見出し画像

英語能力指数:デンマーク人の英語をディスってみる

非英語圏の英語能力を示す「英語能力指数 (English Proficiency IndexI)」の、2023年度版 国際ランキングが発表されました。

これは、スイスに拠点を置くEF Education Firstという語学学校運営企業が毎年おこなっているものです。合計 200万人以上に及ぶ成人のテスト・スコアをもとにしたもので、国別だけでなく、都市別、性別、年齢別などの英語能力の傾向を示すのに利用されています。

とはいえ、民間の一企業がやっていることなので、調査の手法に欠点があるのも否定できません。学術的見地からいうと、統計分析のやり方にやや問題があるのですが、こういう大規模データを定期的に出しているところが他にないので、各国政府やメディア、企業などは結構これに頼りがちです。

ちなみに、上位の順位は以下の通り。
1位:オランダ
2位:シンガポール
3位:オーストリア
4位:デンマーク
5位:ノルウェー

日本は遥か下の 87位で、韓国の(49位)や中国(82位)よりも下です。
なんなら日本は、アフリカのアルジェリアやマラウイよりも下です。この日本の順位に難癖をつけているネトウヨがいますが、私の個人的感覚でいうと、上位ランクの順位も、日本の英語力の低さも、両方とも、現実をよく反映していると思います。

長年ヨーロッパに住み、各国からの学者や学生たちと、職場や国際学会でひんぱんに接する機会がある者としての「体感」です。まぁこれについては、私見にすぎないと言われればそうですが。

自分の英語を棚に上げて日本人の英語力をケナしてもしょうがないので、ここでは、私が現在、居住し仕事をしているデンマークについて思うところを記しておきます。


「デンマーク英語」に注意

国際ランキングで4位に位置するだけあって、デンマーク人は英語が達者です。コンビニでバイトをしている若者や移民2世っぽい自転車修理工はもちろん、路上で小銭乞いをしているホームレス(あんまりいないけど)ですら英語を解します。

デンマーク訛りが強い人もいますが、多くのデンマーク人がイギリスの標準発音を学んでおり、その一方で、アメリカ文化の流入も顕著なので、それが混じっていることも多いです。英語に慣れ親しんでいるだけに、大体のデンマーク人、とくに首都コペンハーゲンにいる現地人は、たいへん流暢に英語を話します。

が、ここが問題です。たとえ「流暢に話す」としても、その英語が必ずしも正確であるとは限りません。

この際、発音の訛りは無視しましょう。私も日本語アクセントがありますから。訛りを払拭するのは容易ではありません。

問題は、単語の誤用です。これがかなり多い。多すぎて、典型的な例を挙げるのが難しいくらいです。これは、ある種のデンマーク人(学生とか)が知識不足ゆえに単に間違えている場合と、もうデンマークでは一般的にそういう言い方をする事になっているのだろうな、という場合があります。

デンマークに旅行するとか、ワーホリで単純作業に従事、あるいは短期留学くらいだったらあんまり気にならないかもしれませんが、プロフェッショナルとして働き、現地で生活するとなると話は別です。

けっこう間違いの多いデンマーク英語

うちの大学のアドミ職員と話したりメールでやりとりすると、彼ら彼女らの使う英語の間違いで混乱を生ずることも多々あります。

デンマーク英語の間違いの傾向としては、
(1) 動詞の選択がおかしい、
(2) 文章が冗長でくどい(そして、文法がしばしば間違っている)、
(3) 慣用表現をイキって使うが、使う場所を間違っていて意味不明、
こんなとこでしょうか。

一番困るのは、デンマーク人は英語でどう表現していいかあやふやな場合、もっともらしく適当に書いたり、明瞭にすべき部分をはしょって、何食わぬ顔をする点です。

中には、メールや書類は全部自動翻訳に頼って、見直したり充分補正しないまま送りつける人もいます。信じられないかもしれませんが、公的機関とのやり取りにおいてすら、同様の問題があります。まぁ英語で書いてくれるだけマシかもしれませんが。

そういう英文メールや文書を受け取ってしまうと、まぁ混乱させられ、時間を食うのですよ。忙しい時にこういうのに遭遇すると、「はぁ?何言ってんのこのひと?」とブチ切れそうになることもあります。

私の分野は語学とは全く関係ありませんが、それでも、同僚(教授とかの学術研究者)は英語で書いたり講義したりするのが仕事ですから、こういうミス・コミュニケーションはまれですが。

デニッシュ・イングリッシュにどう対応するか

デンマーク人が話したり書いたりする英語が分かりにくい場合はどうするか。これをイギリス人の教授に聞いてみると、「あれはもう、ある程度は想像で読んで、自助努力で察するしかない…」とのこと。これは彼がネイティブだからこそ、そういう対応が出来るのだと思います。

私は英語ネイティブではないので、書かれた文章を額面通りに読み、文章の意味が不自然だったり曖昧だったりすると、「は? で、ポイントは結局なんなのか?明確にせよ」と言わないまでも、内心、喧嘩腰になりがちです。

地元特有の英語は、日本の和製英語やシンガポールのシングリッシュ・アクセントに代表されるように、どこにでもあるものなので、順応しないといけない面ももちろんあります。

まぁ、ある程度は「郷に入っては郷に従う」姿勢もいりますが、英語で高度な仕事をするのであれば、「ある程度」にとどめるべきなのではないかな、というのが個人的な意見です。

でないと、非英語圏の地元民の英語に合わせすぎると、身内ではそれでいいかもしれませんが、外で恥ずかしい思いをしかねないからです。デンマークの小さい社会で通用しても、国際学会の発表や、英語ネイティブとの議論においては、ベストではありません。

あと、日本人、というか非欧米人(特に、英語が下手とされているアジア人)の場合、相手の英語が不明瞭であるがゆえに、はてな顔で黙って聞いていると、こっちの英語能力がないと勝手に判断されます。そうすると、話の内容が曖昧なまま進んでいくので、これはやめた方がいいです。

おかしいと思ったら指摘しましょう。できれば、「それは英語で言うところの○○を、君は言わんとしているのか?」と言い換えて確認したほうがいいです。(大学で教鞭をとっている者の立場から言っているので、一般人には当てはまらないかもしれませんが)。

当然、あんまりやると嫌われますが、コミュニケーションで大事なのは、情報や自分の意見または感情などを、できるだけ正確に伝えることです。ネイティブの英語のみならず、非英語圏のローカル英語に対しても、「だいたいの意図がなんとなく伝わればそれでいいよねー」と言う態度でへらへら接していると、日本人の英語能力はいつまでたっても低いままだと思います。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?