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勝手にいなくならないで。

好きなミュージシャンが亡くなった。

こういう訃報を聞くたびに、「クリエイターは健康に気をつけてほしい」というツイートがTLを駆け巡る。その通りだと思う。

ただ、こんな話は今に始まったことではない。同人作家、ミュージシャン、ゲームクリエイター、なんにせよ、クリエイターというくくりに含まれる職にある人たちはずっと健康を心配されている。
かつては、その位置にあったのは激務のサラリーマンたちだった。過労死が大きく取り立てられた報道、そしてこの4月からの働き方改革法案の厳格な実施、それを見る限りでは社会は本格的に健康重視にシフトしている。
禁煙政策だってそうだ。健康はリスク、健康はコスト。国の医療費は膨れ上がっている。

しかし、そんな働き方改革を横目に、クリエイターたちは昼夜が逆転しようとも働く。いや、本人達に働いている実感はもしかしたらないのかもしれない。楽しくて、楽しくて、仕方なくて、気づいたら身体の資本は目減りして、まるで強制ロスカットのように、事切れる寸前に来ているのかもしれない。

件のミュージシャンも、10年間、ずっと僕の遥か前を走っていた。VOCALOIDというフロンティアをガツガツと開拓した1人だった。
僕は彼の曲を飽きるほど聴いたし、今でも歌える曲は沢山ある。

こんな風に居なくなってしまうのは、想像していなかった。

数年前に同じくVOCALOID黎明期を盛り上げた方が全く同じ31歳で亡くなったときと同じ悲しみを味わうことになってしまった。

あのね、正直に言うとね。
こんな風にいなくなるのは、ずるいよ。

後ろを追いかける僕たちは、これで誰もあなたに追いつけなくなってしまった。あなたの時計は止まってしまって、あなたの残した作品はまるで別の次元に行ってしまったかのようになってしまった。こんなの、もちろんただのわがままだし、99.9%追いつけるわけない、ということも分かっている。でも、いつか同じステージで、と思っていた人もいるだろうし、なんだろうな、僕だって、うん。

寂しい、な。

ツイッターを眺めていたら、「健康に長生きすることに何の意味があるのか。ほどほどの長さを必死に生きてぽっくりと死ぬ方が幸せだろ」という旨の発言があった。気持ちはわかる。

誤解を恐れずに言うと、ぽっくりと死ねるクリエイターは幸せだろう。僕の祖母も老衰で亡くなったが、寝ている間に突然息を引き取った。周りの大人達はみんな、「苦しまなくてよかったなぁ」と言っていた。もちろん、歳が全然違うのだけど「苦しまずに死ねる」は今の世の中では貴重なことだと捉えられているのは事実だと思う。

でもね、そんな人ばっかりじゃないんだよ。
不摂生を続けて、持病を抱える羽目になったクリエイターも数多くいる。ようやく世の中に認められつつあるタイミングで、どうしてもその仕事を続けられなくなった人も見てしまった。薬を飲み続けるくらいならまだ良いかもしれない。例えば腎臓を悪くして人工透析になんてなったら、週に何度も病院で数時間拘束されて、旅行も満足に行けない。そんな状態で満足にものを創れるんだろうか。

人生80年だったのは過去、もう人生100年の時代だ。まだ半分にも行ってないのに、幕を下ろす必要は、ないよ。苦しんで生きるあなたを、誰も見たくないよ。

ねぇ、あなただよ。見てる?

勝手にいなくならないで。

#創作 #クリエイター #日記

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