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2020年のネット広告関連で予測される10のこと~ネットの「マス化」とは?

こんにちは。滝井(@hidenoritakii)です。
2020年のネット広告に関連して予測される(ほぼ確定未来の)ことを10個ほど上げてみます。確定している未来があるのなら、機会(チャンス)は最大に、損失(ピンチ)を最小にすることができますからね。

1、ネット広告がテレビCMとの差を開いていく

2020年はまず、ネット広告費が、テレビCMを大きく引き離していく年になります。
2018年合計で、ネット広告費(媒体費+広告制作費)=1兆7,589億円、テレビメディア広告費(地上波テレビ+衛星メディア関連)=1兆9,123億円で、ネットは110%以上、テレビは100%未満の成長は確実なので、結果はまだ出ていませんが2019年の総計ですでにネット広告費はテレビCMを抜いているはずです。
※日本の広告費2019年が3/11に発表されました。
2020年のネット広告はさらにこの差を開き、おそらくプロモーションメディアも抜いて、日本における広告媒体としてはトップとなります。
これがいわゆるネットのマス化現象です。
いままで、世の中を情報の大部分を動かしていたのはテレビや新聞でした。なんだかんだ言ってもネットはしょせんマニアックな世界だったのですが、2020年からは名実ともにトップの媒体になる、つまりネットがマス媒体になるわけです。
実は、昨今のネットの動きのほとんどは、このネットのマス化が引き起こしているといっても過言ではないです。これは後述していきます。

2、検索広告が王座から2位に。群雄割拠時代へ

長らくネット広告は運用型広告の筆頭である検索広告がキングでした。しかし、2018年時点ですでに40%を割っていて、ディスプレイ広告に肉薄されていたので、2019年の結果はまだですが、すでに王座から陥落していることは確実です。

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2020年は、この傾向は顕著になっていることでしょう。ただし、これは「検索需要が少なくなっている」ということではなく、単純に「他が増えている」ということになります。とくにヤフー・Googleのディスプレイ領域は当然ながら、SNS(Facebook、Twitter、Instagram等)と動画メディア(Youtube、TikTok等)の躍進は顕著ですね。
検索という一つの広告手法に対して、あらゆる媒体のディスプレイ枠が総がかりでようやく超えられるようになったというだけですから、今後も検索広告は最も重要なネット広告でありつづけるでしょう。
ネット広告でビジネス成果を上げるには、検索広告をしっかり行ったうえで、ディスプレイ広告やSNS広告、動画広告などにチャレンジしていくのが大事と考えられます。
いままでコンバージョンが取りづらかったディスプレイ枠が変化してきたのも、ネットのマス化のひとつといえます。

3、ヤフーとLINEの統合

2020年に確定している未来といえば、ヤフーとLINEの統合がありますね。
ネットのマス化は日本だけなくグローバルで起こっていることで、GoogleやFacebook、あるいは中国企業ネットメディアがすさまじい規模感になっていて、これに対抗する合併なわけで、彼らも必死なんですよ。
経営統合の完了は2020年10月ということですから、ちょい先のようですが、すでにいろんな動きがはじまっています。
特にヤフーの広告部門はLINEとの統合が発表される前後から人事面でも大きな動きがあったり、広告プラットフォームが新しくなったり、純広告の枠もほぼすべてクリック単価で広告が出せるようになるなど、挑戦的な動きが活発です。
これらはヤフーの広告を出す側(広告主や代理店)からすると、広告媒体先が統合されるというのは何も悪いことはなく、1対Nのレバレッジがかけやすくなる恩恵が大きいと断言できます。特にディスプレイ広告のアルゴリズム変更はコンバージョン増加に寄与しそうです。
LINEとの統合で、広告プラットフォームを統合するかどうかは、すでに喫緊の課題になっていると推測されますが、すでに伸びつつあるLINE広告が、どこまで伸びるか期待したいですね。
ヤフー広告、LINE広告は積極的にテスト配信しつつ、ヤフーやLINEの広告関係者とコミュニケーションを取ったり、彼らが主催するイベントに参加したりして最新情報入手していくといいでしょうね。

4、AI化はますます進む

ネット広告の自動化の取り組みは、Googleを中心にすでに10年以上前から行われていたものですが、長らくは実際に人の手によるものの方が高い効果を出してきていた経緯(要するに使い物にならなかった)があります。
これが大きく変化したのが2017年ころからで、2019年はそれが大きく花開いた年ともいます。AIはデータ量がなにしろ大事なのですが、ネットのマス化にともなって、有効なデータ量が確保されてきた背景があります。
GoogleやFacebookが引っ張っているAI化・自動化は、今後増えることはあっても減ることはないでしょう。
ただ、結局自動化といっても、予算とコンバージョン目標だけいれれば全自動でお客さんを適正なCPAで連れてきてくれるわけではありません。
これは自動運転の現状と同じで、とてもじゃないけど機械にまかせっぱなしなんて無理なわけです。ましてや広告というビジネスで用いられる領域は、車の運転と違ってプロがライバルと常に競争をしている世界です。
どの媒体の、どのメニューでどのような自動化を使うのか、どうAIを使いこなすのかは、広告運用をするマーケターの新しいスキルになっていくことでしょう。なんといってもGoogle広告の自動入札だけでも7~11もの種類があるのですから、自分やチームにとってのスタンダード(標準的なやり方)を定義するのが第一歩ですね。

