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読書記録#4

2024年4月、5月


「これはペンです」円城塔
図書館で借りた本。久しぶりに好きな作家さんを見つけた。意味は破綻していないし普通に読めるけれど、よく分からない文章の癖になる感じ。文字というものは人を表すに足るものなのか、一度書いた文章の再現についてなど、節々に考えながら読むのが楽しかった。「これはペンです」「良い夜を持っている」の二部構成で、どちらもある人物を親族(?)が記述するという形をとっている。難解だけどアイデアに驚かされた作品。


「オブ・ザ・ベースボール」円城塔
ある街に毎年人が降ってくる。その街は対策として、バットとユニフォームを支給する。主人公は毎日そのバットで素振りをし、ついに人が降ってくるところに遭遇する。、、、

僕は最近、人の荒野を想像するのが楽しい。主人公がいるアメリカの何もない田舎は荒野に近い雰囲気で、何もないことが強調されていた。人は内に荒野を抱えているというのは安部公房からの吸収だけど、人というものの形をわかりやすくするのに荒野は適しているのだなと思う。荒野に対してどう立ち向かうのか、人によって様々で、面白い。もっと人の荒野を知りたい。


「銀河鉄道の夜」宮沢賢治
「ポラーノの広場」は、この「銀河鉄道の夜」の補完を行うように、メジャーな作品以外の作品を集めたものだったので、今回しっかりと宮沢賢治の代表作を読んだ。完成されていると感じた。他の作家の作品でも感じることだけど、有名になっていたり代表作と呼ばれているものは、作品としての完成度がやっぱり高い。当たり前かもだけど、ちゃんと読者を意識した書き方をしている気がした。創作が自己満足ではなく他者とのコミュニケーションの一環として行われている気がして、自分もそういうものをいつか作れたらと思う。


「たったひとつの冴えたやりかた」
J・ティプトリー・ジュニア

文庫本の表紙絵に惹かれて、数年前に買った本。積読の上の方にあったので読んだ。
SFのイマジネーションは本当にすごいと思う。空想の、本当に空想の部分から生まれている気がする。表紙絵や話に出てくる子どもは「星の王子様」モチーフなのかなという気がして、日頃子どもによく関わっている身としていろいろ考えるところがあった。
あとがきは衝撃的だった。


「水中都市・デンドロカカリヤ」安部公房
短編集。やはり人間の状態の描写がすごい。寓話性の高い話が多いけど、なにを揶揄しているかは分からない。ただ、面白い。「手」が好きだった。

「(霊媒師の話より)題未定」
安部公房初期短編集
「鴉沼」という話が印象的だった。極限状態の描写が本当にびっくりするくらい「わかる」という感じがする。絶対そんな状態になったことはないのに。不思議だ。


四月はこの他にもたくさん歌集を読んだ。短歌に関する本を読むと、単純に勉強になるのと、なぜかは分からないけど自分で短歌を作るのが難しくなる。でも作りたい。暮らしに疲れてきているけど、休みの日はわりかし本を読めている。今は積読を消化している。SFが多めで、少しハードルが高い。がんばる。

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