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「乙武義足プロジェクト」に力をくれた“あの人”の言葉。

先月28日、日本科学未来館において「#乙武義足プロジェクト」の成果報告会が開催された。時事通信やフジテレビ、テレビ朝日といった大手メディアに取り上げられたこともあり、かなりの反響を呼ぶイベントとなった。本来なら観客を入れて、みなさんに生でお披露目したいところだったが、当日は緊急事態宣言中ということもあって断念。生配信という形式に切り替えてお届けした。


誤解されがちなので何度でも伝えようと思うが、このプロジェクトは「歩きたいと願う乙武さんの夢を叶えよう」という趣旨ではない。そもそも生まれつき手足がなく、車椅子での生活が当たり前だった私には二足歩行への憧れはなかった。しかし、事故や病気など人生の途中で足を失った方々のなかには、「もう一度、自分の足で歩きたい」と願う人が多くいるのだという。

だが、これまでの技術では、「両足とも」「膝上から」失った方々は義足をつけても歩くことが難しかった。それが、義足エンジニア・遠藤謙さんが開発したモーターを搭載したロボット義足なら、「両足とも」「膝上から」失った方でも歩ける可能性が出てきたのだ。このことを最もインパクトある形で世の中に伝えたいという遠藤さんの思いから、私に被験者として白羽の矢が立った。それが「乙武義足プロジェクト」の始まりだ。

池袋にある喫茶店でこのプロジェクトの話をいただいたのが2017年10月。あの場面を原点とすると、すでに4年が経ったことになる。トレーニングを本格的に開始したのが2018年4月だから、そこから考えても3年半だ。ずいぶんと長い年月を費やした気もする。とは言え、あっという間だったような気もする。長くて短い、4年間だった。

体力的には、想像していた以上に過酷なチャレンジとなった。人生で初めて本格的な筋力トレーニングに取り組み、深夜に自宅マンションの非常階段をひたすら昇っていくというトレーニングも始めた。当初は1回につき20階だったのが、いまでは60階。エアコンが効いていない夏場のトレーニングは、文字通り“地獄の苦しみ”だった。


「継続は力なり」を苦手とする私がここまで努力を続けてこれたのは、間違いなく仲間たちのおかげだ。チームリーダーの遠藤さんをはじめ義肢装具士の沖野敦郎さん、理学療法士の内田直生さんといったメンバーからなるプロジェクトチームは、忖度なしに何でも言い合える素晴らしい仲間たちだ。これ以外にも、多くの方々に支えられてこのプロジェクトは進められている。

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そんな私たちに用意された最高の舞台が、お台場にある日本科学未来館。1000万画素を超える高解像度で地球の姿を映し出す科学未来館のシンボル「Geo-Cosmos(ジオ・コスモス) 」に向かって歩くという、話を聞いただけでも胸が躍るような企画が進んでいることを遠藤さんから聞かされた。もちろん、プロジェクトメンバーで誰も反対する者はいなかった。

6月から、月に一度のペースで科学未来館に通って練習を続けた。まだまだ完全に義足を「自分のもの」にできていない現状では、床の素材が変わっただけでも大きく影響を受けてしまう。本番で力を発揮するためには、環境に慣れておく必要があったのだ。

あれは3回目の練習。30℃を優に超える、どうしようもなく暑い8月の午後だった。科学未来館に到着し、いつもの練習場所に向かう途中、だいぶ顔なじみになってきた科学未来館のスタッフが、私たちに向かって驚きの言葉を発した。

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「乙武洋匡の七転び八起き」
https://note.com/h_ototake/m/m9d2115c70116

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