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社内ハッカソンを野球に例えて解説したら強打者って何だと思う?

 先日、とある企業さまの社内ハッカソンがありまして、講評の最後に運営サイドが参加者におくったメッセージがとても素晴らしかったので、この記事を書くことにしました。

 我々 HackCamp は、企業さま向けに社員さんの知恵を集めて事業化のアイデアを考える場のサポートをさせて頂いています。この企業さまとはご縁があって、昨年につづき2回目の開催となりました。

 実は、立て続けに社内ハッカソンに関わらせていただく機会はまれです。いろいろな理由がありますが、いかんせん社内を巻き込んだ共創イベントととなると、会社側の運営サイドも多大な労力が必要なわけで。
 そんな大変な労力をかけて社内ハッカソンを積み重ねることには、どんな想いがこめられているのか?運営サイドが参加者に送ったメッセージは次のとおり。

バッターボックスに立つこと


サポートさせて頂いている身ではありますが、大変気づきの多い一言です。
「一回キリの社内イベントだけで事業化に繋がるアイデアがポンポン生まれるとは思っていない、まずは打席に立つこと」とおっしゃっていました。

 まずは打席に立つこと、バットを振ること、そしてその機会を増やすことで、その先にヒット性のアイデアが出たり、ホームランのような事業化検討が始まるということ。

 これまで数多くの社内ハッカソンという打席をサポートしてきた経験からお伝えすると、この企業さまの言う通り、社内ハッカソンというバッターボックスに初めて立つ社員さんが、初打席で目の覚めるようなヒットや、ホールランを打つことはなかなか難しい認識です。

 その理由は何個かありますが、一つには社員さんが「考えることを考える」ということに馴れていないというコト。

 メタ認知能力といったりしますが、この能力が高い社員さんは初打席初ヒットとは言わないまでもバットに当ててくる感があります。

強打者:デザイナーはなぜヒット級のあたりを量産できるのか?

 アイデアの強打者と言えば、デザイナーさんという職業が思い浮かびます。彼らはふつうの人が思い浮かばないようなエリアに打球を放ち、ヒットを量産します。

 デザイナーさんという人達もメタ認知能力が高い人種と言われています。

 我々HackCampでも学生デザイナーさん主体のイベントを行った事がありますが、コンセプトについては、やはり一般の人とは違って、少し洗練された印象を受けます。具体的には課題やテーマに独自の解釈を加え、再定義し、新しい価値へと変換して見せます。つまり主催者が意図していたエリアとは逆方向に打球を飛ばす感じ。

 この能力について人によってはセンスと表現するかもしれないですが、この能力が養われたヒントはデザイナーさんが育ってきた環境にありそうです。彼らが立ってきた打席とはどんなものか?。

強打者:デザイナーが育つ環境に何があるか?

 筆者は少しの間ではありますが、こういった方たちに囲まれて過ごした時期があり、デザイナーのタマゴがどうやって成長していくのか見る機会がありました。
 彼らには課題というものがあります。自分の知る環境では1か月くらいのスパンで大きなテーマが与えられ、それに対して自分なりのコンセプトをたて、さらにそれを体現するプロトタイプを作って発表します。発表の場ではそれはそれは尖った教授たちが的を絞らせない質問で生徒打線を苦しめます。

 デザイン学校の教授といえばそろいもそろって曲者ぞろいです。その道何十年のベテランで、〇〇賞をとっているとか、いわゆる名の知れた大投手です。

 そんな人たちが講評という最終打席で、エグイ球を投げ込んでくるわけです。初見ではあてることすら出来ないと言われるナックルボールのような質問であたふたする姿もちらほら。中にはたいして意図も無いボールも混ざっていたりして、それがかえって生徒を頭を使わせる効果があります。

 そんな環境で2年間とか4年間とかバットを振り続けてきたわけですから、結果として考えることを考える経験を多く積んでいることに繋がり、強打者になっていくというわけです。アイデアの強打者と言われる人達も結局は過去に多くの打席を経験して来ているというわけです。

社内ハッカソンの効果とは

 まとめです。アイデア出しの強打者デザイナーさんを育てたのが程よい緊張感を持った打席とするならば、社内ハッカソンの雰囲気はまさにこれに近いモノがあります。自分たちでコンセプトを立てて、それを体現する作品を作り発表するわけですから。
 また、打席に立つ回数が多ければそれだけメタ認知能力を鍛える機会を得ることに繋がるので、社内ハッカソンも積み重ねると効果的そうです。
 もちろん打席の内容も重要です。打席に立っても、何も考えずにバットを振ってもいつまでも当たりません。

 とはいえ、まずは打席に立つことから。振ってみないことには自分がどんなバッターかもわかりません。もしかしたら、初打席・初ホームランをかっ飛ばすような素質を持ち合わせているかもしれませんよ。