あなたがいるから、酔えるの #呑みながら書きました
酔ったわたしを見て「もっと呑んでもいいのに」と、彼は言う。
・・・・・
あの日わたしは島の女子会で、港近くのスナックに連れて行ってもらったのだ。初めてのお店だった。
デンモクで懐メロばかり入れる新入りを、ママさんはすっかり気に入ってしまったらしい。
「あなたまたすぐにいらっしゃい」と、早くも二度目の訪問を指示された。
みんなでお店に入れたボトルが、あっという間に空く。
この島の芋焼酎は、水のようにさらりとして、ダントツで飲みやすい。
けれどこの場に、芋焼酎の美味しさを教えてくれた彼はいない。
ふいに店の外で、軽くクラクションが鳴った。
迎えに来て、とお願いしていた時間だ。
「おやすみ」と言って、ママさんがニヤリと笑う。
ラ・ラ・ランドの中盤にこんなシーンがあったなあ、と思いつつ、わたしは会計を済ませてお店の外に駆け出す。
ミアは芋焼酎のウーロン割りなんか飲まへんけど。
お店の外には、彼が車を止めて待っていた。
後部座席の扉がガタつく、スモーキーな青色の軽バン。
ためらいなく、そのオンボロ車に乗り込む。
ほろ酔いくらいが、面倒くさくなくてちょうどいいじゃん。
ええ、わたし酔ったらそのまま寝るだけだよ。
彼には、甘やかされてばかりだ。自分に厳しくしがちなわたしに、彼はとことん甘い。
厳しくされたのは、車の運転練習のときくらいじゃないだろうか(ペーパードライバーだったわたしを、彼は徹底的にしごいた。今となっては、裏路地も山道もお手の物である)。
浮かれるなんて、わたしにはできない。
真面目なわたしの、キャラじゃない。
そうして26年が過ぎ、ここまで来た。
シラフなわたしも好きだ。
アルコールが1ミリも回ってない、冷静な自分も好きだ。
わたしは酔いに頼らなくたって、言いたいことは言えるし、やりたいことをできる人間だ。
けれど、彼の隣で少し浮かれる自分も、悪くないかもしれない。
そう思って、わたしは車の揺れに身を預けて、目を閉じた。
―――――――――――――――――――――――
コーチングのクライアントさんを募集しています。
詳細についてはこちらのnoteをご確認ください▼
読んでくださりありがとうございます!いただいたサポートは、わたしの心や言葉を形作るものたちのために、ありがたく使わせていただきます。 スキを押すと、イチオシの喫茶店情報が出てくるかも。