デ・キリコ展に行く

4月末日、東京都美術館で開催中のデ・キリコ展へ行ってきた。

開幕してすぐであったので混んでるかと思いきや、そこまででもなく、じっくり見ることができた。
ということでぽちぽち感想を書いてみたい。

ちなみに解説文は真剣に読んでないので、ぼんやりとした記憶と直感のみの感想です。公式HPで確認できるところは頑張って補足してますが、誤りがあったらごめんなさい。


ホッパー的な光

最初は〈SECTION1 自画像・肖像画〉のコーナー。あんまりピンと来ず。上手いけど、みたいな。さらっと見て次へ。

続いて〈SECTION2 形而上絵画〉のコーナーへ。ここにお目当てがあった。
《バラ色の塔のあるイタリア広場》という作品。そもそもこの展覧会に興味を持ったのは、宣伝メールの中にあったこの絵の光の具合にエドワード・ホッパーを感じたからであった。
そんなわけでこの絵は公式HPにも載っているので、是非。

ちなみにその隣にあった《大きな塔》(だったと思う)という、縦構図の作品はよりホッパー的な光を感じられてとても好みであった。これは物販コーナーに絵葉書やらポスターやらもあったので欲しくなってしまった。

うぞうぞ

さらに進むと〈形而上的室内〉なるシリーズのコーナー。この辺りから三角定規が多数絡まるイメージが頻出してきて、「いやー…色んな意味で尖ってんなー」とか思いつつ。
こうした何かしらが集合した「うぞうぞ」にまず目が行き、そこから視野を広げると余白ともいうべき空間が広がっていく。「うぞうぞ」によって画面のどこかに重心が片寄り、アンバランスな構図になっている。これがとっても個性的。

水浴シリーズ

続いてはやや脇道に逸れて?〈TOPIC1 挿絵ー〈神秘的な水浴〉〉というコーナー。しかしここがひときわシュールで一番刺さった。
塔の絵画がわかりやすいけれど、ここまで見てきた絵画はわりと力が上へ上へと向かっていくような感触があった。しかしここに描かれた男性らは目線が下を向いていたりして、こういう風に重力が下に向いている方がどうにも性に合うなと思った。
どこか近年のジョジョ的な線の細さにも親しみを覚えつつ。普段は鉛筆画は流し見してしまうことも多いんだけれど、今回はガッツリ堪能したなという印象。

マヌカン

そして〈マヌカン〉なるシリーズのコーナー。要するにマネキンのことであって、モノとしての人、人の形をしたモノ、ということを表現しているらしい。
これが代表的なシリーズということで、確かにインパクトがある。公式HPどころかメインビジュアルにもなっているので、気になったら見てみてください。

これらもまた「尖ってんなー」と思いつつ見ていたら、不意に《南の歌》という作品が目に飛び込んでくる。暖かな色彩で描かれた、身を寄せ合う二つのマヌカン。これだけがとても柔らかなタッチで瞬く間に引き込まれてしまった。
《南の歌》も公式HPで見られるが、この感動は実際に順を追って見ていかないと味わえないと思う。

縦構図

その後彫刻を挟んで〈SECTION3 1920年代の展開〉というコーナー。
ここでは《谷間の家具》という作品が一番印象的であった。ここまで見てきて、個人的にはデ・キリコは縦構図の方がいいなと感じていて、先にも述べたがやっぱり上へ上へと伸びていく感覚が良いんですよね。絵画だからこそ表現できるしなやかさがある。それが最も感じられたのが《谷間の家具》だったかなーと。

アニメーション

続く〈SECTION4 伝統的な絵画への回帰ー「秩序への回帰」から「ネオ・バロック」へ〉のコーナーは、正直全然響かなかった。
題の通り、ルネサンス期やバロック絵画を研究して描いた作品群とのことで、まぁふつーに上手いんだけど、あんまり面白くはないというか…。
伝統的な絵画の知見があればもっと楽しめたのだろうか。しかしまぁ、だったら単純に当時の絵を見たほうが良くね?とか思ってしまうのでした。

とはいえ伝統的な表現の中、あからさまに現代っぽい描き方がされてる箇所もあって、そういうちょっとした齟齬が面白いのかもしれない。

そして舞台美術を手掛けてもいたとのことで、そういった衣装を見つつ、ラスト、〈SECTION5 新形而上絵画〉のコーナーへ。
結構最近の作品が立ち並ぶ。アンディ・ウォーホルも誉めた(と解説されていたはず)とのことで、これまでと比べるとだいぶポップになっている。ただ「うぞうぞ」であったり、開いている扉や片足だけ乗せる石等、デ・キリコ印とも言うべきモチーフの数々は健在。
そしてこれまでも感じていたが、ここまでくるとかなりアニメーションチックではあるよね。私はアニメーションには疎いのだけど、好きな人にはきっと刺さるんじゃないかと思った。


というわけでザックリ1時間半ほど見て、日暮里方面を散策して帰った。

あーあ、カタログ買っとけばよかったかなぁ。

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