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【ネタバレ】「silent」第6話~感想をつらつらと~

 先日第5話までの感想をだらだら書いた。最終話くらいになったら後半の感想をまとめて書こうと思ったけど、第6話を見て、居ても立っても居られず感想を書いている次第だ。

 第5話までは想と紬、湊斗の三角関係を描いていたが、第5話で紬と湊斗の関係に終止符が打たれた。もうここから先は想と紬が結ばれていく過程に、奈々との関係や春尾先生の過去とかが絡んでくるのかな、あとはもうポテチでもバリバリ食べながら見ればいっか、なんて思っていた。
結論を先に言うと、この考えは誤りでした。ごめんなさい。めちゃくちゃ泣きながら見ました。

 今回の主役は、夏帆演じる桃野奈々だ。紬よりも奈々が出ている時間の方がおそらく長い。これだけ脇役がしっかり主役をはれるのが、このドラマのすごいところだ。
 想が大学生になり、本格的に耳の聞こえが悪くなったころ、聾者向けの就活セミナーで二人は出会うところから始まる。そのころ、想はこれまでの人間関係にも、これから誰かと関係を築くことにも怯えて、他人と壁を作っていた。
 ひょんなことから偶然出会った奈々に、想は自分の口で語り始める。聴者から見た聾者への偏見や日常のあれこれをただ静かに聴いてほしいという想の言葉を、奈々は文字通り静かに聴いていた。「音のない世界は悲しい世界じゃない」「私は生まれてからずっと悲しい訳じゃない」「悲しいこともあったけど、嬉しいこともいっぱいあった」「それは、聴者も聾者も同じ」「あなたも同じ」という静かな奈々の言葉に、想はこれまでにない安心感をもらったのだ。
 
 想は奈々のことを「大事な人」と表現するが、今の想の気持ちは紬に向いていた。想は奈々を呼び出して、ずっと曖昧にして無視してきた奈々の気持ちと向き合うことに決めた。
 一方、奈々は想への気持ちを素直に表現することはしなかった。「想のことが好きだから、一緒にいたい」とは言えないのだ。これまでの奈々を見ていると、想に閉めてもらうためだけにわざわざリュックのファスナーをちょっと開けておくような、ちょっとしたたかな女の子というイメージがあったが、第六話を見て思うのは、したたかというよりも素直に甘えられない人というのがしっくりくる。奈々は想に対して少しお姉さんのように強がるところがる。
 そして、奈々からこぼれおちたのは「(紬は)想くんのこと、かわいそうだから優しくしてくれるだけだよ」という言葉だった。これは自分に振り向いてくれない想に、意地悪を言っているだけではないと思う。想が奈々に、二人の曖昧な関係性について現実を突きつけようとしたように、奈々も想に、想と紬に待ち受ける困難、聴者と聾者の壁、現実を突きつけているようだった。そして、かつて孤独だった想に、自分と同じだと安心を与えてくれた奈々が「私も想君もあの子も、誰も分かり合えないね」と言うのだった。
 
 そのあとの奈々と紬のやりとりは、ずっと涙が止まらなかった。ハンドバックを持っていたら、手をつないでいたら、好きな人と会話(手話)ができなくなってしまうこと。好きな人に電話をして、耳に電話を押し当てても声が聞こえないこと。「どんな声?」と聞いてみても、どんな詳細に説明されたとてそれは想像の域を超えないこと。好きな人の声を聴いて、話したいだけなのに、どうしてそれが叶わないんだろう。紬には非はないのだけど、やり場のない怒りをぶつけずにはいられない。

 最後の回想シーンで、想が自分の手話は「奈々にだけ伝われば良いから」と言う。でも、もうその手話は、奈々と想だけのものではなくなってしまった。想はその手話で紬と話すし、これから想の世界はもっと広がるのかもしれない。
 奈々は想に、音のない世界で生きる楽しみを教えてくれた。これは、友情とも愛情ともラベリングしがたい、二人だけの深く狭い関係性なのだと思う。だから、想は奈々を「すごく大事な人」と言う。二人に共通するのは、深い孤独だ。だからこそ共鳴できたし、二人でいることに意味があったのだと思う。奈々は、そんな孤独な想を、繋ぎとめておきたかったのかなと思う。
 
 次回からはどうなるのだろうか。毎回、予想を超えてくるので、ハードルが激上がりである。

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