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さよならピルエット。

虎ノ門ヒルズのフレンチレストラン、ピルエットが今月で閉店してしまうらしい。
シェフの小林さんから連絡をいただいたのはゴールデンウィークの少し前。
三十代の若手ながら、素材に対する深い理解と料理に対する真摯な姿勢が素晴らしく、毎回楽しませていただいていただけに非常に残念。
何とか閉店前にお伺いすることができた。

1品目:根セロリのヴルーテ

熱々のヴルーテでスタート。
艶やかでしっとりとした見た目が美しい。優しく香るフォンにどこかホッとする。
口当たりはどこまでも滑らかで、後に残る根セロリの香りが素晴らしい。
クスクスの食感が楽しさを添える。

2品目:ホワイトアスパラガスのサラダ

チャーミング!
ピンク色のスプーマはビーツで色付けをしたものに梅漬けを入れたもの。
スプーマを掬ってみると中からアイスクリームが出てきた。
アイス???
恐る恐るひと口。
全く甘くない。おとうふと塩のアイスクリームだそう。
そしてホワイトアスパラガス。
素晴らしい香り。
スプーマと一緒にいただく。
おー。梅の酸味がよく合う。
思わず微笑んでしまう楽しい組み合わせ。
アスパラソバージュも入っていたけど、食べるのに夢中で写真を撮り忘れた……。

3品目:萩の甘鯛のロースト、お茶漬け風

旬の鯛。
香りが素晴らしい。
フォークを刺すと皮目がパリパリパリと軽快な音を立てて崩れていく。
あくまでも身はふんわりと、でも皮はパリパリと。
丁寧な火入れ。
下に敷かれているのはグリーンピースと蟹のごはん。
春らしいグリーンピースの香りの後を追いかけて、蟹の香り、そして蟹のうま味。

半分食べ進めた辺りで出汁を投入。
鯛のアラ、日向夏、実山椒。
お皿に注いでいただいた瞬間から日向夏の爽やかな香り!
お出汁には鯛のアラからしっかりとコラーゲンが溶け出していて、まったり優しい口当たり。
甘鯛とごはん、お出汁を一緒にいただく。甘鯛がさらに甘鯛の出汁に包まれて、ふんわり口の中で広がっていく感じ。
鼻から抜けていく実山椒の香りがたまらない。
うーん……フレンチでこういう一品をいただけるとは。

4品目:千代幻豚のロースト

見て!この食パンのような厚み!
千代幻豚(ちよげんとん)は信州のブランド豚。
そのロースを3週間寝かせたものだという。
ナイフを入れた瞬間にびっくり。
肉が柔らかく、ほとんど抵抗なく刃が入ってしまう。
肉質は非常にきめ細かく滑らか。
そして特筆すべきは、この脂身の美味さ。
脂身なのにすごくあっさりとしていて、舌離れが良い。ギトギトして、ただ甘いだけの人工的な豚の脂とは全然違う。
味付けは最低限の調味料のみで非常にシンプル。それでも充分にメインとして通用する素晴らしい豚だった。
下に敷かれていた桜えびと新じゃがのガレットも季節感溢れる素晴らしい一品だった。

5品目:デザート ミルフィーユとバニラアイスクリーム

パティシエ武井さんのスペシャリテ、カラメルサレのミルフィーユとバニラアイス。
ミルフィーユの優しい口当たりに、優しい味付けのカラメルサレがマッチしている。
一方のバニラアイスクリームも控えめな甘さとしっかり感じる牛乳の味。
どちらかが主張しすぎることもなく調和が保たれており、非常にモダンな印象のデザート。
武井さんのお菓子はどれも優しい。

6品目:プチフール

名残惜しいけれど最後の一皿。
トリュフチョコレートとフィナンシェ。
最後の一皿まで抜かりなく美味しい。

食べ終わって思った

今回も楽しくインスピレーションに富んだお料理ばかりで、本当に楽しかった。
いつ訪問しても、どのお皿も個性的で驚きがあり、かつ確かな技術に裏打ちされた味が伴っているという、とても素晴らしいレストランだった。
お店としてのピルエットが無くなってしまうのはとても残念だけれど、小林シェフ、武井パティシエをこれからも追いかけて行きたいと思う。

小林シェフ、武井パティシエ、ごちそうさまでした!

Bon voyage, Messieurs! Au revoir! 

#食 #グルメ #フレンチ #虎ノ門 #ピルエット

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