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2024年度版 ジェンダー・ギャップ指数:日本の順位が示唆すること

例年通り、世界経済フォーラム(WEF)による「ジェンダー・ギャップ指数」が発表されました。毎度のことながら、日本は先進国とは思えないほどの下位にランキングされています。

そして、「日本は男女平等が遅れている」という至極まっとうな懸念と同時に、「ランキングなんてアテにならん。何をもって『平等』というのか、欧米主流の偏った統計のやり方だ!」という必死の言い訳も、いつも通り湧いて出てくるんだと思います。

何をもって「平等」とするかは、主観や状況・条件による、というのは確かにそうなのですが、そういうものも全部かんがみて統計というのは作成されているのですよ、当たり前ですが。計量分析というのはそういうものです。

それを、「いや、うちの組織/分野では違う」とか、「親戚のお姉さんは高給をもらっている」とか、マイクロ・レベルの例を引き合いに出して反論するのは、そもそも的外れです。

まぁこれも毎度のことながら、日本のメディアで議論されると思われるので手短かに書きますが、低い順位それ自体も問題ですが、日本のジェンダー・ギャップ指数の低さは世界的にみてどう位置づけられるのかを理解することも重要です。


日本の順位:項目別

ジェンダー・ギャップ指数は、「国際ジェンダー・ギャップ報告書」において網羅されています。報告書の全和訳があるのかどうか知りませんが、日本政府や日本のいろんな組織がかいつまんで発表しているので、日本でも、たぶん周知のことであろうと思います。

ちなみに、この指数は「経済、政治、教育、健康」の4項目からなっており、2024年度版 報告書における日本の順位は以下の通りです。

・経済への参画と機会 :120位 
・政治的エンパワーメント:113位
・学歴 (教育における達成度):72位
・健康 (および出生・生存率) :58位

そして、総合順位は 146ヶ国中 118位。前年 (2023年)の125位からみると「すっごく改善したよね!」と、WEFからお褒めの言葉を頂いていますが、国際社会において、これはどういうレベルなのか、というのが問題です。

日本の国際的な位置づけ

ちなみに、日本の総合順位 118位の上下それぞれ3つにランキングされている国々は次の通りです (カッコ内は地域)。

115位 チュニジア共和国(アフリカ)
116位 バーレーン王国 (中東)
117位 ネパール (南アジア)
 日本は、この下の118位にランクインしています。そして、その下は、
119位  コモロ連合 (アフリカ、フランス領)
120位  ブルキナファソ (アフリカ)
121位  コートジボワール共和国 (アフリカ)

要するに、男女平等については、日本は途上国と同程度か、なんならそれ以下のレベル、ということです。

「(女性の)学歴」という項目における日本の順位(72位)というのもちょっと微妙です。思ったより高くないです。とはいえ、この項目では、北欧のノルウェーやアイスランドも結構低く、日本より下位です。ただし、日本と決定的に違うのは、ノルウェーやアイスランドは、政治的エンパワーメントの項目において堂々の1位、2位である点です。

これは、日本では、教育を受ける機会は女性にもそこそこ与えられているけれども、たとえ高学歴の女性であっても、政治の分野ではその能力が充分に活用されていない、ということを意味します。

同様のことは経済活動にも言えます。すでに各方面で指摘されていることですが、日本では上級職における男女格差が依然として大きいです。それを払拭すべく、女性の登用も進められているようですが、そういう女性陣も、結局「無力な広告塔」に終わっているケースが多いように見受けられます。

アジア圏内だけみても日本は遅れている

男女平等において、一般的に「すすんでいる」とされる北米やヨーロッパと比較されると日本って不利じゃん?という意見は無知すぎます。

ジェンダー・ギャップ指数は地理的区分もしていて、それによると、「東アジアおよび太平洋地域」の18ヶ国中、日本は下から2番めの17位です。韓国や中国はおろか、カンボジアやバヌアツ共和国よりも下位です。(ちなみに、この地域における最下位は、旧イギリス領のフィジー)

ジェンダー・ギャップ指数に対して、「いや、そんなはずはない!日本は先進国なんだから」と反論する人が時々いますが、ジェンダー・ギャップ指数はあくまでも男女の平等・不平等をしめす指標であり、単純な経済指数や国内総生産とは異なるということをまず理解しましょう。

とりあえずジェンダー・ギャップ指数のランキングだけを列挙してみましたが、この順位についてはいろいろ意見があるでしょうし、政府の対策ももちろん大事です。

ですが、個人的には、まずは日本の女性みずからが、過度な安定重視や男性への依存思考、社会の固定観念からもっと脱却してほしい、と願ってやみません。

WEF (2024) Global Gender Gap Report 2024, available at https://www.weforum.org/publications/global-gender-gap-report-2024/

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