◇
北九州の小倉です。大学(至誠館大学)からは萩でした。大学後は北九州へ戻りましたが、また萩に住みたくて探していたところ、萩市協力隊の募集をみつけ応募しました。私は7人兄弟の2番目で兄弟が多かったので、子供の頃は母親が出産となると四国の祖父母のところによく預けられていました。その当時に四国で遊んだ自然での暮らしがとても良かった。その頃から将来は自然豊かなところで暮らしたいとずっと思っていました。

◇以前はどんなお仕事をしていらっしゃいましたか?◇
見島に来る直前は、自分の限界値をあげるためにきつい仕事をしてみたかったので、トロール船※ に乗っていました。
24時間操業で魚で船が満杯になるまで働く、体力的にも精神的にもかなりきつい仕事です。冬の日本海は最もきついのですが、自分を試すためにあえて選び電話一本で船に乗りました。
2時間おきに非常ベルで起こされ24時間ずっと働きます。
網を下ろしている1-2時間だけ寝れるのですが、寝る場所も人間がやっと1人横になれるくらいの空間を与えられそこで寝ました。
本当に過酷な環境です。
新人は船底からロープで氷をあげる仕事(氷上げ)で手の皮が4枚くらいむけて腫れあがりグローブみたいになります。
「苦しい」でしかない日々でした。
アカムツ漁の禁漁期が終わって1回目の時は3日間くらい寝れないほど忙しいんです。
トータルで半年間働きました。
そのおかげで、今は何があっても笑っていられる。
幸せいっぱいです。

※トロール船…トロール網を使用した漁業のための漁船のこと。底引き網漁。トロール網は魚網の一種で、海底や調定された深度をさらうものである。この網を使う漁業・漁法がトロール漁業、これを行う漁船がトロール船であり、それら三業いずれも「トロール」と略される

師匠にあたる保存会会長の熱意に打たれ、飼育をやろうと決意しました

◇何故、見島で見島牛の飼育だったのですか?◇
実は牛というこだわりはなかったです。
ですが天然記念物の保存というミッションに魅力を感じ、生活環境としても仕事から遊びが全部完結できる場所を探していました。都会にいると何をするにもお金がかかるじゃないですか? もともと自然が好きで、海が好きで、この環境でできることが好きでした。
見島ならやりたかった生活が全てできる環境だと思いました。

◇育ちの中で、牛を育てる経験はありましたか?◇
全くないです。
ド素人からです。
最初は見島牛を育てている方に、1年間ついて見島での飼育を覚えました。
雄牛が暴れると危ないので、最初に雄牛に対する接し方を教えていただきました。
雌が発情している時などは特に注意が必要です。
雄牛と雌牛は全く違う生物と思っています。
雄牛は馴れ合いは禁止。
自分より強いか弱いかを人間にも試してきますよ。
怖がっている人は何をするか分からないので、1番反応するんです。
餌の量も全く違います。雄牛の方が倍量食べるんですよ。
主な餌は牧草で、私は海外産の乾牧に頼らずに100%見島産の牧草にこだわっています。
繁殖用の雌牛は太らせたら妊娠しにくいので太らせないようにしています。

◇不安はなかったですか?◇
天然記念物を育てることに対して、プライドと使命感を持っています。
見島に来て最初に現地で保存会会長(師匠)に案内してもらった時に、師匠の熱意が伝わりました。
こんな風に師匠が守ってきたものを、このまま続けて守っていきたいとすぐに決心しました。
今の保存会の意思を受け継いで、これから何十年先もずっと守っていこうと決めています。
飼育に関して言えば、牛からすれば人工授精も痛いし、牛の嫌がることもしなければならないし、見島牛を増やす(繁殖)ことと守ることが一番大事なので、動物が好きというだけでは務まりません。
日々栄養を考えて牧草を作ったり、できるだけストレスのない環境づくりを心掛けたり、母体にとって良い事を実行したり、受胎し辛い夏の暑さ対策、サシバエ※ の対策、金銭的な問題、など課題は山積みですね。(※サシバエ…イエバエ科に分類されるハエの一種。吸血昆虫であり、牛白血病ウィルスなどを媒介する害虫である。サシバエ族の成虫は全て哺乳類から吸血して生活し、吸血性のカやアブなどが雌のみ吸血するのと異なり、雄も雌も血液を食べ物としている)

◇見島牛飼育の年間のスケジュールを教えて下さい◇
ほとんどが牧草作りと開拓(牧草地)です。
1日のスケジュールは、朝と夕方が牛の世話(エサと飲み水やり)で、2ケ所に分かれている放牧場(生まれたばかりの子牛の親子と、繁殖用の雄と雌で分けている。)にいる牛の健康状態の確認です。今は10頭飼育しています。
1年前は5頭でしたが、去年の年末に保存会の高齢で牛の世話を出来なくなった方が飼っていた14頭と、自分が飼っていた5頭で19頭の世話をしていました(飼育施設が足りないため、9頭を廃用)。

同じような思いをもつ人に見島に来てほしい

◇これからの課題は?◇
見島牛飼育についてたくさんある課題の中でも一番問題なのが、高齢化のためこれから飼育する農家がどんどん減っていくことです。もし何かあったときに、牛を入れることのできる施設が欲しいと切実に思っています。今は野外を使って飼育(放牧場のような)していますが、水(500ℓのタンク)を運ぶことひとつとっても大変な現状です。効率的に牛を飼える牛舎があれば、もっと環境良く飼育できますし、もしものときに備えられます。実現するまでに時間がかかるので、根気強く訴え続けていきます。

◇休日はどんなことをして過ごされていますか?◇
主に魚釣りをして過ごしています。地域の方や自衛隊の方と楽しく過ごしています。日中であっても、合間を見つけ野菜・シイタケの原木栽培・果樹の栽培・養蜂等も行っていて、見島牛の保存活動との組合せに適した仕事を模索中です。

◇これから見島に移住したいという方にメッセージをお願いします◇
普通に考えて離島での生活は不便なのかなと思います。ですが、その不便と向き合い工夫していく生活が私は好きです。
私のやっていることを知った都会の人が「僕も私もやってみたいな」と思ってくれたらいいです。週末の度に島からどこかへ遊びに行ってしまうような人はちょっと…、見島での生活が好きな人に来て欲しいと思います。
興味あれば未経験でも良いから何かのきっかけになってくれたらいいです。
ただ、ここ最近は観光客のマナーが悪いんです。
不法侵入という言葉を知らないのか…勝手に人の敷地内(牧場)に入ってくる人がいます。
見島牛を見てみたいと思ってくれるのは嬉しいですが、どこの牧場でも知らない人が入ってきていいところはないです。
牧場に入る際には、消毒をしっかりしないと、牛が家畜伝染病などの病気にかかってしまいます。そのような病気から牛を守るためにも、牧場内の見学許可は難しいと思います。見島は獣医が居ない島ですので、処置が遅れ死んでしまう事も考えられます。島に4頭しかいない種雄牛が1頭でも死ぬと全て計画交配が狂ってしまいます。
余裕があるところは柵を作って看板を造れますが、ここには資金がなく、毎日のエサを集めるので時間も足りません。
天然記念物を守るための最低限のマナーは守って欲しいと思います。

いかがでしょうか?
萩市の離島で天然記念物の牛を守り、育てている花田さんの思いに共感した人や、応援したいなと思った人は、ぜひ「興味ある」ボタンをポチッとしてください。
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それではまた!
萩市ローカルエディター上田でした(^^)