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【感想文】ルルーシュがスザクに殺されることだけ知っていたコードギアスがジェットコースターだった

『コードギアス 反逆のルルーシュ』を見ました。

この感想文は完全初見ではありません!

だって「ルルーシュがスザクに殺されてコードギアスは終わる」というネタバレを知っていたから!!!

未履修だけど名作すぎてインターネットから漏電したネタバレを浴びており今さら履修登録する気になれない……そんなコンテンツのひとつやふたつは皆さんにもおありでしょう。私にとってのそれは『コードギアス』でした。

ですので公式チャンネルの毎日1話配信を「オチ知ってるんだからささいな日課感覚で見られるかぁ~!」的なテンションで受け入れ、コードギアスの世界に飛びこんだわけです。そして全部見ました。

今回は1話ずつ、あるいは2話場合によっては3話ずつに区切って全50話の感想を語っていきたいと思います。結構な長丁場ですのでみなさんは自分の好きな回だけ覗いたり数回に分けて読んだり、好みでお楽しみください。

よろしくお願いします。

※トップ画像はコードギアスX公式アカウントから引用しました


無印(1期)

第1話「魔神が生まれた日」

『コードギアス』X公式アカウントより

ルルーシュお前お人好しだなぁ!

主人公、ルルーシュ・ランペルージへの第一印象でした。ルルーシュが悪い奴だってのはうっすら知っていたんですが、煽り運転仕掛けて勝手に事故ったトラックを助けに行く奴が悪者なんてやれるわけないでしょ。

ルルーシュがトラック事故の野次馬連中にいらついていたのも印象的でした。この主人公は自身をとりまく環境に不満を持っていて、自分は同類になりたくない気持ちが根っこにありそう。本当に悪者だとしても世界秩序と大事なものを天秤にかけてためらいなく後者をとる。そういう悪。

そしてギアスを手に入れた途端に人をたくさんぶっころすキレた若者っぷり。「見ていて絶対飽きないだろうな……」ルルーシュへの第二印象です。

第2話『覚醒の白い騎士』

自分を 世界さえも 変えてしまえそうな瞬間は いつもすぐそばに…

COLORS『FLOW』より

お前コードギアスだったんか!?

同級生のやっくん(仮名)がドライブ中ガンガンかけてたやけに耳にこびりつくあの曲の生産者を知った第2話です。

コードギアスX公式アカウントより

率直な感想は「コードギアスって本当にロボットアニメだったんだ」でした。

インターネットを長くやっていると「シスコンでセンスが中二病な少年が誰にでも命令できるギアスという力を使って国家転覆に挑むド悪党になる」ぐらいの情報はぼんやりと把握できます。

なので見るまでは「妹大好きなイケメンが独裁国家をぶっ壊すことにした~俺は誰でも奴隷にできる超能力を持っていて皇帝も下僕だけど偉い人たち大丈夫?~」みたいな内政モノをイメージしていたんです。

そこに飛びこんできたランスロットのかっこよさたるや! ガレキまみれの新宿で真っ白なロボが大暴れするミスマッチもいいですし、戦場で迷わず人助けを選ぶパイロットのスザクは正義の味方そのもの。

「正統派すぎてスザクが主人公じゃないか?」なんて冗談交じりに思ったものです。

なお主人公(本物)は負け惜しみを言いながら脱出していた。

前半の安楽椅子指揮官はかっこよかったのにスザクが介入した途端にかっこ悪くなるルルーシュ、上げて落とす天才かな?

第3、4、5話「別々の道を歩みだすルルーシュとスザク」

この3話は"ダークヒーロ―"ルルーシュと"ヒーロー"スザクがそれぞれの方向性を確立するエピソードだと感じたのでまとめて語ります。

第3、4話でルルーシュは、クロヴィス皇子殺害の容疑をかけられたスザクを救うために仮面の男ゼロとなってレジスタンスとともに救出作戦を実行します。ジェレミア卿の社会的立場という尊い犠牲を払って作戦は成功しますが、その後のスザク勧誘には失敗しました。救おうとした本人に作戦の根底ひっくり返されるルルーシュかわいそう。

理想を叶えるためなら手段を選ぶべきではないと考えるルルーシュ。
理想があるからこそ過程(ルール)を守るべきと唱えるスザク。

ブリタニアを変えようとする願いは同じ幼馴染なのに、根っこの部分で絶対に交われない信念を2人は育んでいました。

とくに私はここまでで「ブリタニア滅びてもいいだろ」ぐらいに考えていたので、ルールを破るのでなく内側から変えようとするスザクのまっすぐさはハンマーで頭をぶん殴られた気持ちでした。

そして第5話でルルーシュはレジスタンスを率いるゼロとして、スザクは皇女殿下ユフィの覚えめでたい名誉ブリタニア人として、それぞれの道を歩みだします。われ主役級2人がまったく違う世界で少しずつ成長していくW主人公システム大好き! 良きところで一瞬だけ道が交わってまた別れたりするのも最高に昂る!

