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オススメ映画「ボーイズ・イン・ザ・ボート 若者たちが託した夢」~爽やかなレースシーン以外にまるでドラマはなし~

 МGМの新作ですがAMAZON傘下なのでアマプラ配信のみ、しかも監督がジョージ・クルーニーなのに。シンプルなスポ根ものですが、水面を滑空するようなドローンでの撮影シーンの爽快感は大画面でこそ生きるのに。1936年開催のベルリン・オリンピックに出場したボートエイトの奮闘談。

選考会に勝ち残った8人

 品格ある戦前の大学生が主役で、タトゥーも一切なく美しい筋肉美を背景に友情と葛藤を描き「炎のランナー」のボート版かと思ったら、さしたるドラマはほとんどない。無論メインのカラム・ターナーをメインに彼女との絡みやコーチ役のジョエル・エドガートンとの確執も多少描かれるが波風はさしてない。

 それどころかメインの3つのレースシーンの総てで勝利を収めるなんて作劇はちょっと映画ではあり得ない。現実の出来事なんだからその通りでしょうけれど、紆余曲折の脚本の工夫が欲しかった。選考会の基準、一軍との比較、穴の空いた靴も活きず、ボート管理のプロフェッショナルとの親交、実の父との確執、資金難、補欠との入れ替え、一番手の病気、コース選択のトラブル、スタートを認識出来なかったアクシデント、などなどいくらでも緊張を孕む作劇が出来たのに、サラリと描いて何となく収束してしまうのは残念。

センターが社主役のカラム・ターナー、普段はダークヘアですが

 さらにヒトラーの国際宣伝と化したこのオリンピック大会への批判軸はまるでありません(いつの時代もオリンピックとは政権の宣伝にしかならない)。ただ、一位を獲れなくてヒトラーが一瞬で踵を返す描写のみ。レースの前半は力を温存し後半に爆発させ破竹の勢い、なんて戦法は誰でも思うわけで、カリフォルニア大やらアイビー・リーグの各校との戦術の違いもまるで判らず何故勝ったのか?肝心ポイントがいい加減なのは致命的。

 しかし、水面を舐めるようなレースシーンの描写は実に清々しく、30年代の恐慌時の荒れた雰囲気から、当時のアッパーサイドの人々のファッションも含め、観るべきものは多い。東海岸でのレースでは岸辺を走る鉄道線路を利用して観客を満員に乗せた観戦列車が並走するなんて贅沢にはびっくりです。多数の観客も含め、大掛かりなロケーションに映画としての品格もたっぷりです。

立っているのが本作唯一のスターであるジョエル・エドガートン

 結局役者達の演技のポイントもさしてなく、リアルに疲労困憊をそのまま画面に収めるのみ。コーチ役のジョエル・エドガートンはお気に入り役者ですが、ちょいと勿体ないレベル。歳は違いますが彼って野村周平に似てると思いませんか?

 例によって、エンドタイトルで実際のエイトの面々の写真が掲示されます。しかし、驚くほどに皆痩せていて、現在の男性の筋肉の付き方とまるで違う事に驚きます。

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