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舌下免疫療法とアトピー性皮膚炎

舌下免疫療法とアトピー性皮膚炎についての論文を見つけたので今日はご紹介したいと思います。

はじめに舌下免疫療法とは?


アレルギー性鼻炎の唯一疾患の自然経過を修飾(つまり治せる可能性がある)できる可能性のある治療である免疫療法。
免疫療法には、皮下免疫療法と舌下免疫療法があります。
こちらは以前の舌下免疫療法についてお話しした記事。

舌下免疫療法はぜっかめんえきりょうほうと読みます。
字の如く、舌の下にお薬(ラムネのようなタブレット)を載せて、1分間保持したあと、飲み込むという方法で行う治療法です。
なんで舌下なのかというと、口の中の粘膜にアレルギー反応を抑える働きのある細胞がいることがわかっていて、この細胞にお薬の成分をしっかり作用させるためにしばらく飲み込まずに口の中で留めておくことが大切になります。そのために舌下投与なのです。

日本ではスギ花粉症に対してとダニによるアレルギー性鼻炎に適応があります。
スギの花粉症は今や国民病とも言うべき病気になっており、それを治せるかも知れない治療ということで、非常に期待されています。
しかしその需要とコロナ禍などの薬剤不足の影響で今スギ花粉症に対する舌下免疫療法を始めることができません。
舌下免疫療法は最低3年は続けることが必要なため、今の時点で継続しているが中断されることないように継続の人の薬を優先的に生産しているため、新規で開始することができないのです。
早く開始できるようになって欲しいですね。
でもダニによるアレルギー性鼻炎の方には舌下免疫療法できます。
ダニ?と思うと思いますが、もちろんアレルギー性鼻炎の方の多くはスギによる花粉症が多いのですが、通年性の方はダニによる方が多いです。
秋とかに風邪引いてないのに、鼻水がひどくなるお子さんいませんか?
うちはそうだったんです。あれ?と思って採血してみたら、ダニアレルゲンに対して陽性でした。そこでダニの舌下免疫療法を開始しました。よく鼻詰まりを起こしていたのが、程度が軽くなってきています。

免疫療法とアトピー性皮膚炎について

さらに、調べていて免疫療法を行うことで、アトピー性皮膚炎の重症度を改善するという研究論文を見つけたので、紹介いたします。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36191689/


論文の結果と私の考察

メタアナリシスという幾つかのランダム化比較試験を集めて、研究結果を解析したものです。かなりエビデンスの高い論文になります。
この論文ではダニの舌下免疫療法を行うことで、アトピー性皮膚炎の重症度を下げ、QOLを改善できたと書いてあります。皮下免疫療法も解析しており、皮下免疫療法はあまりアトピー性皮膚炎に対しては有害事象の方が多く出たと書いています。
ディスカションでは長期的効果は不明であり、アトピー性皮膚炎が多因子疾患(いろんな遺伝的要因、環境要因が複合して起こっている疾患)であることから、ダニに対する免疫療法がうまくいっても完全に皮膚症状が良くなるとは限らないとは述べられています。
しかし、アトピー性皮膚炎患者さんの採血をすると、みなさん軒並みダニに対して陽性を示す方が多いです。
鼻炎も併発している方なら(現時点での日本での舌下免疫の適応はアレルギー性鼻炎なので)、アトピー性皮膚炎の悪化因子対策として、皮膚科医としてはもっと勧めてもいいかなと感じました。


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