最期はルルーシュがスザクに殺されると知っていても、この2人がどう力をつけていくのかが楽しみになった3エピソードです。でもそれはそれとしてスザクに「仲間になれ」ギアスかけとけばよかったんじゃない? とも思ったり。

だってランスロットを指揮するルルーシュとか絶対強いじゃん! 友達にギアスかけるのはちょっととか思ったのかよこの甘ちゃんめが!そういうとこが好き。

第6話『奪われた仮面』

コードギアス 逆に貴様は 何を持ちえないのだ。

復讐劇としてもロボバトルとしても最後に殺しあうことが確定しているW主人公ストーリーとしても面白いのに、主人公が猫に弄ばれて学園中を走り回るだけのギャグ回であんなにゲラゲラ笑わせてくれるなんて。なんでもできるなこのアニメ。

あと第6話で確信しましたが、ルルーシュは計算外に弄ばれてるときが一番いいダシ出ますね。

今回の仮面猫もそうですし、第5話でCCを隠すためにカレンの顔掴んだときとか、第4話でスザクに勧誘断られて完全に素を出してるとことか。9割はちゃんと計画を遂行できる実力者だからこそ1割のイレギュラーで慌てふためく姿が映えるわけです。

最高の気分だね、自分を計算高く非情なクールキャラだと思い込んでいるリアクション人情家芸人を眺めるのは……カッハッハ。

第7、8、9話「黒の騎士団の始まり」

唐突にコードギアス本編で一番好きなランスロット発表します。ライフライントンネルでリニアカノン砲"雷光"と生きるか死ぬかの密室閉鎖空間決戦に挑む第8話ランスロット。

リーチで圧倒的不利を背負った近接兵器がスピードとテクニックとハートで遠距離兵器に打ち勝つロボバトルなんて心が小学生になりますからね。ロボットアニメsideの主人公はスザク。間違いない。

あとは第7話と第9話なんですけど、それぞれC.C.とカレンをヒロインとして深掘りしたのが印象深いです。

C.C.は目的が不明でも身を呈してルルーシュを助けるなら、彼を想う気持ち自体は本物だろうと。正体を明かせなくても視聴者が感情移入できるような見せ場があるのは素直に感心しました。

コードギアスX公式アカウントより

一方でカレンは戦う理由の補強です。ルルーシュがナナリーのためにブリタニアを壊すように、カレンはお母さんとまた幸せに暮らす未来をめざすのですね。

ところでお母さんと喧嘩も和解も永遠にできなくなったルルーシュはどんな気持ちで紅月親子を見ていたんでしょうね。こういう時に仮面は便利だ。

第10、11話「成田山、イレギュラーさえなければ」

「そのまま(コーネリアを)捕虜にすれば勝ちだ」
「イレギュラーさえなければ……黒の騎士団の」
(ドアップで映りこむランスロット)

『コードギアス 反逆のルルーシュ』第10話より

コードギアスの次回予告は最高のエンタメだ!

第10話でコーネリア捕縛を目的に成田山での戦闘に臨む黒の騎士団。ゼロがコツコツ地道に計算して導き出したであろう土砂崩れ作戦は見事に成功、カレンが駆る紅蓮の活躍もあって戦局は黒の騎士団有利で進みます。

めっちゃがんばったルルーシュのノリノリ次回予告ナレーションが流れる中、スッとランスロットが映りこむだけでもう面白い。絶対ちゃぶ台ひっくり返されるじゃんこんなん。本当にひっくり返された。

わずか10話で「ルルーシュが悪事を計画してスザクが暴力でぶち壊す」お約束が自然にできあがっているのもすごい。スザクの戦闘力とルルーシュのリアクション芸人力を効率よく脳内に刷り込まれている。

OPEDを飛ばせないアニメは心当たりがありますが、次回予告を飛ばせないアニメはコードギアスがたぶん初めてです。ルルーシュには次回予告でドンドン調子に乗ってもらって裏の映像でめちゃくちゃに追い詰められていただきたい。

第12話『キョウトからの使者』

コードギアスはラストのヒキが強烈なアニメですが、このエピソードは際立っていました。土砂降りの中でシャーリーを迎えに行くルルーシュ、シャーリーの口から語られる父親の死、その原因はゼロが引き起こした成田山での土砂崩れ。そしてルルーシュは次回予告で「ゼロをやめるのは簡単だ」と言いだすのであった……ゼロをやめる!?

自分の策で同級生のお父さんが偶然死んだだけでそんなにメンタルおかしくする!? 向いてねぇよ! 町のピザ屋さんでもやってろよ!

シャーリーが恋人とか両片想いの相手ならともかく、そんな素振りは一切見せていませんよねルルーシュ。お人好しだとは知っていましたけど、同級生の哀しみと人生懸けた大博打とを天秤にかけちゃうほど脆いとは思わなかったです。

でもその脆さは優しさの裏返しで、その優しさはナナリーを幸せにしたいと願いつづけたからこそ育まれたんじゃないかな~あ~切ない。こんなにも身内に優しい少年が戦わなければいけない世界の残酷さが際立つ回でした。ブリタニアへの殺意はつねに燃やしていこう。

第13、14話「こんな優しい男が殺されるんか?」

等身大 音をたてて僕の顔 造って行くキレイに 片方だけ

ジン『解読不能』より

お前コードギアスかよ!?

モザイクカケラ ひとつひとつ繋ぎ合わせて描いてゆくあなたがくれた 出逢いと別れも…

SunSet Swish『モザイクカケラ』より

お前もコードギアスかよ!!??

「あなたもご家族を亡くされたんですか?」
「友達を」
「そう、たぶん、大事な」

『コードギアス 反逆のルルーシュ』第14話より

ルルーシュお前そこまで優しいのかよ!!!!!!!

