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「感覚特性」を知って快適な在宅ワークを。

哲学者の谷川嘉浩さん (@mircea_morning) に誘っていただいて,「学問さんぽ」というオンライン配信イベントに登壇しました。

今回は「作業療法士 (Occupational Therapist: OT)」の立場から,「感覚特性」をキーワードに話題提供をしてほしいとのこと。いわく,「在宅ワークが増えて仕事の環境がガラッと変わったときに感じるギャップや違和感について,感覚特性を手がかりに考えていくと新たな発見があるのではないか」とのことでした。なかなかな無茶ぶりやな…と思ったのですが,実際にやってみると思いのほか盛り上がりました。

たくさん質問して盛り上げてくださった谷川さん,角勝さん (Filament, Inc. CEO; @SumiMasaru) のお蔭です。ありがとうございます。

なお,実際のライブ配信はYouTubeで視聴できます。このページの末尾にもリンクを貼っていますので,よかったらご覧ください!

当日の発表スライド公開

発表に使ったスライドはSlideShareにて公開しています。よかったらご覧ください。


オススメコンテンツ紹介

「感覚過敏」「感覚特性」などのキーワードを入れると,ネットではたくさんの情報が得られます。紹介したいコンテンツはたくさんあるのですが,いくつかにぐっと絞ってお話しします。

「ふつうってなんだろう?」
Eテレの「u&i」という番組のなかのコーナーです。なかでも,「#4 フミヤのふつう」は感覚の受け取り方の偏り・個人差に焦点を当てた内容になっています。2分間の短い動画ですが,とてもわかりやすくまとめられていますし,感覚特性の偏りがどのような生きづらさに繋がるかについても,共感しやすいかたちで提示されています。

「たとえば,サラダを食べると,ラーメンにチョコレートを入れた感じというか…まったく違うもの同士が混ざり合う気がして,気持ち悪くなります」


「子ども情報ステーション」
NPO法人ぷるすあるはの記事「感覚過敏と鈍麻:発達障害にともないやすい感覚の特性」です。主に感覚過敏について,「かかわりの原則」「工夫いろいろ」などが紹介されています。

発表中にもお話ししたように,感覚特性の問題は発達障害の理解・支援の文脈でよく扱われるため,この領域のなかに多くの知見が蓄えられています。発達障害の有無にかかわらず,感覚特性の偏りは多かれ少なかれすべての人にあるものなので,このような情報を活用することで在宅ワークの環境も快適なものに変えていけるかもしれません。


「子ども理解からはじめる感覚統合遊び」
作業療法士と保育者がタッグを組んでつくった書籍です。幼児向けの内容ではありますが,感覚特性やその対応例について具体的で分かりやすい解説が掲載されているので,大人でも役に立つ情報がたくさんあると思います (私も出版に関わらせていただきました)。


「みんなでつなぐ読み書き支援プログラム」
こちらは読み書きに困難を抱えるお子さんの理解・支援のためにつくられた書籍です。感覚特性を直接的に扱ったものではありませんが,感覚特性に関する知見をベースにした,さまざまな文房具や便利グッズ,アクティビティが紹介されています (私も出版に関わらせていただきました)。


「自閉スペクトラム症の感覚過敏の調査研究の動向」
もう少しアカデミックな視点から,感覚特性や発達障害との関連などについての情報を入手したい方は,国立障害者リハビリテーションセンター研究所の井手正和先生の記事などを参照されるのが良いかなと思います。


感覚特性を知るためのアセスメント

残念ながら,一般の方が気軽に自分の感覚特性について知るためのツールはほとんど整備されていません。ですが,感覚特性に関する質問紙などがないわけではないので,一応紹介しておきます。ひろくさまざまな人が使えるツールが早く開発・公開されると良いのですが… (あるいはそういうサービスを展開してくださる方がいたら,ぜひ協力させてください!)

「感覚プロファイル」
医療・福祉の現場でも使用されている (標準化された) 質問紙です。発表中にお話ししたように,回答をどのように解釈したら良いかという点で作業療法士など専門家の知見が必要になるため,一般の方にとっては入手は難しいかもしれません。

しかし,研修のなかで使用されるといった場面もあるようなので,解説してくれる専門家+質問紙の購入費用さえ何とかなれば,企業研修などでも使用できるかもしれません。


「感覚アセスメント」
有料にはなってしまいますが,一般の方でも気軽に入手しやすく,かつweb上で完結するツールです。子ども用の質問項目が並んでいますが,大人の場合は (便宜的に) 子どもの頃を思い出したり,大人の文脈に読み換えたりしながら回答することで,一応結果が得られます。感覚の受け取り方の特徴や,どのような工夫をしたら良いかの提案が返ってくるので,自分の感覚特性を知るのにはちょうどよいかもしれません。

※現在はどうなっているかわかりませんが,無料会員登録すると,一回は無料でアセスメントを利用できるようです。


動画配信を視聴する

さて,「学問さんぽ」の様子は,YouTubeで視聴することができます。1時間ほどありますが,もしよかったらご覧ください。

もし何か失言していたら,そっとやさしく教えていただけるとありがたいです(笑)。


おわりに

感覚特性の偏りは,発達障害の有無にかかわらずすべての人にあります。そして,感覚刺激は覚醒 (脳の目覚めの状態) や注意,情動に影響するので,自分の感覚特性について理解を深めることは,そのまま「過ごしやすさ」に繋がります。

今回,感覚特性のお話を「在宅ワーク」に関連づけるという試みを主催者の谷川さんに提案していただきましたが,最初に聞いたときは「そんなひろげ方もあったのか!」と,こちらが目から鱗でした。これを契機に,多くの方が自分の感覚特性を知り,他者の感覚特性に気を配り,そして,みんなで少しずつ譲り合いながら「やさしい社会」をつくっていけたらいいな,と思いました。

最後まで読んでくださりありがとうございました!

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