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【短編小説】踏切

「この音、聞こえる?」

貴方は そう言って

私に あの音を聞かせる

スマホ越しに聞こえる あの音


…カンッカンッカンッ


「聞こえたでしょ?
今から飛び込むよ」

そう言われ 息を飲んだ…

「やめて欲しい?」

そんなことしないで…

「なら、別れるなんて言わないで!」

わかった…考え直す…から

「オレは、アナタのこと好きだよ!
アナタは?」

す…すき…だよ……

泣きながら答えた


私が、別れのことを考える度
貴方は、察(さっ)して あの音を聞かせた


…カンッカンッカンッ…


遠くで 踏切が鳴っている

「この音、聞こえる?」

貴方の声が聞こえた気がした

聞こえるわけがないのにね…

もういないのに…

震えが止まらない…

遠くで あの音とともに
貴方の声が聞こえた気がした


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