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育ててくれた物流業界を「誇れる業界」にしたい。解決策はハコベルに在りと転身、価値提供を追求

仕組み化、効率化、DX。いずれも「ハコベル」を紹介する際にふつうに用いる言葉です。現在ハコベルで執行役員 パートナー営業部長を務めている石川 瞬は「前職ではドライバーとしてハンドルを握っていた」という現場をよく知る1人。育ててくれた物流業界に対する想いが熱い言葉となってほとばしり、人を現場を動かしていきます。大きなキャリアチェンジを果たした現実に対し、本人のなかではごく必然的に訪れた転機。現場への想いやセイノーホールディングスとの取り組みについて聞きました。

執行役員 パートナー営業部長
石川 瞬 Shun Ishikawa
地元埼玉の運送会社にて、関東地場/中長距離のドライバー・運行管理者・利用運送責任者を経験。2016年5月にラクスル株式会社に入社。ハコベルでは営業を中心に、営業企画、サプライヤー開拓、採用、新規事業開発など幅広い業務に従事。現在はセイノーホールディングスとの各種プロジェクト推進を担当。

自分の成績より恩ある人へ報いたいとジレンマに。解決策はある日突然に


—— ドライバー職が最初のキャリアとのこと。大胆なジョブチェンジに映りますが、転機となったのはどんなことがあったのでしょうか。

 10年間、運送会社で仕事をしてくると、それなりに物流業界のことがわかってきます。お客様から仕事を頼まれて、いただいた仕事を委託先の運送会社にお願いして…という仲介人のような業務はすごく楽しくて、次第に友だち感覚のようにお客様から会社に電話がかかってくるようになりました。ハコベルで配車の人たちの会話を耳にするとわかると思いますが、なにしろとても気軽ですよね?

 毎日そういった気軽で気兼ねのないやり取りをしていたので、関係も楽だし稼げるし、という状態に。委託先の社長からもお客様からも、「石川がいるから」仕事がスムーズに運ぶよ、と言われるようになるうちに、考えるほどに「自分の役割は本来要らないよな」いう想いにとらわれるようになりました。

 委託先の社長さんからも「いつも仕事ありがとう!」と言われ、接待を受けたりする。そのたびにこれ、自分がいなくなればこの社長ももっと儲かるんだよなぁって思ってしまう。毎回仲介料をいただいているけれど、自分がいなかったらその運送会社さんはその分多くもらえるわけじゃないですか。要は運送会社さんが荷主と直接やり取りができればよいので。というようなことを日々思っていたときに、ハコベルのピラミッド構造のようなプラットフォームの概念図を目にする機会がありました。

 まさにこれだな、って思ったんですよ。これができるようになったら私が考えている課題感が解決できるし、お世話になった社長さんたちも報われるじゃないか、と思いました。それで転職しました。当時30歳です。

—— 30歳という若さでご自分の仕事よりも、物流業界という視点を持っておられたとは驚きです。

 いや、今でこそ物流業界という言葉を使いますが、当時そういう視点を明確に持っていたわけではありません。私はどちらかというと、ずっと「人」に向いていました。転職を告げたとき、泣きながら「がんばれ!」と背中を推してくれた社長、今でも飲みに行ったり連絡を取り合っている委託先の方々の存在。

 要はこの業界の好きなところって、人情とか義理に熱い人がすごく多いところ。その人たちがいたから、いまの自分のビジネスキャリアの根幹がつくられたと思っています。そういう育てていただいた恩を心から感じている方々が、一方では「もっと仕事がほしい、売り上げを上げたい」と仰っているのを聞いているわけですよ。
 
 そうなるとやっぱり、自分の身近な本当に恩に報いたいと感じている方々に対して、何ができるか?と考える日々のなかで、偶然にハコベルに出逢った。そこから「これはホントの楽しい世界になって、ホントの恩返しになるじゃないか!」と思ったのです。ですから、最初から業界のことを、となる前に、身近な人、お世話になった人たちのために、というのが何よりも大きかったのです。

—— お聞きしていても情熱が伝わってきます。そんな石川さん、当時のラクスル社に転じるわけですが、最初から「石川節」は健在でしたか。

 いやいやいや、最初の半年はもうストレスのかたまりでしたね(笑)。大変でしたよホント。物流業界出身でしたからノートパソコンを使ったこともなかった。運送会社はデスクトップパソコンが基本ですし、ひたすら電話とFAXの利用なので、メールだって1日1回見るか見ないかという世界です。

