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オススメ映画「ザ・クリエイター/創造者」~壮大なSF傑作になりかけました~

 監督のギャレス・エドワーズは、日本の山崎貴監督同様に視覚効果と言うか VFX畑から監督に昇進し、お2人とも「スター・ウォーズ」を観て衝撃を受け人生を決めたとか。だから「ゴジラ-1.0」とほぼ同様にVFXは流石に素晴らしい、けれどストーリーテリングに若干難ありってとこでしょうか。本作の脚本も兼ねてますし、ギャレスの出世作は「GODZILLA ゴジラ」ですものね。

 これほどの独創的大作なのに、今一つ興行的に盛り上がらず本国も日本でもスルー同然の勿体なさ。私ども日本人からすればニューアジアなる地域のそもそもが怪しい設定にひっかかる。明らかにベトナムをベースにチベットそして東京が混在する未来のアジア。そもそもが「ブレード・ランナー」での近未来のアイコンとしての雨のネオン街が構築されたのも、技術革新著しいかつての日本があったから。残念ながら停滞どころか凋落局面に入ってしまった現在の日本の様々な現実からの乖離が甚だしく、殆ど冷や汗もの。その上でアメリカがAIを征伐しにベトナム戦争をなぞるなんて厭らしさが前面に立つ。

 近頃のアクション系の映画においてはAIなどが悪の組織に渡らぬよう、が命題となるか、AI自身が暴走しヒールと化すかですよね。当然に本作は後者で、AIの暴走によりLAが核による壊滅となり、もはやAIは人間の敵の位置づけ。なのにニューアジアにおいてはAIと人間の共存がなされ、さらなるAIから生み出される創造物まで登場する。何より、AIの進化をコントロールできなかった人間が最も悪いにもかかわらずの根本が蔑ろにされてるのが困ったもので。ひょっとしたらニューアジアで共存出来ているってことは、アメリカのAIよりもAI自身が進化していたから、なのかも知れないのに。

 こうしてみると極めて自虐的なロジックでアメリカを描いているわけで、本国の皆さんも違和感たっぷりだったのでしょうね。そこでさらに主演がジョン・デビッド・ワシントンってところが尾を引いてるような気がします。言うまでもなく「イコライザー」で今も現役バリバリでオスカー2度受賞の名優デンゼル・ワシントンの息子なんですが、どうも父親程の魅力を感じられないのですよ、本作においても彼の戦うシーンなんて数える程で。黒人だからでなく、ウィル・スミスなら全然OK、アンソニー・マッキーならカッコイイ。要するにジョンには華が無いのですよ、見た目も演技も。そんな彼が米国の先鋭として主役を張り、命令に背くってんですから面白くないよね。

 この主役の愛する人がアジアン・ビューティーであるジェンマ・チェン、要のAI・アルフィー役がアジアの女の子、と言うより幼子に見える。そして侵攻側の米軍リーダーに「アイ・トーニャ」のアリソン・ジャネイが強気一辺倒の鬼軍曹のよう。この3人とも素晴らしい演技を披露しているりに、汚らしい髭面のジョンには勿体ないですよ。渡辺謙は日本語でも喋り観客は不意を突かれます。

 とは言え、圧巻のビジュアルが素晴らし過ぎ、壮大なハンス・ジマーの響きとともに価値は十分にある。ノマドの造形なんぞ、よくぞここまで発想出来るもので、と感服です。ディズニー傘下となった20世紀スタジオ(旧・フォックス)で、コンスタントに新作が続き嬉しい限りですが、どうもディスニー全体からみて20世紀の作品を売り込もうって意欲があまり感じないのが寂しい。マーベル作品であれば八方手を尽くして売り込むのに。気のせいでしょうか?

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