第ふとしたきっかけからゼロ=ルルーシュを知ってしまい、さらに秘密を守るためヴィレッタに発砲、それらすべてを謎のギアス使い・マオに悟られ、気づけば大好きなルルーシュに拳銃を向けるしかなくなったシャーリー。このごく普通の女の子が何をしたんだよ。一切非がないのにこんなに世界からいじめられるヒロインいる? 結構いそうだな。

コードギアスX公式アカウントより

精神の限界を超えてしまったシャーリーに対して、ルルーシュはギアスによって彼女の記憶を消します。それはゼロだけでなく、ルルーシュ・ランペルージとの思い出すべてを奪うものでした。

「自分との接点がなくなればゼロの正体に気づくこともなくシャーリーは日常に還れる」たぶんルルーシュはそう考えたんじゃないでしょうか。

ですが、その選択はルルーシュ自身に傷を残します。第14話ラストのすべてを忘れたシャーリーとの対話で彼がつぶやいた「そう、たぶん、大事な」の寂しさが今も忘れられません。

ルルーシュも本当はシャーリーが好きだったのかもしれない。だけど、それに気づいたのはギアスをかけた後です。胸に渦巻く気持ちが好意なのか、罪悪感なのか、同情なのか、もう誰にもわかりません。ルルーシュは「自分は本当にシャーリーを好きだったのか?」の回答を得る機会を永遠に失ったのです。

そんな胸中を知る由もないシャーリーに「でも、朝は来るじゃないですか」と励まされ、ぼんやりとほほ笑む姿のなんと辛そうなことか。こんな優しくて哀しくて傷だらけの少年が大好きな幼馴染に殺されるんですか? 

第15、16話「舞台装置マオ」

年端もいかない少年を孤立化させ自分に依存させまくってからフったC.C.とかいう魔女。

第15、16話はC.C.に執着するギアス使いマオとの戦いですね。シャーリー壊した責任を3割ぐらい負っている野郎なので「思いっきりぼこしてやれルルーシュ!」と握り拳を振りかざしながら見ました。人格歪んだの全部C.C.のせいだったのでそっと下ろしました。育児放棄かなにか?

当のC.C.も自分のせいでマオが歪んだと理解しており、第15話では自分の手で始末しようと彼に銃口を向けますが、情が邪魔をして引き金をひけません。身内びいきで根はやさしいのに悪ぶろうとするあたり、ルルーシュにそっくりです。ふたりとも今すぐピザ屋さんになった方がいい。

第16話では念願だったルルーシュとスザクのコンビを見られたのがうれしかったですね。この2人が揃えば向かうところ敵なしです! ガンカメラだって壁走りで突破できるし爆弾解除も計算できるし心を読むギアスも突破できる! 加減しろ。

とくに、ルルーシュがマオを騙すためにギアスを自分にかけたのがすごいと思うんですよ。ギアスに支配されたルルーシュは記憶を失うわけですから、もしスザクが失敗したらナナリー救出の可能性がなくなるわけです。普段のルルーシュならそんなリスクは拒否するでしょう。

でもスザクがパートナーならできるんです。だってスザクは必ずナナリーを救ってくれるから。敵味方に別れているのがこんなに惜しいコンビもなかなかありません。いいものを見せてもらいました。

まぁ最後に全部ブチ壊されたわけだが……。

C.C.の掘り下げとルルーシュスザクコンビのお披露目とスザクの罪&自罰願望の開示、そして「スザクはいざとなれば『やれる』側の人間であり、ルルーシュを殺す結末も十分ありうる」という私へのダイレクトアタックすべてこなして速やかに退場したマオ、100点満点の舞台装置だったぜ。あいつの人生なんだったんだろ。

第17話『騎士』

O(俺が)S(先に)S(スザクをナナリーの騎士にしようと思っていたのに)。

チョウフ基地での攻防でランスロットのパイロットはスザクだと知ったルルーシュ。第13話で「お前さえいなければ!」と言い合った相手が何よりも信頼できる親友だと知った男からしか摂取できない栄養素が……第17話ラストでナイトメアのコクピットで独り狂ったように笑い続ける男からも同様の栄養素が検出されました。

ルルーシュは元々「スザクをナナリーの騎士にしよう」と考えていました。
ゼロとして活動していれば、やがて自分はナナリーのそばにいられなくなる。か弱い妹を安心して預けられる相手としてスザクに期待していたわけです。ブリタニア軍人とはいえ技術部の裏方と聞いていたのも大きかったのでしょう。

かけがえのない幼馴染だけでなく世界で一番大事な妹の未来にも影を落とすダブルインパクト。前話であんなに楽しく最強コンビやっていたのになんだこの落差は。

Youtubeコードギアスチャンネル『特区「日本」の知られざる真実/ルルーシュ×ユーフェミア掛け合いシーン集02「コードギアス 反逆のルルーシュ』1分20秒より

そんなスザクを異例の騎士に取り立てたユフィですが、スザクとすごく似ていますよね。政治的に正しい絵を選びきれなかったり、第8話で皇女殿下である自分が市民の身代わりになっちゃったり、大局より目の前の気持ちを優先しちゃうところがそっくり。お似合いだと思います。

第18、19、20話「本当は怖い絶対遵守のギアス」

式根島・神根島編ですね。意味深な遺跡など世界観の根底に関わるような要素も出てきましたが、私が気になったのは生きろギアス。なんというか「絶対遵守のギアスって怖い能力なんだな」って。

ルルーシュがスザクに課した「生きろ」の根底には、自罰意識から解き放たれてほしい彼自身の願いが隠されているのでしょう。その尊い願いをギアスは"命令"に貶めてしまいます。

この先スザクは自らの意思で「生きよう」と願うことはなくなり、すべて「ギアスのせい」なんて前提が入ってしまう。そんな生がルルーシュの願いといえるのでしょうか。

その気になればあらゆる人間に命令できるのであれば、その人は誰とも対等になれないのです。上下関係が発生しますから。もしルルーシュが世界中の人間にギアスをかけてしまったら、その時こそC.C.が言っていた「王の力はお前を孤独にする」が成就されてしまうのでしょうか。

じゃあギアスが効かないC.C.は唯一無二の救いになっちゃうなぁ、などなど、ルルーシュが背負う業について考えさせられるエピソードでした。第20話はルルーシュとユフィが兄妹として接したり、スザクがユフィカウンセリングで持ち直したり、疑似的に最強コンビが復活したり、明るめな神根島アフターで心が助かった。

ところで護国のナイトメアにランスロット、テロリストの手に堕ちたナイトメアにガウェインのネーミングはひどくない?

