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『ティム・バートンのコープスブライド』がツボすぎて墓までもっていきたいので分解してみた話

お気に入りの映画って誰しもあると思う。私の最推しの作品がティムバートン作品。彼の独特の世界観が好きって人たくさんいるでしょ?私もそのひとり。出来れば棺桶に入れて欲しいほど。

そんなお気に入りの作品をプロットに分解してみたよ。

起承転結

まずは起承転結から。

起(何かが起こる)
商売が成功し貴族という名声が欲しい主人公のヴィクター青年の両親と貴族だがお金のない花嫁ヴィクトリア家の利害一致による政略結婚が決まる
内気な主人公は、結婚式の予行練習で失敗続き、両親に叱責される
森で誓いの言葉を練習するヴィクター。木の枝だと思って指輪をはめたが、実は死者の花嫁エミリーで、うっかり結婚してしまう
エミリーは結婚の直前に殺されてしまった憐れな女。結婚への執着が半端ない。
そのまま、死者の国へ連れていかれる

承(物語が発展する)
死者の国は現世と違って明るく、楽しい人ばかり
なんとか戻りたいヴィクターは『両親に挨拶しよう』と現世に戻れる薬を使ってエミリーと共に地上へ
その頃、ヴィクターがいなくなり探し回る
政略結婚は嫌だと思っていたが、ヴィクターとならと心寄せ始めるヴィクトリアの元へヴィクターが死者の国へ連れていかれたと言いながら現れる
これを見たエミリーは浮気だ!と死者の国へヴィクターを連れ戻す
ヴィクトリアは両親にこのことを離すと頭がおかしい子だと思い閉じ込められる
一方で、花婿が行方不明だと言うことを聞いて一人の貴族の男バーキスが代わりに自分が結婚すると申し出る

転(どんでん返し)
死者の国に帰り、嘘つきと罵るエミリーだが、ヴィクターは地上へ帰らなければならないと奮起する
その時、偶然死んでしまったヴィクターのお付きメイヒューが現れ地上の様子を知る
ヴィクトリアが別の男と結婚するのを聞いてヴィクターはエミリーと結婚することを決意
死者であるエミリーと結婚することは、ヴィクター自身も死ぬということ
地上では、ヴィクトリアとバーキスは結婚する
エミリーとヴィクターはせっかくだからと地上で結婚式を挙げることを決意

結(終わり)
しかし、エミリーはどうしてもヴィクターを死なせたくない
こっそりのぞいていたヴィクトリアを招き入れてヴィクターと結婚するように促す
そこへ現れたバーキス。持参金目当てで結婚したのでお金さえ払えばヴィクトリアを離してやると言う
しかし、バーキスは実は結婚詐欺師で過去にも何度も同じことをしていた
そして、エミリーを殺した犯人だった
バーキスは、ヴィクターが飲むはずだった毒薬を知らずに飲んで死
エミリーの無念を知っている死者たちは、地下へ連れて帰った
バーキスの死と、心優しいヴィクターと結婚式の真似事が出来たことに満足して、エミリーは成仏する

せつねぇぇぇ!!!!
まず、死者の花嫁切なすぎるでしょ。結婚を約束した人が詐欺師で、殺されてしまい、死んだ後も結婚を夢見てる……。もうこの設定で涙腺崩壊。
彼女の行動目的は明確→結婚式を挙げたい、結婚したい、生きているうちに果たせなかった夢をかなえたい
でも、気づいた。自分が死んでも望んだ結婚をすることで、ひとりの関係ない女が不幸になるということを。自分と同じように、結婚で悲しい思いをする人を増やしてはいけないと。

叶えてあげて、ほんとに。

主人公ヴィクターは、気の弱い両親の言いなりの男の子なんだよなぁ。この優柔不断な感じはイラっとする。ジョニー・デップが声をやってるんだけどおどおど感うまいなぁ……好き。
しかし、主人公ヴィクターの目的は読めない。というか優柔不断な性格だからそれでいいのかな?何がしたかったのか、わからない。エミリーとヴィクトリアの間でふらふらしている。ヴィクターも所詮、政略結婚でヴィクトリアに対して愛なんてなかったと思うのね。なのに、必死に地上に戻らなければと言ったり、簡単に諦めてもう死者の国で暮らすとか言ったり……。こんな男いやだなぁ。
でも、これ一種の警鐘なのかな?最近の意見を持たない若者よ、もっと主張せよって言う。そう考える、とあえて目的を持たせなかったのかな?とも読み取れる。

花嫁のヴィクトリアは、いいね。父と母を見ていると、結婚が良いものだとは思えなかったけれど心優しいヴィクターが結婚相手で両親とは違う『愛する人と幸せな家庭』が築けると前を向いている。突然現れたバーキスではなく、なんとしてでもヴィクターを助けて彼と結婚するという目的が見える。

バーキスはひたすらに悪役。結婚で得られる持参金目当てで、詐欺を繰り返していた悪党。すがすがしい悪党。最後は死ぬし、海外らしい順当な悪役。

全体を通して、テーマというかティム・バートンの風刺がかなり効いていると感じる。老婆心というのかな、こんな世の中になっちゃってまぁ的な。
没落貴族、政略結婚、成金が権力を求める構図、地上の人たちの生気の無さ。死者の国と比べると、青白く色のない世界で淡々と目の前のことを繰り返す日々。人々の死んだ魚のような目。今の日本にも通じるものがあるね。長時間労働で生気の無い人たち。何を希望として生きているの?それすら考えられない世界。

反対に、死者の国は明るく人々も陽気で楽しい連中ばかり。やりたいことを好き勝手やってる世界。メイヒューっていうお付きが途中亡くなって死者の国の住人になっちゃうんだけど、彼はお気の毒って言うヴィクターに『かえってすっきりした』と言うんだよ。生きていた世界に特別、未練が無いと……。その時点で、おかしいだろ、死んでから好き勝手できる世の中なんて!というティム・バートンの声が聞こえる気がする。

しかし、高望みをするならば、もっとヴィクターとヴィクトリアが愛し合う感じ出して欲しかったな~。胸キュンが足りないのよ。だから、ヴィクターの行動目的もイマイチだし。枠の問題もあるだろうけれど、もっと二人が接近するエピソード、風が吹くとか水に溺れるとか、とういうのが見たかった。

それでも、この作品はこんなにも愛されている!というか愛している!!!彼の世界観とクレイアニメ技術、そして音楽。

プロットの文章技術もあった方が良い。高度なことにこしたことはない。しかし、人の心はそれとは別の何かで動くのだよ、ワトソン君。

あああ!やっぱり、人の心を動かせる文章が書きたいです、安西先生……。




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