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保湿剤(選ぶ前に知っているといい知識)

前回は処方薬の保湿を書きました。
今回市販のものを取り上げようとして、色々調べましたが、本当に沢山あるんです。
これだけ沢山あるのは世の中の人が保湿に興味を持っていて、メーカーさんも頑張っていいものを出そうとしてくれていることでもあるのだなぁと感じました。
じゃあこの中からどう選べばいいか?

ズバリ、
成分を見て、使う人に合ったものを選ぶ のがいいと思います。

「そんな当たり前のことじゃなくて、どれがいいか知りたいんです。」と言われてしまいそうですが、万人に合うものというのは難しいです。
処方薬でも時にかぶれが起きることを考えると、絶対皆さんこれだけ塗ってればいいですよっていうものはないのだなぁと思います。
それに赤ちゃんに使うのか、思春期の子が使うのか、成人の方が使うのかでも異なってきます。
続けるためには、使いやすい剤型だったり、続けやすい価格を選ぶのも重要になってきます。
だからこそ、知識をつけて自分に合ったものを選び取る力を皆さんにつけてもらえると、とても嬉しいと思います。

まず成分を選ぶために、皮膚の構造を説明する必要があります。
皮膚は、表皮、真皮、皮下組織という構造が外表面から順にミルフィーユのように層状になっています。一番外表面にある表皮も角質層、顆粒層、有棘層、基底層と層状に重なっています。つまり角質層は皮膚の一番外表面の部分ということになります。
この角質層部分の構造について説明いたします。

下の図を見てください。
角質層は角質細胞(水色の部分)がこのようにお城の石垣のように積み重なっているような状態です。そして、石垣のような個々の細胞の間を埋めているセメントのような役割をしているのが角質細胞間脂質になります。一番外表面にあるのが、皮脂膜です。



角質層は外からの刺激を防ぎ、内からの水分の蒸発を防ぐ、バリア機能の役割を持っています。
そのバリア機能を果たす大きなものが
①皮脂膜
②天然保湿因子
③角質細胞間脂質
です。

まず、①皮脂膜についてですが、油の膜でカバーしている状態です。皮脂腺から分泌される皮脂(油)と汗腺(かんせん)から分泌される汗がまじりあってできています。皮脂腺の脂質は脂肪酸、スクワレン、リン脂質、コレステロールなどです。つまり皮脂腺の脂質と汗が交じり合った、天然のクリームということになります。
②の天然保湿因子(NMF、黄色い丸)は、角質細胞の中に水分を保持して、皮膚の保湿をしているという重要な役割があります。主要成分はアミノ酸とその派生物です。フィラグリンという角質細胞を構成するたんぱく質の一つが分解されて、アミノ酸まで分解されると天然保湿因子となります。
③の角質細胞間脂質はいわばセメントの役割です。
石を積み上げただけのところに水を流すと流れていきますよね。細胞だけが重なっている状態だと、水分が体の中と外とで出入りしてしまう状態になってしまいます。角質細胞間脂質がセメントの役割をして、隙間を埋めることで、水分の蒸発を防ぎ、外からの刺激を入れないことで、バリアの働きを担っています。
この角質細胞間脂質の主な構成はセラミド、コレステロール、脂肪酸です。

保湿剤はこの生体のバリア機能にある成分を補完するような設計だったり、水分を角質細胞に保持させる設計を考えて作られています。

またバリア機能を測る指標として、
角質水分量と経皮水分蒸散量の2つが挙げられます。
角質に水分があるほど、経皮水分蒸散量が少ないほど、保湿されているしっとり、滑らかな肌ということになります。

今日は、保湿剤を知る上での基礎知識がメインになりました。
保湿についてまとめようとしていると、皮膚のバリア機能のことを述べないと、説明がしにくいなと感じました。そこで今日は保湿の成分についてお話しする前の皮膚のバリア機能についての説明のみにさせていただきました。

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