第21話『学園祭宣言!』

コメディ回のはずがとんでもない爆弾を放りこんでくる油断ならぬ回。

久々の学園でいろいろなギャグが盛り込まれていたはずなんですが行政特区日本で全部忘れました。今大好きなスザクとかつて大好きだったルルーシュ2人の笑顔のために立ち上がったユフィは本当に優しい娘ですが、アイデアが突拍子なさすぎて「大丈夫かこれ!?」の方が強かったです。

優しいだけで世界が回らないのはユフィ自身もわかっているはずですので、その上で始動させた行政特区日本がどうなるか、そもそも黒の騎士団の邪魔になっているのは大丈夫なのか、次回に待っているであろう激動が楽しみなるお話でした。

コードギアスX公式アカウントより

血染めのユフィってどういうこと?

第22話『血染めのユフィ』

Youtubeコードギアスチャンネル『特区「日本」の知られざる真実/ルルーシュ×ユーフェミア掛け合いシーン集02「コードギアス 反逆のルルーシュ』7分53秒より

こんなつもりでコードギアス見始めてない。

どんなに理由を紐解いても「間が悪かった」としか言えない偶然のほつれでなにもかもぶち壊しになる悲劇が見たくてコードギアス見始めたつもりじゃない!!!!!!

せめて「ゼロがユフィを誘拐しに来たら密室で血塗れのユフィが倒れていて現場をスザクに押さえられる」ぐらいで許してくれよ!!!!!

ルルーシュのジョークセンスがカス!!!!!!!!!!!!!!

失礼しました。

もう言いたいこと全部言っちゃったんだけど「ルルーシュのジョークセンスがカス」あたりをもうちょっとだけ。

行政特区日本を止めるためにユフィと話し合いの場を設けたルルーシュですが、逆に皇位継承権を放棄するユフィの覚悟に諭され、行政特区日本を認めます。そのルルーシュの顔と声のなんと穏やかなことか。

あの瞬間、ルルーシュは間違いなく自分の闘いは終わったと確信していたんですよ。だからギアスの秘密もぺらぺら喋っちゃうんですね。だってもう二度と使わないだろう力だから。

「たとえば、日本人を殺せって言ったら、君の意思とは関係なく…」
キュピーン

『コードギアス 反逆のルルーシュ』第22話より

こんなつまらない冗談をポロッと言っちゃうぐらい解放感を覚えていたんですよ、この時のルルーシュって。17歳の少年が重荷を下ろして一息ついてしまったぐらいの話で、それがたまたまギアスの暴走と重なり、たまたまで済ませてはいけない事件を招いてしまった。

嬉々として虐殺に走るユフィの背中を懸命に負うルルーシュは、きっとこう思っていたでしょう。

こんなはずじゃない

SunSet Swish『モザイクカケラ』より

モザイクカケラで追い打ちかけるのやめようや。

第23、24、25話「私が聞いたネタバレって1期の話か?」

コードギアスX公式アカウントより

無印クライマックスのブラックリベリオンですね。ルルーシュは修羅のテロリストに、スザクはユフィの仇を狙う復讐鬼に。ユフィが望んでいなかった道を選んだ2人は、壮絶な戦場へと身を投じます。

そして甘さを捨てたルルーシュがとても強い! 奪還すべき東京租界を破壊するわ、ダールトンに尊厳破壊ギアスかけてコーネリアを捕らえるわで、情にこだわらなくなったこの男はこんなに強いのか。強くなれる理由を知った。たぶん初恋だった人を殺すこと。知りとうなかった。

死んでから気づいたんですけど、ユフィってあの世界の優しさの象徴だったのかもしれません。ルルーシュは「ユフィにあんなギアスをかけた奴は人ではなく修羅だ→ならば俺は修羅でなくてはならない」と自身を定義しようと必死で、スザクはゼロを殺したい私情を優先している自分に気づいたうえで戦っています。

彼女の死をきっかけに2人のタガが外れ、周囲を巻き込む殺し合いに発展してしまった印象です。あのコーネリアもショックのあまり拙策に打って出てゼロに囚われていますし、ニーナに至ってはフレイヤを持ち出しました。

ユフィの影響は本当に大きかったのです。お飾りの副総督だなんて悩む時期もあったけど、あなたの存在はたくさんの人の支えになっていたんだねユフィ。

そして無印最終回となる第25話。

大激戦を経てルルーシュとスザクは神根島で相対します。自分の正体を明かすルルーシュに、気づいていたことを明かすスザク。ブラックリベリオン直前の電話どういう感情でかけたんだお前。どんな決意を込めて「また後で」なんて言ったんだ。

そして2人は憎しみのまま互いを傷つけあい、どちらかの銃声が響いて『コードギアス 反逆のルルーシュ』はひとまずの幕を閉じるのです。ここで!? あのヒキで体力モンスタースザクからルルーシュが助かる見込みがないんだけど「スザクがルルーシュを殺して終わり」は1期の話だったのか!?

怒涛のラスト、流れるモザイクカケラ、リアタイではここから7か月待ったところを明日には続きを見られる優越感、いろいろな感情が去来する中、私はこう思いました。

「ブラックリベリオンのMVP、間違いなくオレンジだな……」と。

R2(2期)

第1話

誰!? 誰なの!? 怖いよぉ!

