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平成最後の夏と、ぼくと、ロックンロール。

平成最後の夏に、はじめてVOCALOIDフルアルバムを完成させた。

VOCALOIDで曲を作り始めて5年弱。このアルバムができるまではとても長かった。たくさんのことを考えたけど、最終的に自分として一つやり遂げた気もする。

せっかくなので振り返ってみる。

2017年6月、会社の昼休みにデスクでお弁当を広げていた僕の目に、あるイラストが飛び込んできた。

イラストレーター、あす缶さんのイラストだ。

正直言って、はちゃめちゃにインスピレーションを刺激された。

当時、作曲はしていたものの路線が定まらず、クラブミュージックやジャズ、オリジナルからゲーム音楽のアレンジなどにも手を出し、完全に音楽性に収集がつかなくなっていた。手を出した各々のジャンルでアルバムを作る気力なんて無かったし、とりあえず即興で思いついたインスト、アレンジを作るだけの1年を過ごしていたのがこの年だ。

そんなとき見つけたこのイラスト、さらに前後にあった「よかったら曲をつけてみてください」という旨のツイート。

「これがやりたい!」、そう感じたその日には東京駅から日比谷公園まで歩いて、メロディーをひねり出そうとしていた。しかし6月特有のじめじめとした湿気と夏に向けて徐々に上がってきた気温に中々集中できず、納得行くものができないまま結局家に帰りついてしまう。

最終的にギターを弾いたりしつつ、サビのメロディーを思いついたのは汗を流すためシャワーを浴びていた時だったように記憶している。そのまま慣れないギターを(まともに弾くのは数年ぶりに!)手にして、以下のデモを完成させた。(ツイートとの日付がずれているのは、確か気づいた日が遅かった)

サビだけだし、コーラスも入れてないし。今聴くと粗い部分ばかりだが、初期衝動が詰まっていた。久々に作りたい曲が作れた。

運良くこの曲は周りに広まり、友人からも完成させてほしいと言われた。

そこから最終的に完成したのが2か月後、8月の後半だった。

投稿後、過去に無いスピードで再生されたこの曲はニコニコ動画で2017年のうちに10,000再生を突破し、代表曲になった

この曲の中身、みたいなものについてはアルバムに少しだけセルフライナーノーツとして載せているし、詳しく書くつもりはない。

この曲を作ったことで、VOCALOID曲を普段から聞いている人たちにはある程度の認識をしていただけたように思える。同時に、同業者のボカロPたちにもなんとなく「こんなやつがいるな」と知っていただけたような気がする。今となっては感謝しかない。

この曲ができてから僕の心は決まっていた。(精神的に)ポップな曲を作ろう。今作りたいのはそういう曲だ。そう考えてすぐに曲を作り始めた。

とは言えまだまだ制作スピードは遅く、次の曲が12月、その次が2月と時間が空いてしまう。間に別の曲も書いていたのだが、それにしても秋に間に合わなかったのが悔しかった。

しかし、2月に投稿した「魔法をかけて」はまた1つ扉を開いた。

ニコニコ公式のバックグラウンド音楽再生アプリ「nicobox」に取り上げられた。これを機に再生数が3,000から今では15,000まで増えた。nicoboxはマイリス機能に加えてプレイリスト機能というnicoboxオリジナルの機能があるのでマイリスト率は1%くらいになってしまったが、とりあえず聞いてもらえるのは嬉しい。しかも好きなボカロPの皆さんと並んでいるのだ。すごい。

nicoboxには最新の「今年もまた、夏に会いに行く」も取り上げていただいた。

数ある夏曲を差し置いてじんさん、n-bunaさん、みきとPなどに並んで僕の曲があることに違和感しか覚えない。嬉しい。


こうやって曲を作ってる中で一貫していたのは「メロディーを優先する」ことと、「分かりやすい歌詞にする」こと、「ノレるリズムしか作らない」の3点だった。これは特段意識したというよりは、曲を作る中での自分のポリシーのようなもので、これに沿わない曲は気が付いたらボツにしていた。

タイトルの「夏と私とロックンロール」は僕の好きなものだ。

実は、「私」と「あなた」で悩んだ。歌っているのはいつも振り向いてくれないあなたのことばかりだったからだ。それでも「私」にしたのは、そんな自分が好きだったから。そして「私」はつねに「あなた」と紙一重だからだ。

ジャケットは最初のきっかけをくれたあす缶さんにお願いした。僕が大好きな鴨川デルタを入れてほしくて、妹にわざわざ写真を撮ってもらった。地震のあったすぐ後で申し訳なかった。ブックレットにも楽曲をイメージした人物を描いてもらっている。あす缶さんは僕の楽曲の機微をかなり素早く理解してくれる方でとても頼りになる。これからも仲良くしてください。

そして全体のデザインは藤宮藍くんにお願いした。別の方面で知り合って実際にお仕事をお願いするのは初めてだが、CDのロゴ、盤面共に想像をはるかに超える出来で、とても嬉しい。

波を感じるデザインが素敵。盤面の透明感ある青の水玉も眺めていてとても楽しい。

しかもデザイン系の入稿、イラストレーターさんとのやりとり等に不慣れな部分をサポートしていただいた。

お2人とも、締め切りが厳しかった中素早く対応してくれてありがとうございます。今後はもっと余裕を持ちます。持ちたいです。

そしてこれはまた書くけど、コミックマーケットで実際に手に取ってくれた皆さん、ありがとうございました。自分の作品がたくさんの人に届くこと、とっても嬉しいです。今後も頑張ります。


さて、アルバムを1枚作ってから1か月ほど、怠っていたインプット類をガッとやって、実家に帰ったり久々の休息期間だった。今はずっとSaucy Dogを聞いている。歌詞もメロディーも素敵だ。

これからも誰かの生活を少しだけ彩れるそんな音を作っていきたいな。

あ、もし興味を持った方がいたらここから通販しているので、ぜひぜひ。


皆様のサポートは、次回作品の制作費に充てさせていただきます。