【義足プロジェクト #11】 義足にも「デザイン」が必要な時代。
この記事は、16日(日)に「FRaU×現代ビジネス」にも掲載されます。
短い義足から、徐々に長い義足へ。すべてが順調だった。
十月四日、もう一人のプロジェクトメンバー、デザイナーの小西哲哉氏が遠藤氏とともにわが家を訪れた。すっと通った鼻筋に切れ長の目、「顔まで自分でデザインしたかのようですね」という私の軽口を、小西氏は笑顔で受け流す。
「どんなデザインにしましょうか?」
練習が終わると、黙って見学をしていた小西氏が口を開いた。考えたけれど、とくにこれといったイメージは湧いてこない。ぼんやりとした回答で申し訳ないなと思いつつ、「とにかく、スタイリッシュな感じで」とだけ答えた。
彼は「了解です」と慣れているように頷く。
「乙武さんは何色が好きですか?」
この質問にはすぐに答えられた。黒。Tシャツにせよ、セーターにせよ、クローゼットの中身は黒ばかりだ。さらに黒ベースにどこか赤を取り入れているデザインもお気に入りで、財布や車椅子に装着している腕時計も、まさに「黒×赤」の組み合わせだった。
でも、小西氏から「靴はどうしますか?」と聞かれたときは困ってしまった。これまでの人生で靴選びなどしたことがなかったから。革靴を履いてみたい気持ちはあったが、まずは義足初心者として最も歩きやすいスニーカーから試してみるのがいいという。かつてはバスケ部でならした遠藤氏にお勧めを聞いてみた。
「人気があるのはナイキとかですけど、一般的なスニーカーってつま先と踵では靴底の厚さが変わってくるんですよね。そういうスニーカーを履くと、靴を履かない状態で練習していたときと微妙に感覚のズレが生じてきてしまうんです」
いくらデザインがよくても、それは厄介な話だ。
「そういう意味では、コンバースのスニーカーはつま先と踵の厚みがあまり変わらないので、義足使用者で履いている人は多いかもしれないですね」
こうして私の「ファーストシューズ」は、コンバースの黒に決まった。それにしても、服装や小物を選ぶように、義足のことを考える日が来るとは思ってもみなかった。
小西氏の経歴を紹介しよう。
一九八五年、千葉県生まれの宮城県育ち。千葉工業大学大学院でプロダクトデザインを学び、卒業後はパナソニックでビデオカメラやウェアラブルデバイス(身体に装着して利用することを想定して開発された端末)のデザインを担当していた。
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「乙武洋匡の七転び八起き」
https://note.mu/h_ototake/m/m9d2115c70116
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