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月危衣
2024年6月22日 01:52
有紗にとっては小説が一番大事だもんね。私よりも、ずっとさ。 それは、瑞希の家で二周年のお祝いをした日の翌朝。朝日に照らされて普段より白く見える駅までの道を、重いたい身体を引きずりながら並んで歩いている時のことだった。 咄嗟にでた「え?」という乾いた声はうまく喉を通らず、ただの吐息になる。瑞希は遠くの空を飛んでいる鳥を見ていた。「どっちも大事だよ。瑞希のことも、小説も。比べられない」