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蜂本みさ
2020年8月27日 20:06
海の底から湧いたとしか思えなかった。 世界のどの海域にも、過去のどんな本にも記録の見つからないこの発光クラゲたちは、わたしたちが十二歳の年の晩夏に北海岸の波打ち際を覆いつくした。子どもたちは声をあげてクラゲを踏んだり投げたり、大事に持ち帰ったりし、二日後には飽きた。数が多すぎたのだ。 「オーロラ見にいかない?」と、よなちゃんが言った。 わたしたちは夜の堤防を歩いた。変質者が出たらどうしよう