雑誌について語るときに我々の語ること #女性誌研究
先日『ビジネス視点で考える女性誌のイマ』というイベントに行ってきまして、人生で初めてVERYを熟読してきました。
これでようやくぼくもVERY妻のスタートラインに立てました。
「おうち外交(ご近所ママを自宅に招待しもてなす会)」「サスティナママ(地球環境=サスティナビリティに関心のあるママ)」等々のVERYワード、駆使していきたいと思います。
ところで実は、ただVERY妻になりたいがために参加したわけではなく、
・社会の潮流・変化を読み解くための雑誌の読み方
・デジタル社会での雑誌というメディアの行く末
などなどについて考えを巡らせるために参加してきたので、せっかくですからその一部をご共有したいと思います。
まず、イベントの概要ですが、このイベントは2部構成になっていて、
・前半はオーナーの最所さんとLINE第一メディア局局長の桜川和樹さんの対談、
・後半は同じく最所さんと、食トレンド研究家の渥美まいこさんの対談でした。
後半の渥美さんのお話も面白かったのですが、なにぶん13時から17時までの長丁場でおなかが空きエネルギー切れを起こしてしまったので、前半の対談にフォーカスして気になったポイントを3つほど、ご紹介したいと思います。
また、その3点それぞれに(ぼくが・勝手に)参考図書をつけています。
アフィリエイトではないので、気になった方はぼくへの忖度なくお買い求めください。
1. 良い雑誌とはなにか。良い雑誌は人格を持ち、社会記号をつくる。
2. 良い記事広告とはなにか。良い広告は良いコンテンツである。
3. ビジネスに活かす雑誌の読み方とは
1. 良い雑誌とはなにか。良い雑誌は人格を持ち、社会記号をつくる。
現代はWebに答え(=情報)がある時代。情報それ自体は無料で手に入り、売れない時代には「人格」が必要、と桜川さんは語っていました。
雑誌の「人格」と言われてもピンとこないかもしれないので、ひとつ例を挙げます。
たとえば『東京カレンダー』。
その雑誌名を聞けばほとんどのひとが、港区に生息するプチブルジョワおじさん、通称「港区おじさん」を連想するでしょう。
この港区おじさんに代表されるような、“上流”とは一筋縄には言い難い、ある種のギラギラ感が『東京カレンダー』という名詞には付きまといます。
つまり、このようなその雑誌「らしさ」を「人格」と呼んでいるのです。
そういえば以前参加したCHOCOLATE.Incのセミナーでも、
本当の意味で人を動かすコンテンツとは、人格であり、人間味であり、作家性である、といった趣旨の話をしていました。
結局のところ、ひとは、企業や会社のように人間が希釈され最大公約数化した仕組みではなく、人間にしか共感し心を動かすことができないのかもしれません。
一方、社会記号について。こちらの詳細は『欲望する「ことば」「社会記号」とマーケティング』に詳しいですが、たとえばすでに上げたVERYの「おうち外交」、東京カレンダーの「港区おじさん」のように、社会的に生成され世の中一般に流通するようになったことば、を指します。
いい雑誌は社会記号をつくる。
これはある意味で正であるように思いますが、ぼくはこの「社会記号化」が持つある種の「下品さ」についてはもう少し注意を払うべきだと考えています。
先般の「カルチャー顔」騒動によって露わになったように、社会記号化はラベリングの一種であり、そこには意図のあるなしに関わらず「上から目線」感が伴います。
社会記号の「言い得て妙」と「炎上」の境目はどこにあるのでしょう。
少なくとも、
・容姿単体ではなく、ライフスタイルとして言及する
・固有名詞ではなく、精度の高いペルソナ(架空のターゲット)として語る
といった配慮は必要なのではないでしょうか
■参考文献
『欲望する「ことば」「社会記号」とマーケティング』(嶋浩一郎、松井剛、集英社新書、2017年)
https://www.amazon.co.jp/%E6%AC%B2%E6%9C%9B%E3%81%99%E3%82%8B%E3%80%8C%E3%81%93%E3%81%A8%E3%81%B0%E3%80%8D-%E3%80%8C%E7%A4%BE%E4%BC%9A%E8%A8%98%E5%8F%B7%E3%80%8D%E3%81%A8%E3%83%9E%E3%83%BC%E3%82%B1%E3%83%86%E3%82%A3%E3%83%B3%E3%82%B0-%E9%9B%86%E8%8B%B1%E7%A4%BE%E6%96%B0%E6%9B%B8-%E5%B6%8B-%E6%B5%A9%E4%B8%80%E9%83%8E/dp/4087210111/ref=sr_1_1?__mk_ja_JP=%E3%82%AB%E3%82%BF%E3%82%AB%E3%83%8A&keywords=%E6%AC%B2%E6%9C%9B%E3%81%99%E3%82%8B%E3%81%93%E3%81%A8%E3%81%B0&qid=1571648925&sr=8-1
2. 良い記事広告とはなにか。良い広告は良いコンテンツである。
自らを「雑誌オタク」と公言する最所さんが、いい記事広告と感じるものは、記事広告ありきの特集ではなく、特集ありきの記事(広告)になっているもの、とおっしゃっていました。
つまり、雑誌の記事を面としてとらえるのではなく、コンテクストとして捉えられているものは面白い、ということのようです。
これに対し桜川さんは賛同しつつ、ひとつの「難しさ」を語っていました。
それは、web上では記事はコンテクストから切り離されてしまう、ということ。
(最所さんはこれを「webはつまみ食い、雑誌は定食」と喩えられていました。)
このことはメディアがコンテンツと受け手のモードを規定することの一つの例として捉えるべきでしょう。
この点について桜川さんのお話しされていた例は2つ。
