見出し画像

軽くあげた右手。その先に。

二度、三度。歩道を確認。
学制服、体操服、ランドセル。
国道2号線を東に進みつつ、戻ってきたどこか懐かしい景色に、自然と笑みがこぼれる。

お店に到着し、オーダー。エッグキャベツドッグとホットコーヒー。
アメリカンダイナーを思わせる空間。BGMにはオールディーズ。
そして、保たれた席の間隔。開けっ放しのドア。

15時という時間帯もあって、客は私1人。
オーダーしたホットドッグを食べながら、緊急事態宣言期間の営業状況について、店主と話し込む。「お店は閉めずに、時間短縮営業やテイクアウトで何とかやりくりしてきた。」「お客さんの層がいつもと違い、普段来ないお客さんも。」「近所の男の子がよくパンを買いに来たり、家族分のまとめ買いや、ビール、ハイボールを持ち帰る人も。」…。

話の途中、店主が、ふと窓越しに外を見る。
そして、軽くあげた右手。その先には、ランドセルを背負った男の子が手を上げていた。特殊な環境下で生まれた関係性が、日常に戻っても続きそうだった。

今日から、学校が始まる。

#棚番号3 #とある喫茶店の風景

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?