 当時ラクスル社の1事業部だったハコベルに入りましたが、そもそも転職活動をしていたわけではありません。あるとき会社に届く業界紙を見ていたら、例のハコベルのピラミッド構造をプラットフォームによって直接やり取りができる形にする概念図がドーン!と出ていたんですね。それをひと目見て「これだ!」って。それを目にしていなかったらハコベルを知る由もなかったし、そもそもベンチャーに行くつもりも、まして興味すらなかった自分がすぐに行動に移していました。

 その後、とんとん拍子で面談することになり、ラクスル社へ行ってみたら当時の社長が出てきて、しょっぱなの面談で社長が出てきたぞ!って(笑)。
 さらに驚いたのが、代表はプラットフォームのこと、多重下請け構造などをどう解決したらいいのか、と熱く語っておられた。私はその業界にいたから課題をすごく認識していたけれど、じゃあ解決するにはどうしたらいいのか?という点においては悶々としているだけで、具体的な解決策は考えもしなかった。

 なのに「この人はなんで業界のことなどなんにも知らないのに、なんで本質的な課題を理解していて、さらには解決しよう、というところまで熱く語れるんだろう?」と思ったんですよね。そこで、「業界のことは私がよく知っているので1番役に立つんじゃないか」っていうのが入社の理由、端的にそれですよね。

 入社してすぐは、そもそも一般的なofficeの利用もままならないレベルでしたので、Excel・PowerPoint・Wordの使い方、コミュニケーションツールも「slack使います、なんですかそれ?」という世界。不慣れな慣習の数々が当初は本当にストレスでつらかった。それに最初の半年、特に1ヶ月。知り合いもいないし、慣れ親しんだ物流業界の人もいない。隣にいたのは筋がね入りのテックのマネージャー、エンジニアで。住む世界が違う人たちしか周りにいませんでした。けれど、絶対にこれをやりたいと思ったから、適合していく努力を続けました。

—— まるでドラマのような展開ですね。22年にはセイノーホールディングス様とジョイントベンチャーを設立、お取り組みの進展について教えてください。

 非常に良好な関係性にあり、セイノーさんは大きな信頼と自由度をハコベルに預けてくださっています。そうしたなかで、セイノーさんとのこの1年における取り組みでは、具体的には大きく2つ、『ハコベルサポーターズプログラム』、そしてOEMの『見つかるチャーター』です。

 『ハコベルサポーターズプログラム』は対運送会社様への価値提供という軸で、『見つかるチャーター』はお客様への価値提供の軸になっています。これまで私たちはプラットフォームを拡充していくにあたり、お客様に相対し価値をご提供していくことはずっと進めてきましたが、運送会社さんに対しての価値のご提供という点については、まだまだ努力の余地がありました。

 運送会社さんのもっとも求める売上増というニーズに対し、ハコベルのプラットフォームにどんどん仕事量を増やすことが運送会社さんへの一番の価値になる。だからこそ、そのための営業活動を進めてきましたが、じゃあそれ以外に何かできていたか?と考えたときに、正直何もできていませんでした。

 ところがセイノーさんと一緒になることで、セイノーグループのメリットも活用させていただけることになりました。セイノーさんのグループ会社はおよそ90社もありますから、たとえばセイノー商事さんから燃料を安く仕入れることができるとか、ETCカードや保険など、これらに関してもセイノーグループが介在することで安価に調達できるようになる。タイヤやオイル交換といった必要資材を安く調達できるということは、新しい価値提供になるわけです。

 これは非常に画期的で、まさに「オープン パブリック プラットフォーム」であり、そのあるべき姿に近づいていることが、『ハコベルサポーターズプログラム』によって肌で感じられるようになりました。
 もうひとつの『見つかるチャーター』は弊社のOEM商品。通常のハコベルのサービスは、Web上でお客様がログインし、A地点からB地点へ荷物を運びたい際に、軽自動車で運ぼうと発注すると、最適なルートとかかる費用が表示される仕組みです。『見つかるチャーター』はハコベル同様のサービスでありながら、セイノー運輸のサービスとして展開しているので、お客様はセイノーさんのサービスとして利用しており、もちろん請求はセイノーさんからお客様にするものです。

 1台のトラックに不特定多数の荷主の商品を積載し、他の拠点まで運送する「路線便」、トラック1台貸切で荷物をA地点からB地点まで運ぶ「貸切」、物流の一連の流れを最適化し、さまざまな工程を一元化して管理する「ロジスティクス」と、セイノーさんはすべて展開しており、なかでも売上規模がきわめて大きいのは路線です。貸切やロジスティクスをさらに伸ばしていくうえで、『見つかるチャーター』という、具体的にわかりやすいサービスをご一緒できているのは、私たちにとっても大きな価値となっています。