5、画像や動画の重要さと量が増す

広告にはクリエイティブがつきものですが、長らくネット広告は、テキスト(文章)が中心でした。これは当たり前ですが、ネット広告のほとんどを検索広告が占めていたからです。
検索結果はシンプルであるべき、というGoogleの哲学が生きているため、いまだにGoogleの検索広告は、画像や動画をいれることができません(一部スマホに昨年はじめて入るようになった)。
これが最近は相対的に検索広告以外の、ディスプレイ広告、SNS広告が増え、ここには主に画像が使われますし、5Gの開始とともに動画は見られやすくなるのは確実です。
また、AIはとにかくデータ量を欲しがります。いろんなクリエイティブをAIに渡してあげないと機械学習が進まないので、ネット広告における「画像・動画のクリエイティブ量の増加」は必然です。
広告運用において、広告予算をどのように投資配分するかという数字を使った最適化のスキルと、クリエイティブのスキルは基本真逆の方向なので、どちらも得意、という人は原則いません(不得意を熟練させることは可能)。
クリエイティブ担当を置いてチームで戦うのか、自分でどちらのスキルも使えるるように発達させていくかは、広告運用者が決めていく必要はあるでしょうね。

6、新しい広告媒体の台頭

ネット広告(運用型広告)は、Google、ヤフー、Facebook(Instagram)が三強としていまだに優れた広告プラットフォームですが、LINE広告は大きなシステム変更でコンバージョンが出るようになっていますし、TikTokは媒体としてのユーザー数は大きく伸びていますので、2020年はこの両媒体が台頭してくる可能性は十分ありますね。
また、新しい媒体ではないですが、全世界で16%以上ものシェアを持つTwitterは日本だけが成長率も高く、20代の利用者も多い(新規登録が増え続けている)のは特徴的で、見逃せません。
Instagramがきれいな世界(ファッション、コスメ、グルメ)の検索にニーズがあるとすれば、Twitterは匿名アカウントによる清濁併せ持った「本音サーチ」に明確な需要があり、広告媒体としても伸びる可能性はあると思います。
Twitterが日本で伸びている背景はいろいろありますが、何しろ震災や台風といった自然災害の猛威の影響は大きいでしょうね。
こういった緊急事態時にもっとも強いのがTwitterで、自分たちの生命を守る情報を一番にくれるのですから、ヘビーユーザーが増えるのも当然かもしれません。

7、ツール進化でLP(ランディングページ)改善が増進

ネット広告で集客を費用対効果よく行うには、LP(ランディングページ)の改善によってコンバージョン率を上げて、CPA(顧客獲得単価)を良化させていく必要が常にあります。
広告によるコンバージョン率のコントロールよりも、LP改善の方が基本的には影響ははるかに大きいんですね。
ただし、これまでLP改善というのは、経験と知識、デザインセンスなどとても属人性が高い世界で、かつPCとスマホ両方の仮説検証をおこなっていかなければならないということで、継続的に成果をあげるのが難しかったんです。
特に、マーケターが仮説を決裁者に承認を得るために、その根拠を納得してもらうが一苦労なのですが、昨今はLP改善のツールがスマホ対応は当然としてとても安価に、とても使いやすくなって、決裁者説得が極めて行いやすくなりました。
2020年はこの動きはさらに加速していくと考えられます。
具体的には、Googleアナリティクス以外に、
・ヒートマップツール(熟読率・スクロール率・タップ・クリック解析)
・EFOツール(フォーム離脱率、項目エラーなど解析)
があれば、コンバージョン率をあげることができる可能性は飛躍的に高まります。
広告運用が自動化して効率化した分、AI化しにくいLPの最適化の仕事が活発化することは、2020年の潮流になることは間違いないでしょう。
おすすめとして、ヒートマップツールとしては、1URLなら無料で使える大盤振る舞いのミエルカヒートマップ。中小規模サイトならこれで十分な高機能です。
もう一つは、ヒートマップ、EFO、録画(全ユーザーの動きが個別に見える)がすべて使え、かつセグメント分けが瞬時にできるクリックテールです。こちらは間違いなく地球一すばらしいLP改善ツールですが、少々お高いので大規模サイトもしくは月額広告費が1千万円以上などのケースで検討するとよいと思われます。

