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君はレイ派かアスカ派か

TVアニメ『新世紀エヴァンゲリオン』放送当時、俺は大学生で、サークルは漫画研究会、略して漫研に所属していた。


ある日、数人で部室にいたところ、部員の一人がいきなり「みなさんはレイ派ですか? アスカ派ですか?」と言った。その部員はいわゆるキモオタの部類で、俺は彼の事を生理的に好きではなかった。
今思えば、同族嫌悪だと思う。今でもやっぱり無理だとは思うが。

「二人とも中学生だろ。俺はミサトさんがいいね。酒飲みでズボラでちょっちエロいお姉さん、最高じゃね?」

言い捨てて、俺は部室を出た。


そんな事を言っておきながら、当時の俺は、地元のゲーセンで知り合った中学三年生の女の子と付き合っていた。
身長は150センチくらいか。ショートカットで眉は太め、少し肌は浅黒く、南国にいそうな雰囲気で、顔はとてもかわいかった。
胸はおそらくFカップはあったのではないだろうか。太っているというわけではないが、全体的にむっちりとした体つきで、そこも南国にいそうな感じであった。

その子とは、ほどなく別れた。


年月が流れ、十年、二十年が過ぎても、「エヴァ」はよく話題にのぼった。パチンコにもなって、そこからファンになった者も多いだろう。新劇場版も公開され、息が長く、というか続編に時間がかかったのだが、とにかくパワーを感じさせられる作品だと、改めて思った。

そして、しばしば訊かれた「エヴァの女キャラで誰が好き?」という問いには、俺は必ずミサトさん、と答え続けた。

ミサトさんと大人のキスをしたい。その続きをしたい。

その気持ちは、今でも変わらない。


今年、『シン・エヴァンゲリオン劇場版𝄇』が公開された。
正直エヴァより好きなアニメ作品はいくつもあるが、最後まで観なければ、という思いで劇場に足を運んだ。

「シンエヴァ」を鑑賞した正直な感想は、ようやく終わった、だった。
内容はもちろん素晴らしかったが、とにかく完結した、終わった、という解放感の方が強かった。

しかし、終わっていないものが一つあった。
大学時代訊かれた問いに、俺はまだ答えを出していない。


「レイ派ですか? アスカ派ですか?」


気づけば四十代も半ば、実に四半世紀の時がかかったが、答えはすでにある。








俺は、アスカ派だ。



ツーサイドアップの髪がたまらない。あの髪に顔を埋め、思いきり鼻から息を吸い込みたい。制服姿もいいが、プラグスーツもたまらない。アスカに罵られたい。「あんたバカァ?」と言われたい。




M山、あの時答えなくて、時間かかって、ごめんな。



俺は、アスカ派だよ。



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