 この2つの取り組みによって運送会社さん、お客様、それぞれに価値提供ができているということです。

乗り越えるべき課題は巨大、けれど夢のある取り組みとして熱を携えて進む


—— ここまで運送会社さん、お客様という観点のお話がございました。では、業界で働いている方々についてはどのように考えていますか。
 セイノーさんの広いオフィスに朝うかがうと、壁のあっちからこっちまで皆さん挨拶をなさっている光景が。私も自ら挨拶をしよう、と心がけているタイプだったのに、いつの間にか忘れかけていることに気がつきました。礼節の重要さを改めて感じるわけですが、デジタルによる効率化とアナログの良いところをバランスよく採用していこうよ、と口で言ったところで理解しにくいのですが、そんなときにセイノーさんの本社へ従業員を連れていけば実感として理解できる。会社としてあるべき姿を見せていただいていると思っています。

 また、とにかく皆さん親切でやさしい。そうした皆さまの姿を見ていて根底にあるのが所属している自分の会社を誇らしく思い、愛しいている心だ、と気がつきました。

 改めてそこで、私が物流業界においてもっとも大切なことだと考えているのが、「誇らしい業界」にするということです。


 巨大な規模の物流業界は、これまで働く人のマンパワーで成り立ってきた経緯があります。それがこれから始まる労働時間の規制、高齢化などによるドライバー不足が目に見えて迫ってきており、「2024年問題」と言われています。これまでのように「マンパワーで頑張ろうぜ」っていうのができなくなる時代が来るにあたって、人を増やす、担い手を増やさないとなりませんが、そこで行きつくのが「誇らしい業界」にすることなのです。

 物流はインフラですから電気ガス水道などと同じなのに、それらインフラ業界と運送業界の給与ベースは大きな差がある。なりたい仕事、業界かというと世の中的にはそうでないという現実があります。
 長年働いていたなかで「世の中からはいい仕事と思われていないんだな」と感じるようになったのも事実。かつては起業のためにドライバーをやってお金を貯めよう、とか、稼げる業界ではあったのに、いまは給与も労働条件も世の中的な見え方も変わってしまった。これじゃあ成り手は増えない。

—— 「誇らしい業界にする」。胸の躍る宣言です。そして、それは誰がやるのでしょう。

 それを誰がやるの?っていったら我々がやります、ということ。働く人が誇らしく思う業界にして、入りたいという人を増やしていく。給与水準を上げ、働きやすい環境を実現する。そのアプローチは、直接仕事のやり取りができるプラットフォームをさらに拡充すること、そして人の手だけでやってきたことを、仕組みやテクノロジー、データ等による支援とか、効率化を図っていく必要があります。両軸で価値提供していくべきである、と考えています。

 こんなに夢のある取り組みも、この時代になかなかないことです。乗り越えるべき壁はとても高いと思っていますし、障壁も非常に大きい。私が入ったときのテクノロジー・ストレスがまさにそれで、現場で働くそういう方たちに相対していくわけですから、業界課題を解決することが壮大な課題であるから困難だ、の前に、働いている方々の商慣習を少しずつ変容させていくことがまず、ものすごく難しいことだろうと考えています。

—— この挑戦を、改めてどんな仲間たちと取り組んでいきますか。

 自分なりの強い意志を持っていることが大事です。物流業界に対する思いがあるかどうかよりも、なにを実現したくてこの会社に入ったのか?という、自分の思いや志したことを貫き通していくこと。いうなれば「オーナーシップ」、それがあれば経験や才能なんかはどうにでもなると、私自身のこれまでの経験から感じていることです。

 現時点でいま、ハコベルがどういう組織か?というと、「互いに敬意を持ったプロが集まった組織」だなと思っています。各々の主戦場の強い領域の方が集まっていて、かつ領域の違いを尊重し合える環境だと思っているので、それは引き続き強く保っていきたいと思っています。
 
 人にはできること・できないこと、得意・不得意があるなかで、全部できるスーパーマンなんか絶対にいない、と私は思っています。だから、その得意な領域を携えてご入社いただいているわけですから、その強い領域においては「絶対負けない」という自負を持ってほしいですし、強いタレントがいっぱいそろっていれば、組織としては強くなると信じています。




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