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母の化粧

パァン!パァン!

洗面所から音がする。
餅でもついてるのかと思って思わず覗くと、母が化粧水を肌に入れ込んでいた。
少しでも多く浸透させたい気持ちはわかるがそんなにやったら逆に肌に悪いと思う。

母の化粧ポーチは小さい。
ファンデーションとアイシャドウとアイブロウとリップとチークとリップブラシがそれぞれ1つずつ入っている。
それらを使って母は化粧して出かけていく。
小さい頃、何でお化粧するのと聞いたら
「お化粧しない顔じゃ恥ずかしいから。」
と返された。
別に化粧しても変わらない、お母さんはお母さんなのになあ。
あの頃の私は化粧なんてしないぞなんて思っていたが、
私の化粧ポーチは母のものより何倍も大きくて重たくて、それぞれ一個になんて絞るのができない優柔不断な化粧ポーチだ。

ソファで寝ている母の肌をこの間突っついたら、はんぺんみたいな触り心地だった。
ええ〜昔からこんなんだったかな〜なんて思って何度かつついていたら怒られた。
母も年を取っていたのだなと思うと同時にハリがあるだのないだのっていうのはこういうことかと学んだ。

そのハリのない肌に健気に化粧水を入れ込む母。
そうだよなお母さんも女子なんだよな。
いや、世の女性はみんな女子だ。その人が願う限り、永遠に。

そんな母の美容に関してあのパァン!パァン!で思いを巡らせたのだった。

#エッセイ #母 #化粧 #女子

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