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【書店便り4】紙か、電子か(2)イーパブってご存じですか? イギリスの酒場のことではない・・・

このシリーズ2回目は、電子書籍のフォーマットの話。あなたのお役に立つかも。(この記事は、大学のコミュニティ誌「研友」に掲載された記事をベースにしたものである。)

 いきなりヘンテコなお題だが、この言葉、イギリスにある酒場のことではない。ディジタル文書のフォーマットのひとつで、電子書籍の標準言語のことだ。これを使えば簡単に電子本ができる。「はじめて聞いた」というNoteのみなさまの参考にまで記しておきたい。
 
 さて、数ある文書ファイルのなかでもっとも普及しているのがワード(Word)だ。説明の必要はないだろう。ほかには数式・文献等の処理に便利なテフ(Tex)がある。このフリーのソフトを使えば、出版されるのとまったく同じように完成した組版をデスクトップ上でつくってプレビューできる。理系の論文作成の標準ソフトになって久しい。
 
 さらに今世紀初頭に第三とでも云うべきものが開発された。それがイーパブ(Electronic Publication)。文字通り「電子出版」、拡張子は「.epub」だ。特徴のひとつが、画面のサイズを変えずにフォントのサイズだけを変えられるのでページという概念がないことだ。その他にも多くの機能をもつEpubだが、Webページ用に開発されたプログラム言語HTML (Hyper Text Markup Language) をベースにしている。しかし、この長ったらしく意味不明の横文字が面倒くさそうでしばらく近寄らなかった筆者は、電子書籍作成というものはプログラミングに精通した専門家やオタク族にしかできないものと諦めていた。
 
 しかし、そのようなズボラな人間を救ってくれた神様が現れた。米国で開発されたマークダウン記法を日本語環境下でも使えるように改良した「でんでんコンバーター」というサイトだ。今から7~8年前に一般公開され、ブラウザ上でテキストファイルをEPUBに変換してくれる。もちろんフリー。

 こちらがやることは、「メモ帳」などでつくったテキストに「#」「*」「>」などの「でんでんマーク」というオマジナイ記号を配したファイルをつくるだけ。これらは、見出し、強調、引用に用いるが、画像挿入などたくさんの機能を付与できる。こうして作ったテキストファイルを必要があれば画像ファイル(JPEGなど)と一緒に、ブラウザのトップにある「アップロードしてね」に入れると、自動的にEPUBファイルに変換してくれる。それをMac系の端末ではiBooks、Win系ではKindle Previewerのようなアプリで開けば読むことができる仕組みだ。

 ところで、EPUBは複雑なレイアウトの雑誌以外ならほぼすべての書籍に適用可能。紙不要ゆえ、昨今カーボンフリーなんて騒いでいる連中にも歓迎されるであろう。

 使い方としては、家族や同人・同窓といったサークル内でプライベートに使う方法がある。印刷・製本・配送などの経費がかからず、たとえば画集や句集など適用例は多いであろう。

 もうひとつが、ブックストアで公開販売する方法。自己出版であるから全ての作業を自分でやる必要があるが、そのぶんマイペースで楽しむことも可能だ。暇人向けかもしれない。アマチュアの書いた本、そんなに売れる心配はないが、最大70%もの印税が入る。取次店への返品や絶版の心配もなく、図書館の本のようにいつかだれかが手にとってくれるかもしれない・・・

 あなたもいちどイーパブの暖簾をくぐってみては。

余談 : 数百冊の本と推敲中の原稿や断片などを入れた端末Paperwhite嬢は筆者のマスコット。使っているのは最初に発売された初版本ならぬ初版端末だ。200gと軽く、電子インクやサイズを択べるフォントは眼にも楽でやさしい。外出時にはリュックに忍ばせ、夜は枕頭に置く。
いずれこのシリーズでもうすこし詳しく紹介しようかとおもっている。


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