やけに爽やかなルルーシュがヴィレッタ体育教師から逃げてて華奢でやさしい香水の匂いさせてそうな少年が「兄さん」呼びしてきて他人ごっこしてたシャーリーが「ルル」言ってて私はこんなコードギアス知らねぇよ!!

「大人の世界と学生、どちらが食われるか」

『コードギアス R2』第1話より

あ、よかったルルーシュはルルーシュだ。

ゼロの記憶はすっからからんに忘れちゃったみたいですけど、弱者を虐げる理不尽を前にしたらニヒルに打ち砕かずにいられないカッコつけ人情派は間違いなくルルーシュです。このセリフで混乱しきった頭がスッと落ち着いた記憶があります。

そしてすべてを思い出したルルーシュが無印1話と同じ「お前たちは死ね」ギアスを使い次回予告でテンションあげあげ反省会からの『TURN02 日本独立計画』ドーン! これだよこの味! このアニメはコードギアスです!

第2、3、4話「弟(偽)懐柔編」

コードギアスX公式アカウントより

第1話で「結局あいつ誰なの!?」のまま終わった弟(偽)ことロロを味方に引き込むまでのエピソードですね。生まれてこの方汚れ仕事だけやってきた精神赤ちゃん少年兵を誑かす悪いルルーシュのなんとイキイキしていることか。

「さんざん使い倒して、ボロ雑巾のように捨ててやる!」

『コードギアス 反逆のルルーシュ R2』第4話より

そして絶対にできないことをドヤ顔で言いだす。たとえ演技でも身内認定した奴を駒扱いできない奴だって信頼がありますからね。「俺はなぜロロの死にここまで動揺している…!?」展開への前フリ以外何者でもないでしょ。

でもロロが兄落ちした根本的な原因はルルーシュがナナリーに向けている家族愛を一心に浴びていたから、ってのがいいですよね。なにもかもが嘘で塗り固められているのに、真実の愛がひとつまみだけ混入しているルルロロ兄弟がどうなるか、まったく目が離せません。

ところで次回予告で「あんなのが弟とかマジありえん!!!!!」言いすぎだろルルーシュ。

第5、6話『二度目のOSS』

学園祭コメディギャグ回だと思った結果がこれだよ。

親友だからこそ知るルルーシュ最大の弱点でゼロの正体を掴もうとするスザク。無印最終回で2人の友情は完全に破綻していたと一瞬でわかるシーンですね。こんなことならルルーシュとスザクに再会なんてしてほしとうなかった!

この所業にルルーシュは大いに怒りますが、第7話ではそんなスザクにあと一歩で取り返せていたナナリーをまた奪われてしまいます。まさかのO(俺が)S(先に)S(スザクをナナリーの騎士にしようとしたらユフィに奪られた挙句今さらナナリーの騎士になりやがって)二度目。

この辺のスザクを見ていてふと考えましたが、スザクってイメージよりずっと悪童ですよね。父親を殺して日本人を悲劇に導いた罪悪感から正義漢になりましたけど、本来はこういうダーティーな手段を実行できる、本質はむしろルルーシュに近い人間じゃないでしょうか。

むしろ貴族生まれのルルーシュにイタズラを教えた悪ガキがスザクだとたぎる。子どもの頃にルルーシュが高そうな壺壊してあたふたしてたら真顔のスザクがハンマーで粉々にしてゴミ袋に放り込む隠ぺい工作とかしてそう。

第7話『棄てられた仮面』

主人公が薬物ですべてを忘れようとする土曜夕方アニメ!?!?

私はルルーシュを見くびっていたかもしれません。いやナナリーが大事なのはわかっていたんだけど、自分の行いが妹に必要とされていないと気づいたら人生に絶望するレベルとは思わないでしょ。信仰だよそれは。

ですが、リフレインを使うほど悲観しきったからこそ花火のシーンで守りたい対象が「ナナリー」から「ナナリーを含むやさしい世界」に広がってゼロが復活するカタルシスが最高に気持ちよかったです。八つ当たりギアスで腕立てさせられたあの人もそう思うだろ?

あと主人公がへこたれた時にヒロインが何かする、ってのが結構好きなんですけど、今回はヒロインがそれぞれのキャラらしい動きをしていました。

  • 行政特区日本の再建を主張して自分の道を進みだすナナリー

  • 「生きてさえいればそれでいい」と寛容に受け入れるC.C.

  • 「始めたなら最後までやり切れ!」と激を飛ばすカレン

  • 「僕はナナリーのようにどこにも行かない」と寄り添うロロ

魅力的なヒロインたちにそれぞれ異なる持ち味がある多彩さもコードギアスの良さですね。ひとり男なんだけどまぁいいだろ。

第8話『百万のキセキ』

いったい何を見せられたんだ……。

コードギアス全50話でもっとも困惑した回です。正直あまり覚えていません。スモーク晴れたら画面いっぱいにゼロがひしめきあっていた絵面に「お前マジシャンかよ!!!!!」と叫んだ記憶しかない。

第9、10、11話「百万のゼロの傷は深い」

正直あまり覚えていないパーツ2in中華連邦。ルルーシュが調子乗ってたらお得意の地形利用戦法やられた展開とか見どころはあったはずですが「こいつら百万のゼロを経由してここにいるんだよな……」ばかりが頭をよぎってイマイチ集中できませんでした。

この期間になんやかんや悩みましたが、第11話を見終わったあたりで「もうやめましょう……百万のゼロについて考えるのは……!」方向に切り替えられました。この後の展開考えるとガチでここがギリギリのタイミングだったと思います。

第12話『ラブアタック!』

これほどの逸材(咲世子さん)が40話近く影を潜めていたというのか……!?

