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『君たちはどう生きるか』を鑑賞して、考える🪽

公開前に明かされた情報は、〝タイトル〟と〝ポスター〟のみ。
一切の広告を行わず、2023年7月14日に公開された。
同時に声優さん、主題歌も明らかになって、話題のジブリ作品に。
10年ぶりの宮崎駿監督作品ということもあり、注目度は高い。

どんな作品なのか、自分で鑑賞して感じたいと思い、劇場へ。

1日の最後の1本なのに、劇場の席はほぼ満席。
注目度の高さを実感。


見終えた後は、一言でいうと〝難しい〟けれど頭を抱えるような難しさではなく、何となく伝えたいことが分かるようなモヤのかかった難しさ☁️
捉え方や感じかたは、この作品に触れた人だけの数があると思う。
なので、私が感じたことや考えたことを伝えたいと思う。

ストーリーは、主人公の眞人の母親(ヒサコ)が入院中の病院が火事になり亡くなってしまうところから始まる。
時が流れ、眞人の父親(ショウイチ)がヒサコの妹(ナツコ)と再婚。
ナツコの暮らす田舎のお屋敷へと疎開。

時代が戦争中であることがわかる始まり。
戦争中というと貧しい生活をしている印象が強いが、ショウイチが武器を作る工場で働いているため裕福な暮らしをしている。
作品中には戦争のシーンはないが、時代が今から75年くらい前であることがわかった。
お屋敷は、洋式の家具やインテリアも入っている大正ロマンを感じる。
長く仕えるおばあちゃんたちの個性が特徴的。
宮崎駿監督作品のおばあちゃん像は、何とも愛くるしい👵


ナツコは、眞人のお母さんとして接するが、中々こころを開くことができない眞人。
新しい学校にも馴染めず、いじめられてしまう。
自ら石で頭を傷つけるという始末🤕
そんなときに、アオサギが眞人の前に現れる。
ことばを話すアオサギは、眞人のお母さんは死んでいないと話す。
アオサギから真実を聞こうと、弓矢を作り、アオサギを捕まえようとする🏹

アオサギは、森に中にある1つの大きな塔へ。

都会の少年が、田舎の学校では何となく浮いてしまい、違うものを排除しようとする〝イジメ〟は今でもなくなってはいない。
集団という中では、無くなることはないことなのだろうか。
自ら怪我を負うことで、この孤独さ、苦しさに気づいてほしいという表れなのかもしれない。


ある日、ヒサコが眞人へ残してくれた1冊の本を見つける📕
タイトルは『君たちはどう生きるか』
この本を読み、涙する眞人。
そこから、眞人は変わっていく。
と、同時に突如、ヒサコが姿を消す。

この本の内容までは、明かされていないけれど、眞人は1つの決断をする。
塔の中へ進んでいき、ナツコを連れ戻すこと。
なぜいきなりナツコへの想いが変わったのかは描かれていないけれど、本を通して、新たな環境や家族、自分自身を受け入れる覚悟ができたのかもしれない。

大きな塔は、下の世界(異世界)と現在を結ぶものとして存在し、幾つもの世界や時間に通づる複数の扉、飽和状態に苦しむインコ、生命誕生前の〝わらわら〟などが登場。
そしてこの塔の創造主は、眞人の大叔父で、眞人を呼んでるという。
塔の中の世界で、眞人は少女時代のヒサコと出会う。
一緒にナツコを探し、大叔父に会うための冒険が繰り広げられる。
的だと思っていたアオサギ(中身はおじさん)とは冒険のパートナー、友達となっていた。


下の世界で起こることは、今現代が抱えている問題をジブリ作品らしくファンタスティックに描いている。
大量のインコが眞人たち人間を襲い、エサとする。
命の重さを考えず、強いものが弱いものを排除、力のある者が何も関係ない人たちを巻き込んで亡き者とする。
そんな今起こっていることがすぐそこまで襲いかかっているような鳥肌が立つ怖さを感じた。

下の世界で育った白い〝わらわら〟が、上の世界へ上がっていくが、鳥に攻撃にされ、ほとんどが上の世界へ行くことができない。
この〝わらわら〟は、命になる前の物体で下の世界でも大切にされている。
命の儚さ、尊さを訴えているのではないだか。
重いテーマをジブリ作品の特徴でもあるキャラクターでファンタジーな世界観を創り出している。

大叔父は、積み木を重ねて、下の世界を守ってきたが、それが今にも崩れてしまいそうなくらいグラグラ。
血を引く眞人にその役割を預けたいと。
このグラグラの積み木の世界は、まるで現代。
戦争、環境問題、貧困、感染症などの世界的な問題から災害、格差、差別、政治不信、物価高など個人レベルまで問題と不安なことばかりが積み重なっている世界。
1つの問題を解決できないまま、最悪なことには隠ぺい、なかったことにされる始末。
グラグラの積み木は、あと指一本触れたら崩れ落ちてしまうほど脆弱な今を訴えているように感じた。

眞人は、大叔父の後継とはならず、下の世界ではなく、元の世界に戻り、生きていくことを決断をし、塔の扉を開ける🚪

この作品は、最後のシーンまで、問いかけも答えも出てこない。
それなのに、何かを伝えようとしている。
答えのない問題ばかりのこの世界でどう生きていくか。
言葉にしたら重いことを、アニメーションの力でやさしく、力強く問いかけている。

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