8、SaaS中心のBtoBマーケ拡大

2019年にネットのマス化によって、市場が発達したのがSaaS中心のBtoB(法人向けビジネス)のマーケット。
今年中に全世界でのSaaSの市場規模は9.7兆円にもぼり、日本でもすでに5千億円以上、2023年には8千億円以上のマーケットになっているそうです。
BtoBの商品サービスは、検索キーワードになりにくいものも多く、特に新サービス新商品は長らくネット広告で苦戦を強いられてきました。
これが、Facebookによる法人ターゲットが主な潮流となり、ディスプレイの興味関心ターゲティングも法人向け分野で成果があがりやすくなってきたんですね。
SaaSのよいところは、なにしろスケールメリットを出しやすいところと、顧客のLTV(生涯価値)が高いところ。高い粗利があれば、広告費への再投資もしやすく、事業規模拡大の波に乗りやすいですね。
一方で、特定の検索キーワードでしか顧客を獲得しにくかったBtoBビジネスも、ディスプレイ広告の興味関心ターゲティングでコンバージョンを獲得できるケースも増えてきました。
2020年はこの動きは加速化すると思われます。

9、固有名詞検索の重要さ

2019年は、固有名詞(会社名、人名、サイト名等)検索とその自然検索結果の重要性が再認識された年でもありました。要するに「評判検索」です。
Twitter、Googleで口コミ検索すれば、ユーザの生の声がやすやすと拾える時代。いくら広告とサイト制作、LP改善に力注いで認知させても、購入判断をする前に検索をして、既存ユーザーの生の声が低評価だったりすると、気になってコンバージョンしてくれないんですよね。
特に、Googleマイビジネスの評価は、会社名でもしっかりついてくる時代になりましたので、影響は小さくありません。
これは単純に企業がSNSで情報発信しよう、といった話ではなく、あらゆる方面に対して、誠実さや隙のないビジネスをしていく必要があるということだと考えられます。
そもそもの商品サービスの価値が、UGC(ユーザーが作るコンテンツ)で簡単に出回ってしまう時代ですから、広告とサイト制作を中心としたマーケティングだけがんばってもだめなんですよね。
もちろん、よい印象を持ってもらうためのブランディング、デザインは当然これまで以上に重要になる2020年であることも間違いありません。

10、ネット広告規制の論議活発化

これまでも医療広告ガイドラインや薬機法に関する広告の規制は、本来の法規制以上に、ヤフーやGoogleの媒体審査が厳しいといった事象もよくありました。残念ながらネット広告に関しては、これらの領域以外も、2020年はさらに様々な規制が強くなることは間違いありません。
これは前述のとおり、ネットがマス化したことが最大の要因です。
2020年の今年には、広告におけるトップが名実ともにインターネットになるわけですから、立場が弱者から強者に見られるということです。当然、社会からしっかりした振る舞いを求められます。
例えばいままで広告業界のキングだったテレビCMには、考査という独特の審査システムがあります。当然、全国版の民放でテレビCMを出そうとするなら厳しい審査があり、審査期間も1か月以上かかることもあります。これはネット広告の厳しさの比ではありません。
ネット広告はこれからは強者として、責任ある存在になります。たった10年前まではネットなんて怪しくてマニアックなカウンターカルチャーの世界だったのが、今では整然とした街並みで、正装して歩かなきゃいけないようなイメージですね。
昨年末には、Google、Facebook、Amazonが相次いで日本国内取引の納税を行うと方針を出しましたが、これもネットのマス化によって、求められた結果といえるでしょう。
ただ、規制といっても過剰に心配する必要はありません。例えばクッキーの規制によって広告が出せなくなるようなことはないんですよ。すでに欧米ではクッキーの同意に関して当然のようにサイトのポップアップで出てきますが、同じことをすればいいだけです。

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↑ NFLネット放送のクッキー同意ポップアップ

また、よく規制によってマーケティングメッセージが弱くなることを心配する人も多いのですが、これは条件はみな同じなのですから、ルールの範囲内で正当に勝負すればいいだけです。頭を使えばできることはたくさんありますからね。

まとめ

以上、2020年に予測される10のこと、でした。総じて2019年に起こった変化の芽が拡大がされるイメージですが、ネット広告をはじめWebマーケティングは、相変わらず変化に富み、面白い世界だと思います。
変化は常にチャンス。みなで業界を健全に盛り上げていきましょう。大事なのはアクションです。

なお、検索広告以外でも、ディスプレイ広告やSNS広告の広いターゲティングでコンバージョンが獲得できる背景と方法論を下記オフィシャルブログで書いてますので、併せてご覧いただけたら幸いです。

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