カレンをごまかすたにギアスかけられたメイドさんがこんなオモシロメイドだなんてどうして誰も教えてくれなかったの? ルルーシュを女の子大好きナンパ野郎と認識していたのがもう実像とかけ離れすぎてるんですけど、よく考えたら妹と同居してる実家に緑髪ミステリアス美女を連れ込んでる時点で弁明の余地ないですね。

その後もルルーシュの影武者としてやりたい放題の咲世子さん。ルルーシュが華麗なアクロバットジャンプ決める絵面を公式で見られるとは想像もしなかったです。二次創作で「※このルルーシュは咲世子さんです」と書いておけば何やっても許される気がします。

「今回はすべて咲世子さんが持っていくか……!」と覚悟しましたが、最後に恋する乙女のパワーを発揮したシャーリーはさすがですね。記憶を失って一度はヒロインから引退しましたが、皇帝のギアスで偽りの記憶を植えつけられた緊急復活ヒロインは格が違います。公式はシャーリーの海馬をなんだと思っているのでしょうか。

血生臭い世界に身を置くルルーシュにとってシャーリーは帰るべき日常として居続けてくれる貴重な存在です。ただ疑問として、皇帝のギアスが解けたらシャーリーがどうなるのかは気になります。すべてが終わった最終回、シャーリーはルルーシュをまた忘れてしまうのでしょうか。

シャーリー「思い出した……私のお父さんを殺したゼロは……」「
シャーリー「ルルーシュ」

『コードギアス 反逆のルルーシュ R2』第12話より

シャーリーの海馬をなんだと思ってるんだよ。

次回予告
「シャーリーとのデートコースも構築せねばならん……!」

『コードギアス 反逆のルルーシュ R2』第12話より

それどころじゃねぇよ!!!!

第13話『過去からの刺客』

私はこのエピソードを見る前からひどく動揺していました。

「主人公の手で記憶消されてラスボスに記憶操作されて再生怪人にすべての記憶操作を解除された海馬フリー素材系ヒロイン」を見たのは生まれて初めてだったからです。

ついにゼロの正体を思いだしたシャーリー、彼女はどうするのか? ギアスキャンセラーによって1人1回の制限も解除されているのなら、ルルーシュはまた大事な人を手にかけてしまうのでしょうか?

コードギアスX公式アカウントより

コードギアスは見る前からルルーシュ、スザク、C.C.、カレンの存在は知っていました。一方でシャーリーについてはまったく存じ上げなかったのでサブヒロインのひとり程度と考えていたのですが、ルルーシュの大事な人として強すぎて逆に語られないタイプのヒロインだったんですね。

これだからぼんやり知っているコンテンツを見るのは楽しいです。楽しくないです。いや楽しい。やっぱつれぇわ。

ところで後日「『死ぬな』ギアスはシャーリーの心臓が活性化させてむしろ出血を早めた」という考察を聞いたんですけど、鬼?

第14、15話「エヴァで予習したところだ!」

シャーリーの死によってギアス絶対滅ぼすマンと化したルルーシュ。まさかの忠君キャラとして株ストップ高炸裂ジェレミア卿、シャーリーを殺そうとギアスかけようとした瞬間に乱入者が彼女を殺したため実は無罪と信じていたのに開幕罪悪感ゼロ自白しやがったロロなど黒の騎士団メンバーを引き連れ、ギアス嚮団の壊滅に動きます。ロロにはこんな伝統の障害排除系ヤンデレヒロインとして羽化してほしいわけじゃなかった。

Cの世界を舞台とした本筋は今でも理解しきったとは言えず「よくは知らんがC.C.は親世代と親交があったんだな!」ぐらいのノリで観ていました。

それでもV.V.が駆るジークフリートと黒の騎士団総力戦が迫力あって楽しかったですね。途中参加ユニットのジェレミアがゴリゴリ働いて頼もしく、ギアスに妹を殺されたコーネリアが決め手になった展開も熱かった。

何の話をしてるかピンとこなくても他の要素で十分に楽しめる作劇は、劇場版の『エヴァンゲリオン』四部作を思いだしました。

世界観を深く考察できなくてもコンテンツを面白く感じていいんだよ、と向こうから語りかけてくれるような感覚は何度味わってもいいものです。

第16、17話「スザクはどこへ向かっているのか」

一度自分を売り飛ばした男にまた裏切られただけなのに泣いちゃうルルーシュがかわいそうかわいい回ですが、スザクのメンタルもおかしくなっているのが察せられるエピソードでもあります。

第16話でルルーシュに「ナナリーを護ってくれ」と頼まれたスザクは、交換条件として二人きりで会いたいと告げます。前話ではカレンに自白させるべくリフレインを使おうとする非情さを見せたにも関わらず、絶好の機会で「投降しろ」とは言わないわけです。

コードギアスX公式アカウントより

ユフィも親友としてのルルーシュも失ってからのスザクはずっと「自分が何をしたいか」「何をすべきか」が整理できていない気がするんですよね。だから突拍子のない行動や迷いが目立つのではないか。

そんな精神状態でもルルーシュが本音を隠していることを見抜くのが地味に好きです。関係が崩壊しても親友であった事実は変わらないし、許しはしなくても「せめて嘘を貫け」と発破をかけるのは良い落としどころと感じます。

そういうスザクの心の揺れ動き全部把握してフレイヤ搭載ランスロットを使わせようとするシュナイゼルの抜け目なさときたら。

自分の一存で戦略兵器を使えてしまう立場に追い込まれたスザク、びっくりするほど嫌な予感しかしません。

第18話『第二次東京決戦』

嫌な予感って当たりますね。

式根島での『生きろ』ギアスの根底には「スザクには生きていてほしい」というルルーシュの願いがありました。しかし、願いを命令に貶めてしまうギアスは「生きるためにフレイヤを使う」最悪の手段をスザクに強制します。

