2018年12月26日(水曜日) 日記26日目

 何も書くことがないから、好きな漫画家の話でもしましょう。白泉社から出ている『楽園』という漫画で連載されている panpanya さんです。panpanya さんが描く漫画は現実の街を舞台にして、奇妙な世界に迷い込み、そしてまた日常に戻るという大枠の展開はあるものの、その奇妙な世界の描き方が魅力的であります。
 例えば、交通量調査のバイト中に次第に道路を走るものが車ではなくなって、それを数えればいいのか分からなくなってしまったり。
 学校のゴミ拾いのボランティア活動で、効率よくゴミを拾う方法を確立していくうちに牛と大八車を借り、事故を起こしたゴミ収集車にゴミを運んでもらうよう頼まれたり。
 枕が合わず眠れないので、自分に合ったオーダーメイドの枕を探すうちに、枕に使われる魚を買う事になったり。
 ちょっとした日常から、思いもよらない方向へと話が進んでいくという部分はよもすると荒唐無稽にとられかねないのですが、そこに説得力を持たせる部分は panpanya さんが描く街や物の描き込みと、登場人物の簡素化にあると思います。
 この漫画に登場する人物たちは、べた塗りの無い線だけで描かれた顔の少女の、穴が3つしか開いてない笛の出来損ないのような頭だったり、もしくは二足歩行する犬やカエルや魚だったりします。どの物語にも出てくる人たちであり、その人物たちには詳細な人物設定は与えられておりません。物語を動かすために存在する人物と言っていいと思います。
 しかしその代わり街の描き込みは目を見張るものがあり、何処かで見たであろう懐かしい看板や建物を写し撮るかのように描き、影や汚れなどの描写をペンを何度も走らせて作り出しています。
 普通の漫画では人物の描写に力を入れて感情を共感させたり反発させたりしますが、この漫画の中では人物を簡素化していることで風景がその感情の触媒となっています。道路標識や商店の看板、木造建築などなど懐かしいけど、漫画的な表現のために少々気味が悪く感じてしまう。
 そこで描かれる物語が日常から外れてしまった物事であり、その物事の周辺を徹底的に描写することで奇妙さへの説得力になっているのです。
 毎年、新刊が出るたびに購入しているので、来年の新刊も楽しみなのです。ちなみに、この panpanya さんの単行本は漫画以外にも短いエッセイが掲載されており、短いながらも panpanya さんの思考の一端が見られる興味深い内容になっています。興味がありましたら、ぜひ、読んでみてください。
 『楽園』は、webでも読むことが出来ます。(白泉社『楽園』のリンクはこちら

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