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CEO日記 2023年5月30日「巧遅は拙速に如かず」

今日は、5月の最終水曜日なので、月例会議を行いました。そして、弊社がいつもお世話になっているデザイナーの新井国悦さんが事務所を訪れてくださいました。
新井さんは、弊社の編集者から「とにかく仕事が早い」と評判の方。いったい、どんな方だろうと思っていましたが、とても愛くるしいオジサンでした。
そして、新井さんの話を聞いて、私が前職まで部下への指導方針の一つとして掲げていた、「巧遅は拙速に如かず」を思い起こしました。「こうちは せっそくに しかず」と読み、いくら上手でも遅いよりは、たとえ下手でも早い方が良いという意味です。確か、出典は『孫子』のはずです。

センセイレンテキ

ただし、”下手”といっても限度はあります。個人的には、8割で満点、7割で十分、6割で及第点だと思っています。
なぜ、巧緻は拙速に如かずを掲げていたかと言うと、情報(インテリジェンス)が具備すべき要件として、次の4つが求められるからです。

  1. 先行性

  2. 正確性

  3. 連続性

  4. 適時性

この情報が具備すべき要件は、試験の頻出問題でしたので、センセイレンテキと語呂合わせで覚えてました。それぞれの定義も紹介します。

  • 先行性:情報は使命達成の前提として必要な知識であり、常に指揮官の情勢情勢判断に先行して提供する。

  • 正確性:積極的な情報資料の収集と論理的かつ客観的な処理により、正確な情報の獲得に努め、指揮官の情勢判断に資する。

  • 連続性:指揮官の情勢判断に資するため、常に使命達成に影響する要因の変化の発見に努め、連続して情報を提供する。

  • 適時性:情報は必要とする時期に適時に提供し、使命達成に効果的に寄与する。

軍事用語なので表現は硬いですが、意味するところは分かるのではないでしょうか。情報活動において、先行性と正確性、連続性、適時性のどれも重要ですが、私は適時性に重きを置いていました。
刻々と変わる状況の中で意思決定を迫られるユーザーの立場で考えると、ゆっくりと時間をかけて作られた渾身の情報レポートを1本受けとるのと、7〜8割の出来栄えの情報をタイムリーに受け取るのでは、明らかに後者の方がありがたいと思います。また、この考え方は先行性、連続性にもつながっていきます。

質は量から生まれる

拙速という言葉だけを抜き出すと、あまり良くないイメージが先行しますが、仕事を早くこなすということは簡単ではありません。身体の動作と脳内での思考、この2つのスピードを高めた結果、早く仕事を終えることができるのです。
そういう意味で、新井さんは巧遅は拙速に如かずを体現されていると思いました。では、新井さんは、どこでスピードを高めるための訓練を積んできたのでしょうか。新井さんは、若い頃に製版会社で働いていたそうです。
製版とは、出来上がったデータを印刷できる状態にすること。製版にはさまざまな仕事がありますが、その中で大変なのが「切り抜き」です。
切り抜きとは、文字通り写真の中から人物などを切り抜く作業。今はPCやスマホで簡単に切り抜くことができますが、プロが求められるレベルは違います。
新井さんは自転車の本を作っている時、メーカーから送られてきた写真をスポーク1本1本まで切り抜いていたそうです。そのような仕事をシフト勤務で、朝から夜にかけて、夜から朝にかけて、ひたすら繰り返していたとのこと。
オジサンになった新井さんが、「とにかく仕事が早い」と高く評価されている背景には、若い頃にこなした「量」があったのです。無論、切り抜きだけをされていたわけではありませんが、ある仕事を効率よく早くやりげるための定型化を自ら作り出したことが、トータルとしての早さという全体最適につながっていったのでしょう。
誰が言い出した言葉か知りませんが、私は「質は量から生まれる」を信じてますし、自分でも実践してきたつもりです。ですから、新井さんの話を聞いて、とても嬉しい気持ちになりました。
若い時の苦労は買ってでもせよと言いますが、まさにそのとおりですね。


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