死にたがっている友達に生きていてほしい……当たり前な願いはギアスによって歪められ、ルルーシュはナナリーを、スザクは日本で生きる4000万人を失ったのです。

第7話でルルーシュが誓った「生徒会みんなでまた花火をしよう」も今は虚しく響きます。むしろあそこで再起したせいでシャーリーもナナリーも失い、スザクと致命的な決別をしてしまったのならば、そんな目標を本当に掲げるべきだったのか? そんな気持ちにさせられます。

スザクに至っては背負った罪が重いどころではありません。ここまでくると私にとっての前提「ルルーシュがスザクに殺されてコードギアスは終わる」が不安になってきます。

本当にスザクがルルーシュを手にかけて、なお納得いく結末になるのでしょうか? 「4000万人を手にかけた八つ当たりか?」と思うかもしれない。ネタバレを知っているからこその変なハラハラを抱かせる第18話でした。

第19話『裏切り』

え!? シャーリーを身勝手な理由でぶっ殺したロロがあそこから入れる保険あったんですか!?

ナナリーが消え、黒の騎士団に裏切られ、すべてを失ったルルーシュを救ったのは真っ先に捨てようとしていたロロでした。この回のポイントは「ロロもルルーシュに嫌われていると本当は理解していた」ところだと思います。

振り返ってみれば、このふたりは何もかもが嘘で塗り固められた偽りの兄弟です。ロロはナナリーの代役として兄と接し、ルルーシュも偽物の弟を使い潰すために優しくしました。

では関係が嘘ならば、そこから生まれた感情はすべて価値のない偽物なのか? ロロの行動はそんな問いに明確にNOを突きつけるもので、ブリタニアの道具から抜け出すための“反逆”だったのだと思います。

ルルーシュに嫌われていようと、むしろ嫌われていると彼自身が受け入れていたからこそ、ロロの最期には心を揺さぶられました。ボロ雑巾にされるはずだった少年が自らボロ雑巾となった姿は、とても美しく見えたのです。

第20話『皇帝失格』

コードギアスX公式アカウントより

もう何もない、文字通りのゼロになったからこそ皇帝シャルルを倒すために戦うルルーシュがかっこよすぎる回ですね。

本当に名画なんすよ……。

これは第17位皇位継承者ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアの風格。本人は配下を駒として使役する戦略家が天性だと思っているかもしれませんが、私はこうやって体一つでエゴを貫こうと抗う方がルルーシュらしいと感じます。

一方でスザクは“獣”と侮蔑されるまで堕ちたなんとも痛ましい。日本救済の手段でしかないはずのナイトオブワンに固執しだし、ロイドさんやセシルさんにすら嫌悪されだす始末。絶望を経て王に覚醒したかのような威容を示すルルーシュとの対比がいい意味でひどいです。

彼はナイトオブワンになれたとして「自分は東京にフレイヤを落として4000万人を虐殺したが日本を保護区とした! もう大丈夫だ日本人!」とでも宣言する気なのでしょうか。正気か? 正気じゃいられないですよね18の少年なんですから。18!? 18歳が戦略兵器とかいう人類の業を背負わされたの!?

第21話『ラグナレクの接続』

直前エピソードで獣と蔑まれた男のドヤ顔か? あれが……。

前半でラスボスだったはずのシャルルを打倒し「これから何やるんだ?」と思わせてからのルルーシュ皇帝即位!→スザク登場!→彼がナイトオブゼロだ! の流れで興奮しない人いる? ところで斧って蹴っても壊れないんですよスザクくん。鉄だから。

よりにもよってスザクが“ゼロ”の称号を授かるのがこれまでの文脈をすべて集約しているのがすばらしいですね。ルルーシュのネーミングセンスもヤバもとい光っています。

「事実はひとつだけだ! お前たち親は俺たちを捨てたんだよ!」

『コードギアス 反逆のルルーシュ R2』第21話より

どうしてもラストの皇帝即位が強すぎてCの世界パートが霞みがちですが、ルルーシュが両親に突きつけたこのセリフはぐっときました。

ルルーシュはナナリーの未来を創ろうと戦いを始め、やがて守りたい人たちみんなの明日を望むようになりました。そんなルルーシュが他人ではなく自分自身の怒りをぶつけたのが「お前たち親は俺たちを捨てたんだよ!」です。

シャルルとマリアンヌはラグナレクの接続さえできれば全部チャラになると考え、愛する兄妹を遠ざけようと日本送りにしたわけですが、ルルーシュにとっては知ったことではありません。

ただ捨てられたのが悔しくて哀しくてたまらなかった。常に他人を動機としていたルルーシュの心からの叫びを聞けたような気がします。

第22、23、24話「それにしてもこの最強コンビ、ノリノリである」

ルルーシュ「だからお前は、生きろ!」
スザク「イエス! ユアマジェスティ!」

『コードギアス 反逆のルルーシュ R2』第22話より

楽しそうだね君たち。

「ルルーシュとスザクが組めばできないことなんてない」無印第16話での対マオ戦でハッキリ示されていたことですが、最終話直前の3エピソードはそれをより強烈に見せてくれました。

「ルルーシュのギアスで側近を奴隷化」&「反乱分子をスザクの武力で制圧」がもうチート。スザク使える戦略SLGめちゃくちゃ楽しそうですね。たぶん無双ゲーム。

第23話でもナナリーがシュナイゼル側につくメンタルアタックを仕掛けられてルルーシュが動揺するも、スザクの鞭とC.C.の飴であっさり回復しました。攻めも守りも完璧な様はまさに最強コンビ。つくづく無印第4話でスザクを仲間にできていればな~!

