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前髪

「前髪」というお題を一年くらい前にもらったことを、ふと思い出したので書きます。

ホットペッパービューティーの初回クーポンを使って前髪を切った話。

中高生のころは、地元にあるチェーンの美容室を行きつけにしていました。
担当の美容師さんは安藤さんという、オリラジ藤森似の方でした。

4年くらい通ったので、彼の結婚から息子がハイハイするまでを見守りました。

髪を切っている間、私が楽しいかどうかは気にせずひとりで話してくれるのが気に入っていました。

株とか、機械いじりとか、子育てとか、美容師のコンテストの話とか。どう考えても私の興味なさそうなこと。

私は勝手に話し続ける人がとても好きです。

「お話」が好きなのだと思います。
つまらない講演会も、授業を静かに聞くのも好きです。

「お話」の中から興味は湧くもので。

そういえば、カメラが欲しいと思ったのも安藤さんがきっかけでした。

私が高3のときに安藤さんは他の店舗に移動してしまったので、同じ美容室の別の方に髪を切ってもらいました。

そこで気づいたのです。

始めて切る人でもあんま変わんないじゃん…。指名料無駄じゃん…。

それ以降は、ホットペッパービューティで値段だけを見て美容室を決めることにしました。

さらに毎回違うお店に行けば初回限定クーポンを使い続けることができます。

私は担当の美容師さんを探すことをやめました。

先日髪を切った際には、新宿駅西口から10分くらいの雑居ビルにある美容室に行きました。

アンティークの鏡がたくさん貼ってあったり、よう分からん植物が生い茂っていたり、コースターがビートルズのジャケットの柄だったり、押し付けがましい清潔感がなくて「新宿の雑居ビル」に相応しい内装だったので結構テンションが上がりました。

いつも、美容室ではCanCamとarか、SweetとSPRINGを出されてしまうタイプなのですが、今回はNILONとGISELeを出してくれたのも嬉しかったです。

美容師のおにーさんはヒッピー風の出で立ちで、ロン毛、耳と唇にたくさんのピアス、両腕にタトゥー。しかも大阪弁。物腰柔らかでフランク。
奇妙な人でした。

おにーさんは私の前髪をざくざくと切っていきました。
斜めの方が似合うよ~と笑いながら。ざくざく。
もうちょっと切っていい?と尋ねる言葉を言い終わらないうちに。ざくざく。

眉上アシンメトリー前髪になりました。
就活用にお願いします!って言ったんだけどなあ…。

「新宿の雑居ビル」然とした美容室で、ロン毛のおにーさんに、前髪を斜めに切られるの、悪くないなーと思いました。

結構気に入ったけど、おにーさんにはもう会わないと思います。一期一会が初回クーポンを使い続ける者の宿命なのです。

ありがとう、おにーさん。ありがとう、先週まで目に掛かっていた前髪。ありがとう、ホットペッパービューティの初回クーポン。

じゃあね、さよなら。

「またのご来店お待ちしております」


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