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2023/05/03 無限メンマにトドメを刺す

むかし「逆転裁判4」をやった時、驚いた記憶がある。
ラーメン屋の屋台を経営するおっちゃんが登場するのだが、そのおっちゃんはラーメンに入っているネギが嫌いだと言い出す。スープを飲もうとレンゲを差した時、ネギがするっと滑り込んでくる。それが耐えられないとか。
キッズだった私はびっくりした。生まれた時から常々、ラーメンからネギが消えればいいと思っていたが、あまねくラーメンに訳知り顔で乗っかっていて誰も文句を言わないので、自分以外の人類は全員好きなものなのだと思い込んでいた。でも、ラーメン屋の店主キャラがそれを言ってしまうものだから、ラーメンにおける致命的な孤独は克服され、却って抑圧されていたことによる反動から怒りへと変わった。こちらは麺と向き合いたいのに、無駄に絡みついて「ジャリ」と不愉快な歯触りで存在を主張してくるおじゃまぷよでしかない、消化器官の衰退と味蕾の減少した大人たちが脳死で肯定するトッピング風情がよ……と。

まあ、そんなことは本当はどうでもよくて(今はそんな憎んでない)、逆に私はトッピングではメンマがかなり好きでいる。とあるつけ麺屋(多分、もう潰れている)でサービスのメンマを頼むと、でかいザルの半分に麺、半分がメンマみたいな感じで出されて、それを飽きずにばくばく食べるくらいだった。無限に食えると思っていた。
ただ、ある時、Vtuberの月ノ美兎委員長が、どっかの配信でメンマは「邪魔」と喋っていたのを聞いた。嫌いとかじゃなくて、邪魔……それは今の自分がネギに対して思うことそのまんまで、その気持ちは非常にわかるな、と思った。あいつの食感もラーメンの麺の食感や舌触りをかなり損なうものだから、そういう人もいて然るべきと思っただけですぐに忘れた。

それを今、思い出しているということは、それにかかる出来事があったからなのだが、私はカップ麺に入ってるメンマがショボいことにずっと納得がいってなかった。割り箸の欠片を煮詰めたみたいなのが、3カケラ入ってるだけみたいな。
そこで瓶詰めのメンマを用意して、それを一個まるまるカップ麺にぶち込んでみることにした。器はでかい方がいいと思ったので、ごつ盛りの醤油ワンタン味。トッピングのメンマは100gで、ごつ盛りの二倍の値段がする。
フタを開けて勢いよくメンマをぶち込んだ瞬間「あ、これ量えぐいわ」と思った。でも、止めることはできないので全部ぶち込んだ。
その結果、具がメンマとワンタンとたまに麺の中華スープになった。
とにかく、ごろごろ入ってるメンマが邪魔。邪魔すぎる。麺もスープもワンタンも、どこをとってもメンマの味がする。ラーメンのメンはメンマのメンかよ以外のことが考えられなくなった。
なるほどね、と全部ムリヤリを胃袋に押し込んで、心得た。何事も適量がある。適量は人によって変わる。
「メンマが邪魔」を経験した自分は、メンマなら無限に食えると思っていた自分にトドメを刺したのだった。


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