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【オンラインツアーのつくり方】00.はじめに:オンラインツアーの特性を知ろう

こんにちは。萩ジオパーク専門員の白井です。

今回は『オンラインツアーのつくり方』の3つのステップの前に、まずオンラインツアーの特性を知っていただこうと思います。

私たち萩ジオパークでは、森の中、海岸、ときには古い町並みを舞台に、ガイドがお客様と一緒に遊んだり観察したりしながら感動を共有するツアーが好評をいただいています。

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この活動は2017年からスタートしたばかりのものですが、参加者数は年々増え、さあこれから!というところで2020年、新型コロナウイルスの影響を受けてしまいました。

なんとか活動を継続することはできないか、あれこれ考えて行き着いたのが“オンラインツアー”です。

オンラインツアーの長所と短所

さて、オンラインツアーとはどんなものでしょうか。
一般的には、ガイドとお客様がZoom等のWeb会議システムでつながって行うツアーです。対面で行うリアルのツアーと決定的に違うのは、お客様が現地にいないことですね。

04_オンラインツアーイメージ

リアルツアーと比較したときのオンラインツアーの長所と短所をいくつか紹介していきましょう。

<オンラインツアーの長所>
●天候に左右されにくい
リアルのツアーを行うときの不安要素のひとつが、当日の天気です。
オンラインならお客様は安全な部屋の中なので、現地のガイドさんと機材の安全さえ確保されていれば、雨だろうと雪だろうと開催できます。むしろ、リアルのツアーでは見せられないような悪天候時の景色も見せられるという良さがあります。
●特別な場所も案内できる
お客様が現場にいないため、安全の確保が難しい場所や、保全の観点から人の立ち入りを制限しているような特別な場所もご案内することが可能です。保全と活用の面からも有効な手段と言えます。
●大人数を少人数で案内できる
オンラインならお客様の安全確保はほとんど気にする必要がありませんし、集団の後ろの方のお客様に声が届かない、なんてこともありません。このため、やろうと思えばガイド一人で100人だろうと1000人だろうと大人数のお客様をご案内できます。
●お客様の視点を限定できる
リアルツアーでは、お客様が思い思いの方向を向いて必ずしも見てほしい方向を見てもらえるとは限りません。対してオンラインツアーは全員が同じ映像を見るので、見てほしい方向の景色を必ず見てもらうことができるし、見てほしくないものは見せない、ということも可能です。
●気軽に参加しやすい
旅先とどれだけ距離が離れていても関係なく、パソコンを起動してから5分もかからずにZoomにアクセスできるので、慣れている人にとってはとても気軽に参加することができます。そのため「気になっていたけど遠くて行けなかった場所のオンラインツアーに参加した」とか、「現地に行く前の下見として参加した」という方も多いようです。
<オンラインツアーの短所>
▲会話が一方的になりがち
Zoom等のビデオ会議システムの特性上、複数の人が同時に喋ったりテンポよく会話のキャッチボールをしたりすることはリアルのツアーに比べると難しいです。そのため、ついついガイドさんが一方的に喋り倒してしまうことも...。
▲間延びしがち
テレビやYouTubeの動画は編集作業を経て余計な部分がカットされ、短くテンポよくまとめられています。しかしオンラインツアーは編集もされていませんし、リアルのツアーと比べても会話のテンポが悪くなりがちなため、間延びしてしまうことも多々あります。
▲お客様の視点が限定される
メリットの一つで「お客様の視点を限定できる」ことを挙げましたが、これはデメリットでもあります。リアルのツアーでは360度、お客様が見たい方向を見て空間を味わうことができますが、これが制限されてしまうことはストレスに感じることもあります。
▲におい、温度、味が伝わらない
リアルのツアーでは五感を使って楽しむことができますが、オンラインツアーの場合は、におい、温度、味などの、視覚と聴覚以外の感覚を使った体験を提供することができません。
▲未経験者が参加しにくい
メリットで挙げた「気軽に参加しやすい」というのは、パソコン操作やZoom会議等に慣れている人のお話。あまり慣れていない、あるいは未経験者にとってはかえってハードルが高いといえます。

こうした長所と短所を理解した上で取り組むことが大切ですね。
また、短所についてもガイド技術で進行のテンポを向上させたり、小道具やお土産物を事前送付したりすることで、ある程度克服することもできます。この辺りの具体的な方法も後々ご紹介する予定です。


2つのオンラインツアー

オンラインツアーは現地の景色をお見せしながら案内するのですが、その手法は大きく分けて2種類あります。
『写真や録画映像を使うもの(録画映像配信型)』と、『現場からライブ配信でお届けするもの(現地ライブ配信型)』です。後者は現場にガイドさんがいますが、前者は現場には誰もいないということになります。

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この2種類の手法の最も大きな違いは、お客様にお届けする“映像の質”です。

録画映像を使えばあらかじめ編集することができるため間延びしにくいですし、通信環境が安定した室内からの配信によって高画質で高品質な映像をお届けできます。情報の正確性を高めたい場合には『録画映像配信型』が向いています。
ガイドツアーのタイプでいえば、バスの添乗員さんが大人数の団体をご案内するような、説明と移動をくり返し、質問があれば応えるようなスタイルのものでしょうか。

一方で、現地からライブ配信する場合は画質やテンポが悪くなりがちですが、その時だけの景色を共有できたり、お客様とお話ししながら見たい方向にカメラを向けられたり、ときにはちょっとしたハプニングが起こったりもします。ライブ感を重視したい場合には『現地ライブ配信型』がお勧めです。
ネイチャーガイドのような、ガイドが参加者と一緒に観察したり、遊んだりしながら感動を共有することに重きを置いたツアーをするなら、こちらの方法が向いています。

この2種類の方法はプログラムの内容によって使い分けたいですね。
基本的にはライブ配信だけど電波が悪いところは録画映像、なんて感じで組み合わせて使うこともできます。


現地ライブ配信で感動を味わってもらおう

全編録画配信型であれば、パソコン1台とZoomが使えるだけですぐにできるし、昼でも夜でも時間帯を選びません。ガイドする側は楽ちんです。
しかしお客様からしたらどうでしょう。
写真や録画映像であれば、ウェブサイトやYouTube等で簡単に見られます。わざわざ参加するメリットとしては現地の人とお話ができる、というぐらいです。もちろん、お話ができるだけで十分に参加の意味はあります。ただ、果たしてそれは“ツアー”なのでしょうか...。

それに比べると現地ライブ配信型は、機材やスタッフの作業量、準備にかかる労力など、あらゆる負担が大きくなります。
しかしながら、その瞬間だけの景色やちょっとしたハプニングをその時の参加者だけで共有できるという特別感があります。それこそが、ツアーの醍醐味、参加する意義ではないでしょうか。同じプログラムでも、天候が違ったり、季節が違ったり、メンバーが違えば全く新しい体験ができるということでもあります。何度も参加したくなりますよね。

このシリーズで目指すのは、現地ライブ配信型です。しかも最も難易度の高い“野外”からの。
せっかく参加してくださるお客様とその時だけの特別な時間を過ごし、最高の感動を味わっていただけるオンラインツアーを提供したいですよね。


次回は、「01. 機材をそろえよう~外は機動力、内は安定感~」です。オンラインツアーに必要な機材環境を、最低これだけあればできる!というものから、あった方がより良いものまでご紹介します。
お楽しみに!

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