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米国血液学会・米国移植学会「造血幹細胞移植あるいはCAR-T療法を受けた患者さんにおけるCOVID-19ワクチン接種」Section E

 今回も、米国から発信されている「造血幹細胞移植あるいはCAR-T療法を受けた患者さんにおけるCOVID-19ワクチン接種に関する専門家の意見」の続きを掲載します。

 今回が最終回です。患者さん本人ではなく、その周囲の人(家族など)へのSection となっています。

セクション E:造血細胞移植あるいはCAR-T療法を受けた患者さんの近親者へのCOVID-19 ワクチン接種に関する推奨事項


Q. 免疫不全患者における COVID-19 ワクチンの安全性と有効性に関するデータが少ないですが、これらの患者さんのウイルス感染を減らすために効果的なワクチン戦略はありますか?

 COVID-19陽性の家庭内感染は、ウイルス拡散の最大のリスクとなりますが、特に免疫不全患者への感染は顕著です。その他に密に接する人として、免疫不全患者をケアする医療従事者も含まれ、彼らもまた地域社会でCOVID-19にさらされるリスクが高くなります。家族、介護者、あるいは免疫不全患者をケアする医療従事者にワクチンを接種することは、免疫不全患者へのウイルス感染リスクを低減するための最も大事な戦略です。医療従事者を含むすべての密接な接触者は、COVID-19ワクチンを入手できるのであれば、予防接種を受けることが強く推奨されます。

Q.造血細胞移植あるいはCAR-T療法を受けた患者さんと密に接する人々(家族、介護者など)は、いつCOVID-19ワクチンを接種すべきですか?

 院内感染もあり得ますが、がん患者や移植患者の多くの感染症の原因は、院外での感染のほうが多いです。マスク着用、ソーシャルディスタンス、症状の確認、これらの高リスク患者さんに対する頻繁なコロナウイルス検査など、医療現場での感染対策の取り組みが強化されたことで、病院や診療所での感染の頻度は低くなっています。しかし、家族や介護者などが、特に閉鎖された環境や換気の悪い環境で長時間マスクをしないでいると、感染するリスクが高くなります。77,758 人の参加者を対象とした最近のメタアナリシスでは、家庭内での二次感染率は 16.6%と推定されています。新型コロナウイルス感染の 50%以上は、症状が出る前または無症状の感染者からの感染であることが示唆されています。したがって、症状のある人を高リスクの免疫不全患者さんから引き離す努力は依然として推奨されていますが、これだけで家庭環境での感染を防ぐことはできません。

 さらに、感染した場合、免疫不全患者さんの間でウイルスが長期にわたって排出されると、他の家族やその他の密接な接触者のリスクが高まる可能性があります。従って、造血細胞移植あるいはCAR-T療法を受けた患者さんのすべての密に接する人々が、できるだけ早くCOVID-19ワクチンを受けることを推奨します。

 現在利用可能なワクチンは、COVID-19 とその合併症の重症度を軽減することが知られていますが、一次感染の予防、さらにはワクチンを接種した人からの感染の予防に関するデータは十分に示されていません。そのため、ワクチン接種したとしても、家族、介護者は引き続きマスクを着用し、ソーシャルディスタンスを遵守するなど、新型コロナウイルス感染症を防ぐために現在推奨されていることをすべきです

Q. COVID-19ワクチンを身近な人に接種することで、造血細胞移植あるいはCAR-T療法を受けた患者さんにリスクはありますか?

 現在使用されているファイザーおよびモデルナのワクチンは生ウイルスを含んでいないので、これらのワクチンは免疫不全患者さんの身近な人に使用しても安全です。同様に、ジョンソンエンドジョンソン/ヤンセンのワクチンも、複製能力を失ったアデノウイルスベクターを使用しており、他者への感染のリスクはありません。

 アストラゼネカのワクチンも、ウイルスは複製できないように改変されており、他人に感染することはありません。したがって、これらのワクチンが米国で使用できるようになった場合でも、免疫不全患者さんやその近親者がワクチン接種によって新型コロナウイルス感染症に感染するリスクはありません

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