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あ、職を失います。ーなぜ事業を閉鎖するの?ー

「コロナの影響ですか?」


各方面に事業の閉鎖を伝えると、おおくの人がこう質問する。

「隠すつもりはない。正直に伝える」

と会社の社長・藤木(以下、藤木)は言った。

事業を閉鎖する理由は大きく2つある。


1つめは、後継者問題。藤木は現在76歳で、「いつ死ぬかわからない」が最近の口グセだった。「またまたー」と笑って返してはいたものの、藤木も私たちも、どこかで冗談とは思っていなかった。

藤木が後継者を探さなかったわけではない。ここでは詳細は省くが、10年前から探したり、育てたりしていたのは知っている。私はそのようすを近くで見ていて、「二代目にお願いするのは簡単だけど、自分(会社)の想いをつなげることが難しいんだ…」と感じていた。

これは決して、私たちの会社に限った話ではないと思う。「後継者不足」は、帝国データバンクの2018年のデータによると、全国で66.4%、約18万社にのぼる。黒字にもかかわらず、会社をたたむ会社は続出しているらしい。

話はそれたが、悩みつづけていた後継者問題は、解消できずにいた。


2つめは、人材不足。私は人材派遣会社(派遣元)に勤めている。人材派遣業のお金の流れはシンプルで、派遣社員が実際に働いて、はじめて売上げがあがる。働くヒトが増えると、売上げは増えるし、ヒトが減ると売上げは下がる。もっとわかりやすく言うと、

入社数 > 退職者数 = 売上げUP
入社数 < 退職者数 = 売上げDOWN

となるわけだ。

ヒトが集められなかった理由を、振りかえるとキリがないが、藤木はこのことを

「時代の変化に対応できなかった」

と言った。

この2つがおもな理由で、コロナは偶然にすぎない。

とまあ、会話では、もっとざっくりと説明するのだが、具体的な解答を想定していなかったのか、おおくの人は返答に困ったようすだった。



たまに「そこまで理解していて、なぜ転職しないの?」なんてことを、訊かれたりもした。

私は苦笑いをして、その場をしのいだ。

でも本当は、私なりの答えをもっている。私が大切にしているのは、会社の規模でも業績でもない。自分がそこで何を学び、何を考え、どう行動できるかだ。藤木は、私の可能性を信じてくれ、幅広く業務をまかせてくれた。

そのおかげで、しごとはいつも楽しかったし、毎日刺激的だった。着実にスキルも経験もかさねることも実感できた。

たしかに、先を見据えて、転職した方がよかったかもしれない。けれど、それが良いか悪いかなんて、答えは後になってみないと分からない。

だから私は後悔していない。たとえいま凹んでいても、こころは何とか折れずにすんだ。

わぁぁーーーー!!が、、、頑張ります!!