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彩り豊かな世界 ~六十四卦~

八卦(はっか)を二つ重ねてできたのが『易経』に書かれている六十四卦。
陰または陽の線が六本組み合わされただけのものに見えますが、さまざまな見方ができるのが六十四卦です。

○ 自然や状況のイメージ ~八卦と八卦に分けて見る~

それぞれ自然の象が割り当てられている八卦。その八卦の組み合わせである六十四卦も自然の風景に重ねて見ることができます。
たとえば水天需(すいてんじゅ)なら、空の上に雲がある様子。

まだ恵みの雨は下に降りてきていないけれど、やがて降るだろう雨を「待っている」状態です。
 
また自然以外にもさまざまな意味が割り当てられている八卦。
水は困難、天は強さや健やかさを表すので、障害を前にして、力があり健やかな状態の人が進む時を「待っている」様子などと見ることもできます。

どちらにしても水天需の「待つ」というテーマを表している組み合わせです。
六本の陰陽の線の組み合わせからさまざまなイメージが広がります。

○ 外側と内側 ~八卦と八卦に分けて見る~

上の三本である上卦が外的な環境や相手、下の三本である下卦が自分の状態を表すという見方もあります。
 
天水訟(てんすいしょう)なら、相手は剛健なのに対し、自分の方は険しさやストレスを抱えているような状態。

天は上へと上り、水は下へ流れる性質から、お互いのベクトルが反対を向いている状態で、争うことを表す天水訟。相手は自分より強く真正面からぶつかっても大抵勝てないという判断も、上記の天と水の関係性(剛健さを持つ天の方が強い)から見ています。
 
環境や相手だけではなく、自分自身の外側と内側の状態という見方もあります。この場合は、天水訟なら、内にストレスや不満を抱えつつ、外面では強がっている状態。自分の心と行動がちぐはぐで葛藤を抱えている状態、などと見ても良さそうです。

○ 陰陽の並び ~六本の全体を見る~

六本の陰陽の組み合わせ全体を見ることもあります。
たとえば、冬至を表す地雷復(ちらいふく)は、陰の中に陽が一本入ってきた状態。これは陰だけでできた坤為地(こんいち)の状態から、陽が射しこむ地雷復に変化したという見方ができます。そしてその陽が増えると地沢臨(ちたくりん)に。

坤為地(こんいち) → 地雷復(ちらいふく) → 地沢臨(ちたくりん)

坤為地は11月 / 地雷復は12月(冬至) / 地沢臨は1月
を表すという見方があります

易の見方で重要なルールの一つが、六本の陰陽は「下から上へ」と読むこと。
時間の流れも、一番下が始めの段階で、一番上が最後の段階です。
 
地雷復は、坤為地でいったんなくなった陽がまた一番下に復活した状態。植物から種が落ち地面に潜って一時何も見えなくなり、そのうちに下から芽が生え、次第に上へと伸びていくようなイメージで、下から始まり上がっていくという見方をします。

○ 言葉で描き出されるもの ~『易経』~

六本の陰陽で表される易ですが、『易経』という書物では易が言葉で表されています。
六十四卦に、また六十四卦を構成する六本の陰または陽(爻(こう)と呼びます)一つ一つにそれぞれかけられている言葉。それらは、それぞれの卦つまり六本の陰陽の並びが表していることを説明するもの。易はもともと占いとして使われており占断の言葉でもあります。
吉凶が書かれていたり、人の行動やさまざまな場面になぞらえたり。物語のように感じる描写もあれば、難解で意味が分からない言葉もあります。分かったような、分からないような。
易の六十四卦はそのどれもが人生や社会のさまざまな色合いを表していて、世界そのもの。この世界のすべてのものごとを表しているのが、易の六十四卦。だとしたら、よく分からないことがあるのも易らしいというか、あたり前かもしれません。

捉えどころのない、しかしだからこそ魅力的な易の世界。それは彩りが豊かな世界だと感じます。

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