見出し画像

企業理念・経営理念

江本手袋の経営理念は『人らしく生きるものづくりで、喜び合える地域社会を創る』です。

この経営理念は、創業の初代、先代と明文化されたものはありません。江本手袋の経営理念が明文化されたのは、実は3年前。会社を畳むかどうかの瀬戸際で、田部社長と一緒に再度会社を立て直すと決意して作ったものです。

昨年、中小企業家同友会の「経営指針を創る会」を受講しました。そこで初めて、江本手袋の理念について改めて考えました。自分はなぜ手袋と関わっているのか、創業時から受け継いだ想いや変わらない考え方は何なのかとひたすら自問自答を繰り返すようになりました。

そして経営理念から経営方針、経営計画と作っていき、最終的に経営指針書ができあがりました。

出来上がった経営指針を関係者の方々に聞いていただくために「経営指針発表会」を行いました。予定では、私が説明して今後の経営に関して説明をして終了だったのですが、弊社の二人の社員にマイクが回ってしまいます。

社員にマイクが回ることを想定していなかったので、事前に伝えてもなく、ただでさえ喋るの苦手なのに、突然多くの人の前で喋らせて申し訳ないと思いました。

現在、弊社は2名の社員がいます。

一人は久米さんという女性で、江本手袋で50年以上、手袋の縫製をしてくれています。メディアの取材などでは彼女に出てもらうこともありますが、人前で話すのは苦手と言いながらも話をしてくれました。

「使ってくれる人に喜んでもらえるよう”履き心地を良くすることだけ”を考えて手袋を縫い続けてきて、自分にはこれしかできない。今までは相手の顔が見えなかったけど、今は自社ブランドもできて喜ぶ声が聞けて嬉しい。」

私はこの言葉を聞いて、彼女こそ江本手袋の宝だと改めて実感しました。

画像1

久米さんは私が生まれる前、50年以上も前からひたむきに自分を高める事に誠実に向き合ってきたのです。ものづくりの技術とは、道具ややり方ではなく、人間性そのものだと思います。

この人間性を磨かないと、良いものなんて出来るはずがない。これこそが、『人らしく生きるものづくり』であると改めて確信しました。

そしてもう一人の社員、創業者の息子であり私の叔父の新一さんはこう言いました。

「自分は東京に行って向こうで就職し、結婚して暮らしていた。ところが、ある日、東京が嫌になった。自分は親父がたまたま田舎で手袋屋をやっていて、帰れるところがあってよかった。これからも、そんな田舎であって欲しい」

叔父の言葉は、地元に仕事を作るという事、それが『喜びあえる地域社会を創る』という事だと感じました。

いつでも戻れる場所があること。そこに安心して生活できる仕事があること。そういった場所を作っていくことこそ、江本手袋の目標なのです。

画像2

二人の言葉を足すと、『人らしく生きるものづくりで喜びあえる地域社会を創る』という江本手袋の理念になっていた時には本当に驚き感動しました。
むしろこの2人があたり前にやってきた事そのものが理念なんだと気づかされました。

今、江本手袋は創業81年目を迎えました。

私で三代目となる会社ですが、経営理念を作る過程で江本手袋の歴史を振り返ってみると、その時代時代に合わせて、社会の変化に合わせて柔軟に対応してきた結果、今があるのだと思います。

そして、誠実に手袋づくりに取り組み続ける社員がいてくれたおかげだと思います。

これから50年、100年。どんな世界が待っているのか、それは誰にも分りません。しかし、どんな時代がやってこようと変化した社会に対応し続ける会社であり続け、「人らしく生きるものづくり」と「喜び合える地域社会を創る」という理念からブレることなく取り組み続けます。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?