1つは「忍者赤影」という番組。これは白黒TVがカラーTVに移行したことにより、忍者が赤い装束を着ていたら目立ってしまう!という常識を逸脱したキャラ設定になっています。Wikipediaにもその点記載があり、真偽のほどは確かではないですが、本作はテレビ初のカラー時代劇で、三洋電機のカラーテレビを売るための電通の戦略だった、とか。
もう一つの例はアメトークに代表されるような「ひな壇」について。
こちらは地デジ化によって、テレビがブラウン管から薄型・大型化したことによって、はじめて成立した番組形式だったそうです。
古くはベンヤミンやマクルーハンの時代から言われている「メディアがコンテンツを規定する」という話も、上記のような雑学(?)として改めて聞くと非常に面白いですね。
■参考文献
『MEDIA MAKERS』(田端信太郎、宣伝会議、2012年)
https://www.amazon.co.jp/MEDIA-MAKERS%E2%80%95%E7%A4%BE%E4%BC%9A%E3%81%8C%E5%8B%95%E3%81%8F%E3%80%8C%E5%BD%B1%E9%9F%BF%E5%8A%9B%E3%80%8D%E3%81%AE%E6%AD%A3%E4%BD%93-%E5%AE%A3%E4%BC%9D%E4%BC%9A%E8%AD%B0-%E7%94%B0%E7%AB%AF-%E4%BF%A1%E5%A4%AA%E9%83%8E-ebook/dp/B00AQZLZ2G/ref=sr_1_1?__mk_ja_JP=%E3%82%AB%E3%82%BF%E3%82%AB%E3%83%8A&keywords=media+makers&qid=1571649411&sr=8-1
3. ビジネスに活かす雑誌の読み方とは
この点は最所さんご自身のNoteに詳しいのであまり深入りしませんが、雑誌を読むときには横と縦で見る、という2つの視点が重要だと語られていました。
縦とは時間軸のこと。同じ雑誌を定点的に見続けることによって、時代の変化に気づくことができるそう。それは例えば、連載など定常的な記事に変化が現れやすいそうです。
一方、横とはセグメント、より具体的に言えば、各雑誌の占めているポジショニングで考えること。
この点について、最所さんの発言で面白かったのは、「その雑誌におけるヒエラルキー最上位にいるひと(クラスター)を把握する」という考え方。
たとえば、『Mina』はカフェ店員、『JJ』はダンスサークル女子といったように。
上記2つめの参考文献として挙げた『MEDIA MAKERS』にも詳しいですが、それぞれの雑誌には(おそらく)各社規定するペルソナがあります。
このペルソナ=各雑誌のターゲットユーザーを把握することにより、各雑誌のポジショニングが理解できます。
ひとつここにぼくの意見を加えるなら、ペルソナ像は2種類把握するべきではないか、という点です。山口義宏さんの『デジタル時代の基礎知識 ブランディング』に準拠すると、ブランド戦略には2つのターゲットが必要です。
1つはブランドターゲット。もう一つはセールスターゲット。
前者はブランドを共に創っていく理想的な顧客を指し、後者は販売拡大先となるターゲットを指します。
たとえば、再び『東京カレンダー』を例にとれば、誌面に登場するのは「エリート商社マン」「大手銀行マン」などの属性を持った方々ですが、購入するのは必ずしもそうした属性を持った方々だけではないでしょう。中小のメーカー社員や公務員の方だって買っているかもしれません。
このように、東京カレンダーのその「人格」そのものを体現する人々だけではなく、それに対し憧れを持っている顧客も多くいると考えられます。
つまり、「何か」に憧れる、ということは、現状のその人物はその「何か」ではないということです。
「憧れ」たるブランドターゲットと、それに「憧れる」セールスターゲットは区別しておく必要があると思います。
■参考文献
『デジタル時代の基礎知識 ブランディング』(山口義宏、MrkeZine BOOKS、2018年)
https://www.amazon.co.jp/%E3%83%87%E3%82%B8%E3%82%BF%E3%83%AB%E6%99%82%E4%BB%A3%E3%81%AE%E5%9F%BA%E7%A4%8E%E7%9F%A5%E8%AD%98%E3%80%8E%E3%83%96%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%83%87%E3%82%A3%E3%83%B3%E3%82%B0%E3%80%8F-%E3%80%8C%E9%A1%A7%E5%AE%A2%E4%BD%93%E9%A8%93%E3%80%8D%E3%81%A7%E5%B7%AE%E3%81%8C%E3%81%A4%E3%81%8F%E6%99%82%E4%BB%A3%E3%81%AE%E6%96%B0%E3%81%97%E3%81%84%E3%83%AB%E3%83%BC%E3%83%AB%EF%BC%88MarkeZine-BOOKS%EF%BC%89-%E5%B1%B1%E5%8F%A3-%E7%BE%A9%E5%AE%8F-ebook/dp/B078X9VTX2/ref=sr_1_1?__mk_ja_JP=%E3%82%AB%E3%82%BF%E3%82%AB%E3%83%8A&keywords=%E3%83%87%E3%82%B8%E3%82%BF%E3%83%AB%E6%99%82%E4%BB%A3%E3%81%AE%E5%9F%BA%E7%A4%8E%E7%9F%A5%E8%AD%98+%E3%83%96%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%83%87%E3%82%A3%E3%83%B3%E3%82%B0&qid=1571649484&sr=8-1
以上イベントレポでした。(結構大変ですね、こういうの…)
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