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短編小説・ダイアグノーシス

先生に診断して貰うから手紙を書こう。じゃないと僕はいつも具合が悪いことや嫌な気持ちに蓋をしてしまうから。 手書きは薬の副作用で手が震えるので、難しいからパソコンを開く。今月前半は節約を気にしてしまってご飯を食べれなくって体重が3kg も減った。兄からご飯ぐらい食べてもいいんじゃないの?のんちゃんと言われてやっと食べる気になって勢いを持って食べたので1日で3キロ戻ってしまった。どんだけ食べたんだ。ただその半月の焦燥感がすごくてお腹がいくら食べてもいくら食べても減ってくる。餓鬼でもついたのだろうか。

 

 先生への手紙

「内藤先生すみません 。口ではかっこつけて大丈夫大丈夫って言ってしまうので 手紙を書きます。今の僕の状態を診断していただけますでしょうか。 朝は起きられるのですが疲れてしまって6時に目が覚めて8時にはもう横になってしまいます 。なんとか日常生活を送りたいので、体を動かそうと朝散歩をしたりしているのですが 日中はほぼベッドに横になっています。 一生懸命人間らしい生活を送ろうと努力して無理しては具合が悪くなって横になっています。友人と気分転換してzoomで話したりしようとしても30分も経たないで具合が悪くなってしまい途中で切ってしまいました。 前の僕とは違うんです。認知機能も落ちています。前日友人に送ったメールの内容を覚えていません。いつの間にか送ったんだろうといった感覚です。あと初めてですが幻覚を見るようになりました。内定を断った会社からの返信を見たら血文字で書かれてて、気持ち悪くってすぐ横になりましたが、次の日見たら普通のゴシック体のフォントでした。 僕どうかしちゃったんでしょうか。確かに昨年2ヶ月間入院してますが本当にそれで精神的な治療は終わっているのでしょうか。自分でも前じゃない 自分みたいなんです。 人格も悪くなったような気がします。 本当に今の僕は僕なのでしょうか。

頭を坊主にしてみました。気分転換です。一生懸命いろんなことを半日で考えて就労支援の担当の方と話し合っているのですが 考えがコロコロ変わると心配されています。僕としては12時間一生懸命考えてコロコロ変わってるつもりはないのですが、こんなことで再就職できるのでしょうか。家からすぐの病院のデイケアも行っています 。今日は読書をしました。 先生僕は大丈夫なのでしょうか 入院した方がいいのでしょうか。」

 先生に手紙を差し出して読んでもらった。 先生の診断は入院は必要ないとのことだったが 自宅療養をしてくださいとのことだった。 就職活動も控えてくださいとのことだった。 薬も新しいのを処方してくれるとのことだった。 

もうこんな生活が半年以上も続いている 。 僕は一体どうなってしまうのだろうか不安で不安で仕方がない。 

 

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 昔の手紙を見つけた。僕は今、職も見つけた。あの頃が一番辛い時期だった。何かもがいて掴もうとしてもいつも空振りでずぶずぶと泥沼に落ちていくような感覚だった。その頃からInstagramでやり取りしていた女友達も同じように苦しんでいて僕のように主治医の診断の為に手紙を書いたそうだ。彼女も元気にしているようでホッとする。少し蒸し暑い夏の日だ。金色のボスの缶コーヒーを片手で乾いた喉に流し込んだ。

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