そんなふたりの最強っぷりを見れば見るほど疑問になったのが「ルルーシュがスザクに殺されて終わる」ネタバレの真相です。

スザクが急にルルーシュに従っている理由がわからないし、ルルーシュも旧来のブリタニアかそれ以上の勢いで独裁しまくってる真意がまったく読み取れません。

ふたりが世界征服ゲームに乗り出している意図が見えないのに、その後の殺す殺さないとなるともうお手上げです。ゼロレクイエムの名付け親がルルーシュなの以外全然わからない。

この時点で思いつくのは「スザクが裏切る」か「ルルーシュが殺されることを受け入れる」の二択ぐらいで、どちらも予想としてしっくりきません。このころには「あのネタバレは何かの間違いじゃねぇかな……?」まで考えていました。

最終回一歩手前まで来て、最後のネタバレを踏んでいて、なお結末がまったく予想できない。なんなんだこのアニメは……これが一時代を築いた作品の底力なのでしょうか。

結末を知っている(はず)からこその疑念が胸を支配したまま、私は最終話を見始めました。

第25話『Re;』(前)

コードギアス、お前、終わるのか……?

シャルルのギアスを打ち破って光を取り戻したナナリーは、ルルーシュに「自分にもギアスを使うのか」と問いかけます。

自らフレイヤの発射ボタンを握って多くのブリタニア兵を殺した彼女の真意は「兄を止めたい」一心のみ。多くの罪を背負ったルルーシュを止めるには、自分も同じ咎人になってでも向かい合うしかない、と考えたのです。

そんなナナリーに「フレイヤを渡せ」とギアスで応じるルルーシュ。これはただルルーシュの覚悟がすごいだけではなく、彼なりの妹離れかなぁと思います。

かつてルルーシュは、自分の道を行こうとするナナリーを見て「自分はもう必要ないんだ」と自暴自棄になりました。ですが今回はナナリーの成長を受け止め「ナナリー、お前はもう立派に自分の考えで生きている」と彼女に聞こえない賛辞を贈ります。

世界一大切な妹はもう自分が護るべき対象ではなくなった。その事実をあのルルーシュが認め、主から賜るかのような姿勢でフレイヤの発射ボタンを受け取るのです。兄妹だけの卒業証書授与。

そしてギアスが解けた途端に「妹を騙してフレイヤを奪い取った悪逆皇帝」の態度に戻るんですね。そういう悪ぶろうとするところだぞルルーシュ!

フレイヤを握ったルルーシュは返す刀でシュナイゼルを追い詰め、ギアスによって支配します。シュナイゼルは「平和を達成するためのシステムじみた虚無の人」という性質がルルーシュの対比になっていて、実にラスボスらしい相手でした。ルルーシュスザクのコンビでもギリギリの戦いになった強さもラスボスにふさわしかったですね。

一番大事な妹と離別し、自分の対極にいる男を支配した悪逆皇帝ルルーシュは、かくして世界征服を達成します。コードギアスもいよいよクライマックス。シークバーは残り12分を示していました。

あと12分でルルーシュがスザクに殺されて終わるの!?

無理だろ!

第25話『Re;』(後)

コードギアスX公式アカウントより


あーーーーーーーーーーーーー!!!!

うあ、あ、あーーーーーーーーーーーー!!!!

ゼロレクイエム全部わかったーーーーーーーーーー!!!!!

動きでゼロの中身確信できるのおかしいだろ!!!!!!!!!!



×「ルルーシュがスザクに殺されてコードギアスは終わる」

〇「悪逆皇帝が正義の味方ゼロに殺されてコードギアスは終わる」

ゼロレクイエムによってルルーシュもスザクもナナリーでさえ、明日と引き換えに罪を犯した罰を受けました。

みんなが願う明日を創ったルルーシュは自分だけがそこへ行けません。悪逆皇帝の騎士として公的に死んでいるスザクはゼロの仮面を被るしかなく、自殺も許されず一生を孤独と正義に捧げるしかない。

2人は自殺に向かってあんなに力強く走っていた。なんだってできる最強コンビは世界だって救ってみせたのです。

そしてフレイヤを使ったナナリーは、兄の真意を知った上で彼がいない明日を生き続けます。市民によるゼロの大合唱を破るかのようなナナリーの慟哭がぼんやりと「ああ、コードギアスは終わったんだ」と私に思わせました。

「本当にうまくまとまるのか?」「ルルーシュの死を受け入れられるのか?」「スザクの殺人を許容できるか?」「あのネタバレは真実なのか?」

12分前の疑問がすべて吹き飛んだ後、残ったのは納得、そして「私はルルーシュが大好きだった」という気づきでした。

ネタバレを知っていても感動する作品は、ある。

最後に~オチを知ってようと面白いモンは面白い

初見者へのネタバレは厳禁といわれています。基本的にネタバレはその後の楽しみを奪うものであり、私もその立場です。

ではネタバレを知ってしまった作品がすべて色褪せるかといえばそんなことはありません。むしろ結末を知っているからこそより強く光を放つ、そう思わせるほどのパワーを持つ作品が存在します。私にとってのそれは『コードギアス』でした。

ネタバレされているからと諦めるのでなく、コンテンツが持つ力を信じて飛びこんでみる。それが新しい明日を創るのです。おっ、なんとなくいい感じにまとめられたので感想文を終わります! 長文にお付き合いありがとうございました! 本当に面白かったよ、コードギアス! ありがとうルルーシュ! せめて安らかに眠ってください!


『コードギアス 復活のルルーシュ』公式HPより

復活ってなに……?

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